喘息は不安障害のリスク、不安障害は喘息のリスク | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、論文アブストラクト(抄録)、調査方法、調査結果を軽く読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害(不安症)を併存していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害になりました。

今回は喘息と不安障害には双方向的関係が存在するという研究です。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒鏡の前で不健康食を食べると美味しさを感じにくくなる
最近の記事2⇒中間の選択肢を選ぶ人が多い国はIQが高い

Lee, Y. C., Lee, C. T. C., Lai, Y. R., Chen, V. C. H., & Stewart, R. (2016). Association of asthma and anxiety: A nationwide population-based study in Taiwan. Journal of Affective Disorders, 189, 98-105. doi:10.1016/j.jad.2015.09.040.

台湾の中山医学大学作業療法学部、中山医学大学病院作業療法室、同大学病院薬学科、高雄医学大学公衆衛生学科、国立台湾師範大学健康増進衛生教育学科、嘉義長庚紀念医院長庚医療財団、長庚大学、イギリスのキングスカレッジロンドン(精神医学心理学神経科学研究所)の研究者による論文です。

〇目的

喘息と不安の双方向的関係について調べた研究は少ないです。そこで、喘息と不安の関係を国民レベルのサンプルを用いて調査することを目的としました。

〇方法

2000年~2007年までに一次的診断(primary diagnosis)で新たに喘息(ICD-9:493)と診断された15歳より年上のケースを、台湾全民健康保険研究データベースから同定しました。喘息は、入院患者の診断か、外来診療での喘息の診断が最低1年以上としました。

その結果、事例が22,797例発見され、性別、年齢、居住(場所?)、保険料をマッチさせた統制群と比較しました。両群とも2008年末まで追跡調査し、不安障害の事例を調べました。ここでの不安障害とは、ICD-9コードで以下の通りです。

●300.0:不安状態
・300.01:パニック障害(広場恐怖を伴わないもの)
・300.02:全般性不安障害
●300.2:恐怖症
・300.21:広場恐怖症(パニック障害を伴うもの)
・300.23:社交恐怖症(社会恐怖症)
・300.3:強迫性障害

統計解析は、競合リスク調整コックス回帰分析で、性別、年齢、居住(場所?)、保険料、プレドニゾン使用、チャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index,CCI)、心血管疾患、糖尿病、うつ病性障害、入院日数(全ての障害を含む)を調整。喘息がパニック障害リスクに与える影響、不安障害が後の喘息に与える影響も競合リスク調整コックス回帰分析で解析。

○結果

平均5.3年(SD = 2.5)の追跡調査で、45,594人の内、2,792人に不安障害が確認されました。

完全調整モデルで不安障害のリスクとなったのは、喘息、女性であること、高齢、田舎居住、うつ病性障害、プレドニゾン使用でした。

完全調整モデルで喘息リスクとなったのは、不安障害、高齢、田舎居住、プレドニゾン使用でした。

また、喘息だとパニック障害リスクが高く、広場恐怖症の有無を問いませんでした(HR = 1.73, 95% CI: 1.06–2.83)。

研究の限界は、評価しなかった項目として、喘息や不安障害の重篤度、プレドニゾン治療の期間、服薬アドヒアランス、ストレスフルなライフイベント、喫煙、家族健康歴、家族関係があったことでした。

○コメント

ということで、少なくとも本研究では、喘息と不安障害との間に双方向的関係が存在していたと論文のアブストラクトに書かれています。リスクの強さは喘息→不安障害も不安障害→喘息も最大で2倍程度になるということです。喘息と不安障害の双方向的関係は他の論文でも指摘されており(Del Giacco et al., 2016)、それによると喘息から不安障害になったケースが48%、不安障害が先で後に喘息になったケースが52%で、有意差は検出されなかったとのことです(96人の成人と他の96人の統制群との比較研究)。

なお、動物実験では、産後7~57日のBALB/cJマウスに喘息を引き起こすと、後の不安様行動が高まるという結果も得られています(Caulfield et al., 2017)。

喘息との双方向的関係と言えば、過敏性腸症候群でも見いだされています。Shen et al. (2016)によると、喘息コホートは比較コホートよりも過敏性腸症候群が1.89倍高く発生し、過敏性腸症候群コホートは比較コホートよりも、喘息が1.76倍高く発生します。

また、うつ病の人は喘息リスクが高いという研究もあります(Shen et al., in press)。

〇引用文献(アブストラクトだけ読みました)
Caulfield, J. I., Caruso, M. J., Michael, K. C., Bourne, R. A., Chirichella, N. R., Klein, L. C., Craig, T. Bonneau, R. H., August, A., & Cavigelli, S. A. (2017). Peri-adolescent asthma symptoms cause adult anxiety-related behavior and neurobiological processes in mice. Behavioural Brain Research, 326, 244–255. doi:10.1016/j.bbr.2017.02.046.

Del Giacco, S. R., Cappai, A., Gambula, L., Cabras, S., Perra, S., Manconi, P. E., Carpiniello, B., & Pinna, F. (2016). The asthma-anxiety connection. Respiratory Medicine, 120, 44-53. doi:10.1016/j.rmed.2016.09.014.

Shen, T. C., Lin, C. L., Liao, C. H., Wei, C. C., Sung, F. C., & Kao, C. H. (in press). Major depressive disorder is associated with subsequent adult-onset asthma: a population-based cohort study. Epidemiology & Psychiatric Sciences, doi:10.1017/S2045796016000664.

Shen, T. C., Lin, C. L., Wei, C. C., Chen, C. H., Tu, C. Y., Hsia, T. C., Shih, C. M., Hsu, W. H., Sung, F. C., & Kao, C. H. (2016) Bidirectional Association between Asthma and Irritable Bowel Syndrome: Two Population-Based Retrospective Cohort Studies. PLoS ONE, 11(4): e0153911. doi:10.1371/journal.pone.0153911.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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