認知行動療法(CBT) | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

Differential Susceptibility Hypothesis(DSH)という仮説があります。Differential Susceptibility Hypothesisとは、良い環境にいると精神的健康が良くなりやすく、悪い環境にいると精神的健康が悪くなりやすいという遺伝因子が存在するという仮説です。たとえば、セロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)がSS型だと(平均的にみて)不安が高いはずなのに、5HTTLPRがSL/LL型の不安障害児よりも、SS型の不安障害児の方が認知行動療法の効果が持続しやすいという研究(Eley et al., 2012)は、5HTTLPRが認知行動療法という環境因子の影響を受けやすい遺伝子多型であるからだと説明されます。つまり、5HTTLPRなどのDifferential Susceptibility Hypothesisと関わる遺伝子多型は「良くも悪くも環境に影響されやすい遺伝子多型」というわけです。

先行研究では予め研究者が選択した少数の候補遺伝子で同仮説が検証されてきました。しかし、これだと、おそらくそれぞれに小さな効果のある膨大な数の遺伝子の影響を捉えきれません(これが追試の失敗の原因とも考えられます)。なので、今回の論文は研究者が候補遺伝子を予め選定したのではなく、ゲノムワイドアプローチであるという点が特長になります。

Keers, R., Coleman, J. R. I., Lester, K. J., Roberts, S., Breen, G., Thastum, M., Bögels, S., Schneider, S., Heiervang, E., Meiser-Stedman, R., Nauta, M., Creswell, C., Thirlwall, K., Rapee, R. M., Hudson, J. L., Lewis, C., Plomin, R., & Eley, T. C. (2016). A genome-wide test of the differential susceptibility hypothesis reveals a genetic predictor of differential response to psychological treatments for child anxiety disorders. Psychotherapy & Psychosomatics, 85(3), 146-158. doi:10.1159/000444023.

★概要

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DNA発現は環境の影響を受けて変化します。DNA塩基配列の変化なしに遺伝子のスイッチが切り替わる現象をエピジェネティクスと呼びます。遺伝子の発現を調整する仕組み(エピジェネティクス)にはメチル化修飾とヒストン修飾とが知られています。一般にメチル化はシトシン+メチル基→メチル化シトシン(5-メチルシトシン:5mC)のことです。しかし、少なくとも緑藻、ワーム(蠕虫)、ハエではメチル化アデニン(N6-メチルアデニン:6mA)もエピジェネティクスに関与するというミニレビューが学術ジャーナル『セル(Cell)』に掲載されました(Heyn & Esteller, 2015)。

ミニレビュー論文→Heyn, H., & Esteller, M. (2015). An Adenine Code for DNA: A Second Life for N6-Methyladenine. Cell, 161(4), 710–713. DOI:10.1016/j.cell.2015.04.021.

上記のミニレビューはどうやら以下の3つの論文を軸に論を展開しているようです。
緑藻(クラミドモナス)→Fu, Y., Luo, G. Z., Chen, K., Deng, X., Yu, M., Han, D., Hao, Z., Liu, J., Lu, X., Doré, L. C., Weng, X., Ji, Q., Mets, L., & He, C. (2015). N6-Methyldeoxyadenosine Marks Active Transcription Start Sites in Chlamydomonas. Cell, 161(4), 879–892. doi:10.1016/j.cell.2015.04.010.

ワーム(カエノラブディティス・エレガンス:C. elegans)→Greer, E. L., Blanco, M. A., Gu, L., Sendinc, E., Liu, J., Aristizábal-Corrales, D., Hsu, C-H., Aravind, L., He, C., & Shi, Y. (2015). DNA Methylation on N6-Adenine in C. elegans. Cell, 161(4), 868–878. doi:10.1016/j.cell.2015.04.005.

ハエ(ショウジョウバエ)→Zhang, G., Huang, H., Liu, D., Cheng, Y., Liu, X., Zhang, W., Yin, R., Zhang, D., Zhang, P., Liu, J., Li, C., Luo, Y., Zhu, Y., Zhang, N., He, S., He, C., Wang, H., & Chen, D. (2015). N6-Methyladenine DNA Modification in Drosophila. Cell, 161(4), 893–906. doi:10.1016/j.cell.2015.04.018.

精神医学の分野においてもエピジェネティクスへの関心は高く、論文の出版が続いています。今回は不安障害児のセロトニン関連遺伝子の発現の変化が認知行動療法の予後が良かった群と悪かった群とで異なるという論文です。

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近年、セラピー遺伝学・心理療法遺伝学(Therapygenetics)といって、心理療法の効果を遺伝子マーカーで予測する研究が進展しています。遺伝子情報に基づく医療の個別化、心理療法の個別化というわけです。今回の論文もその1つで、不安障害児への認知行動療法の効果はNGF(Nerve growth factor)という神経成長因子の遺伝子型で予測できるというものです。

Lester, K. J., Hudson, J. L., Tropeano, M., Creswell, C., Collier, D. A., Farmer, A., Lyneham, H. J., Rapee, R. M., & Eley, T. C. (2012). Neurotrophic gene polymorphisms and response to psychological therapy. Translational Psychiatry, 2, e108. doi:10.1038/tp.2012.33.

★概要

○研究手続き

374人の不安障害児(年齢6~13歳)とその親が協力しました。彼らの内359人はセロトニントランスポーター遺伝子多型(5HTTLPR)が認知行動療法の効果に与える影響を調べた先行研究(Eley et al., 2012)とサンプルが重なっていました。しかし、以下の結果は5HTTLPRを統制しても変わりませんでした。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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