2011年07月 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

馴染みのない物や人を警戒し回避する行動抑制。子どもの行動抑制は将来、社会不安障害やうつ病になる確率を高めると言われています。今回は、不安や恐怖を担う扁桃体の反応が「早く、長く、強い」ことが行動抑制の特徴であると主張した論文をとりあげます。なお、行動抑制については。こちらをご覧ください。

Blackford, J. U., Avery, S. N., Shelton, R. C., & Zald, D. H.(2009). Amygdala temporal dynamics: temperamental differences in the timing of amygdala response to familiar and novel faces. BMC Neuroscience, 10, 145.

★概要

実験手法はほとんどBlackford et al.(2011)と同じです。抑制傾向がある人と行動抑制とは対極にある人に、無表情な顔を見せ、その間の脳活動をfMRIで調べています。以前参加者に見せた顔(既知条件)と初めて見せる顔(新奇条件)という2タイプの刺激を用いています。Blackford et al.(2011)と異なるのは扁桃体の活動を4点に焦点をあてて分析していることです。

①開始の早さ

②持続時間

③ピーク時の大きさ

④全体的な大きさ

その結果、抑制気質の人は、既知条件と比較して新奇条件で扁桃体が早く反応しました。具体的に言うと、既知条件の場合は行動抑制のあるなしに関わらず、扁桃体が反応するまで4~5秒かかりました。一方、新奇条件では行動抑制がある人のみ扁桃体が反応するのに約1秒しか要しませんでした。この反応は右扁桃体の方が顕著でした。

また、既知・新規の条件に関わらず、抑制気質のある人はその対極にある人よりも扁桃体の反応が長く、全体的に大きいことが分かりました。なお、ピーク時の大きさは行動抑制のあるなしで差がありませんでした。

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緘黙に関するレビュー論文(総説論文)を読んでみました。

Krysanski, V.(2003). A brief review of selective mutism literature. Journal of Psychology, 137(1), 29-40.

○感想

特に変わったことが書かれているということはなかったです。おそらく、他の文献と比較してみても内容に大差はないような気がします。しかし、心理学の諸理論に焦点をあてたその視点は、緘黙について多様な見方を提供してくれます。

特長的なのは、場面緘黙の原因を精神力動理論や行動理論、家族システム論といった諸理論ごとに説明していることです。それに伴い必然的に治療もこれらの理論をベースとした記述となっています。著者のValerie L. Krysanski氏は臨床家なので治療についての分量が若干多いようです。特に、行動療法はセルフモデリング、未知なるご褒美?(mystery motivator)、自己強化、フェイディング法、分散効果(spacing effect)、ビデオやオーディオ機器を用いたフィードフォワードなど多彩な手法について言及しています。著者によれば、これらの方法は単独で用いるのではなく、組み合わせることで効果が発揮されるそうです。

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同じ行動抑制(behavioral inhibition)という術語が使われていて紛らわしいですが、今回はKagan教授ではなく、Gray教授が提唱した気質モデル(強化感受性理論:reinforcement sensitivity theory)における行動抑制系(Behavioral inhibition system)に関わる論文です。

なお、ハーバード大学のJerome Kagan教授の行動抑制に関してはこちらをご覧ください(Gray教授の行動抑制系とKagan教授の行動抑制は違う概念です)⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan

○行動抑制系とは

行動抑制系が働くと新奇性を有する物や人だけでなく、罰や恐怖、無報酬も避けるため、行動を抑制します。警戒感や不安感も引き起こされます。アイゼンクの性格理論でいうところの内向性と神経症傾向の間にあるとも言われています。そして、行動抑制系が優勢な場合、不安障害になりやすいことが知られています。一方、行動賦活系(behavioral activation system)が働くと報酬を求めて行動が開始され接近戦略をとることになります。いわゆる、リスクをとる行動が行動賦活系の働きです。両者にはそれぞれ脳内における特定の神経回路が想定されています。初めは動物実験で行動抑制系と行動賦活系が確証されました。それを人間にも応用していこうとする動きがあります。

Shackman, A. J., McMenamin, B. W., Maxwell, J. S., Greischar, L. L., & Davidson, R. J.(2009). Right dorsolateral prefrontal cortical activity and behavioral inhibition. Psychological Science, 20, 1500-1506.

★概要

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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