2011年04月 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
HOME   »  2011年04月

問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回は社会不安障害の人で、遺伝子と扁桃体の興奮性、症状の重篤度に関する研究をご紹介したいと思います。結論から言えば、セロトニン遺伝子が短い人ほど不安が強く、右半球の扁桃体が興奮しやすいという結果が得られました。スウェーデンの研究です。

Furmark, T., Tillfors, M., Garpenstrand, H., Marteinsdottir, I., Långström, B., Oreland, L., & Fredrikson, M.(2004). Serotonin transporter polymorphism related to amygdala excitability and symptom severity in patients with social phobia. Neuroscience letters, 362, 189-192.

★概要

遺伝子解析を行わなかったTillfors et al.(2001)のデータを遺伝子情報を加え、再分析した研究です。ただし、Tillfors et al.(2001)は社会不安障害の人と精神疾患がない人を比較しているのに対し、今回は社会不安障害の人の中で、長い遺伝子を有する人と短い遺伝子を有する人の比較を行っています。したがって、社会不安障害の人しか分析対象にはなっていません。

社会不安障害の人のセロトニントランスポーター遺伝子の長さを調べています。その長さと扁桃体の活性や不安の強さの関係を分析しています。また、6~8人の聴衆の前でスピーチをする条件と1人でスピーチをする条件を設けています。各条件中に扁桃体の活動を、条件終了後すぐに不安の強さを評定しています。

その結果、短い遺伝子を1個以上持つ人は長い遺伝子だけの人と比較して、有意に不安が強いことが分かりました。ただし、この傾向はスピーチ条件に関わらず現れていました。

一方、扁桃体の血流は、公の場でスピーチをしている時に短い遺伝子を持つ人の方が有意に増加しました。この増加は右半球だけに生じました。

★コメント

スポンサードリンク

オーストラリアの公共放送局、オーストラリア放送協会(ABC:Australian Broadcasting Corporation)が"Stories of silence"というシリーズの中で緘黙症を題材にしていました。なお、このABCはアメリカのABCニュースとは別物です。

‟El's Story”というタイトルで、27歳の女性、Elさんが場面緘黙症ということです。Elさんはメモだけでなくキーボードでも意思疎通を図っているという点が特徴的です。キーボードを介したElさんとの対話で幼少の頃や高校時代、求職体験を振り返っています。Elさんの母親も参加しています。所々にシドニーで診療所を運営しているElizabeth Woodcock氏の場面緘黙症の解説が織り交ざっています。この対話は音声で再生できるのですが、声の代わりとなるタイピングの音が印象的です。

スポンサードリンク

今回は社会不安障害の治療に用いられることもあるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)についての論文をご紹介します。遺伝子によってSSRIの効き目が異なることを示唆する論文です。

Stein, M. B., Seedat, S., & Gelernter, J.(2006). Serotonin transporter gene promoter polymorphism predicts SSRI response in generalized social anxiety disorder. Psychopharmacology, 187, 68-72.

★概要

公の場で話したり、何かをしたりすることだけでなく、ほとんどの社会的場面を恐れる全般性(generalized)社会不安障害を対象とした研究です。SSRI(パロキセチンまたはフルボキサミン)の投薬前と投薬12週間後とで社会不安の度合いを様々な尺度で比較しています。そして、SSRIの治療結果とセロトニントランスポーター遺伝子のプロモーター領域の「長さ」の関係を統計的に検討しています。なお、プロモーター領域が短い人は不安が強く、長い人は不安が弱い傾向にあると考えられています。

その結果、SSRIの効果があったのは、長い遺伝子を二組持つL/L型の人で88%、長い遺伝子と短い遺伝子の双方を持つL/S型の人で67%、短い遺伝子二組を持つS/S型の人で33%だったことが分かりました。もちろん統計学的な差もきちんと出ています。

なお、L型の遺伝子をLa型とLg型に分けた分析も行っていることを付記しておきます。これは、セロトニンの再取り込み機能という点ではLg型はS型と大差がないとする研究に基づいています。この場合ではLa/La型の80%、La/S or Lg型の74%、S or Lg/S or Lg型の38%にSSRIの効果が確認されています。

★コメント

スポンサードリンク

カテゴリ
ランキング
Twitter
スマートフォンサイト
Amazon書籍
場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

リンクについて
このサイトはリンクフリーです。リンクの取り外しはご自由になさって下さい。個別ページのSNSでの共有やブログ、サイトへのリンクも自由です。
プライバシーポリシー
当ブログはGoogle Adsense広告を掲載しています。Google Adsenseでは広告の適切な配信のためにcookie(クッキー)を使用しています。ユーザーはcookieを無効にすることができます。

なお、Google Adsenseで上げた収益は将来のホームレス生活を見越し、すべて貯金にまわしています。
免責事項
ブログ記事の内容には万全の注意を払っていますが、管理人はその内容の正確さについて責任を負うものではありません。

PAGE TOP