神経科学 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

脳にはデフォルト・モード・ネットワーク(Default Mode Network:DMN)と呼ばれる神経網が存在します。DMNとは課題遂行時よりも安静時に活動が高まる神経ネットワークのことです。DMNは内側前頭前野、後部帯状皮質/喫前部、下頭頂小葉、外側側頭皮質、海馬などで構成されています。DMNの機能に「自己内省(self-reflection)」があるという仮説があります。少なくとも部分的にはDMNは社会脳ネットワークと重なります。

*自己内省とは思考や記憶、感情など自己に内的な注意を向けることを言います。自己内省で将来のことを想像することもあります。DMNが自己内省の役割を担うというエビデンスは自己参照処理課題中に内側前頭前皮質や後帯状皮質の活動が高まるなどの知見です。

さて、そんなDMNが社交不安、それも報酬処理中の活動と関連するという論文をバージニア大学心理学部の研究者が発表されています。

Maresh, E. L., Allen, J. P., & Coan, J. A. (2014). Increased default mode network activity in socially anxious individuals during reward processing. Biology of Mood & Anxiety Disorders, 4:7. doi:10.1186/2045-5380-4-7.

★概要
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通常、社会不安障害(社交不安障害、社交不安症)患者は脅威刺激に対して扁桃体が活発に働くとされています。事実、社会不安障害群は、怒りと侮辱の入り混じった表情(Goldin et al., 2009)や恐怖表情(Blair et al., 2008; Labuschagne et al., 2010)、怒った顔文字のような刺激(Evans et al., 2008)に対して扁桃体の興奮が高まります。また、社会不安障害群は「あなたは馬鹿だ」という文を読んでいる時にも扁桃体が賦活します(Blair et al., 2008)

しかし、2014年に社会不安障害患者の、ネガティブ表情との連合を学習した名前刺激に対する扁桃体の活動が健常者の扁桃体活動よりも低いという研究が発表されました。しかも、社会不安症状が強いほど、扁桃体の興奮が低いのです。

Laeger, I., Keuper, K., Heitmann, C., Kugel, H., Dobel, C., Eden, A., Arolt, V., Zwitserlood, P., Dannlowski, U., & Zwanzger, P. (2014). Have we met before? Neural correlates of emotional learning in women with social phobia. Journal of Psychiatry & Neuroscience: JPN, 39(3), E14-E23. DOI: 10.1503/jpn.130091.

★概要

○実験手続き

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2012年に発表された研究において、社会不安障害(社交不安障害)や全般性不安障害の中学生で金銭に対する脳の報酬系の異常が指摘された(Guyer et al., 2012)ように、21世紀になってから不安と報酬系の関係に注目が集まっています。ちなみに、社会不安障害のリスク要因である行動抑制で報酬系の異常が指摘されたのは2006年が初めて(Guyer et al., 2006)で、不安障害の報酬研究よりも1歩進んでいました。

*Guyer et al. (2006)とは以下の論文のこと
Guyer, A. E., Nelson, E. E., Perez-Edgar, K., Hardin, M. G., Roberson-Nay, R., Monk, C. S., Bjork, J. M., Henderson, H. A., Pine, D. S., Fox, N. A., & Ernst, M. (2006). Striatal functional alteration in adolescents characterized by early childhood behavioral inhibition. Journal of Neuroscience, 26(24), 6399-6405. doi:10.1523/JNEUROSCI.0666-06.2006.

また、近年自閉症でも脳の報酬系が異常であるという知見が蓄積してきています。実際、脳の報酬系(腹側被蓋野-側坐核)を光遺伝学(オプトジェネティックス)の技術で興奮させると社会的交流が促進される(Gunaydin et al., 2014)ので、報酬系と社会的相互作用には因果関係が存在します(少なくともマウスの動物実験ではという条件つき)。

以上の知見をまとめると、自閉症と社会不安障害はともに報酬系が異常ということなのですが、両者を直接比較した研究はこれまでありませんでした。したがって、今回の論文が自閉症の報酬系と社会不安障害の報酬系を直接比較検討した論文としては初めてのものになります。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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