2013年02月 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

場面緘黙症は非常に特異な症状だなあと感じています。家では話すことができるのに、学校など特定の場面では全く話せなくなってしまうなんて、内弁慶ぶりもいいところです。ところが、やっかいなことにこんな状態が長時間持続すると、たとえ緘黙症から回復してもいわゆる「後遺症」なるものが問題になってきます。

私はこの後遺症を緘黙症の研究促進の起爆剤として利用できるのではないかと考えています。その根拠は数々の症状や障害です。たとえば顔から人の識別ができない相貌失認の人は人間の顔認識能力を支える認知的、神経的基盤の解明に役立っています。ちなみに脳科学者の池谷裕二さんも相貌失認で「最近」そのことがわかったそうです。私はこのことを彼のTwitterを通して「最近」知りました。

池谷裕二さんのTwitterから抜粋



※注意:ここでいう症状とは相貌失認のことです。

ちなみに池谷裕二さんは日本学士院学術奨励賞(2013年)など数々の賞を受け、一般向けに脳研究の最前線について分かりやすく解説した書籍を執筆するなど、日本を代表する脳科学者です。

っと、話が逸れました。

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不安障害やうつ病の治療に薬物が使用されることがあります。抗うつ薬や抗不安薬と呼ばれるもので、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が代表例です。選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NARI)というのもあります。場面緘黙症にもSSRIが治療戦略の候補の1つとして利用されることがあります。

ところが、このSSRIやらNARIは名前からセロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質に影響するということは分かるのですが、心理的にはどのような作用があるのでしょうか?今回は薬物が心理面、特に表情の知覚や記憶に与える影響を健常者で調べた研究です。

Harmer, C. J., Shelley, N. C., Cowen, P. J., & Goodwin, G. M. (2004). Increased positive versus negative affective perception and memory in healthy volunteers following selective serotonin and norepinephrine reuptake inhibition. American Journal of Psychiatry, 161, 1256-1263.

★概要

何ら精神疾患の既往歴がない健常者を対象としました。

SSRIのシタロプラム(セレクサ)20mg/日、NARIのレボキセチン(エドロナックス)8mg/日、またはプラセボ(偽薬)を投与する群の3つに被験者を分けました。7日間投与しています。セラピストにも実験協力者にも薬物かプラセボかどうかわからない二重盲検法でした。

本文中ではレボキセチンについてはSNRIという表記ですが、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤もSNRIと略されることがあり、混同を避けるためここではNARIとします。

7日間の薬物投与期間の最終日に4つの課題を行いました。いずれも刺激はポジティブ(幸福な表情など)あるいはネガティブ(恐怖の表情など)な情動刺激を中心に構成されています。

①500ミリ秒の間コンピュータスクリーンに呈示された表情(幸福、驚き、悲しみ、恐怖、怒り、嫌悪)が何だったかを当てるFacial expression recognitionテスト

②500ミリ秒の間コンピュータスクリーンに呈示された性格に関する用語が好ましいものかどうか判断させるEmotional categorization課題

③②で用いられた性格語を課題終了直後にどれだけ思い出せるかを測るEmotional memoryテスト

④音に対する瞬目反射(瞬き反応)を測るEmotion-Potentiated Startle responseテスト。コンピュータスクリーンに映し出された、情動を喚起する絵画の鑑賞中に測定。

なお、②のEmotional categorization課題においては他者が被験者のことを性格語(誠実なや支配的など)に当てはまると言っているのをまた聞きした状況を想像させることで評定させました。

○結果

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ある研究(参考文献参照のこと)から「緘黙克服物語は当事者にとって逆効果になるのではないのか?」という着想を得ました。その研究は肥満についてのものなので緘黙症にも当てはまるかは不明ですが、あり得る話だと判断しました。

○研究の概要

米国の放送局、NBCにBiggest Loserというリアリティ番組があります。これは肥満の人が体重減量を競い合い、最も体重を減らした人が勝つという内容です。

このテレビ番組を視聴することで肥満へのスティグマ(ネガティブなレッテル貼り)が増えるのか、減るのか、それとも変わらないのか調べました。

結果:自分の体重に懸念がある人はBiggest Loserを視聴する傾向が強い→視聴行動が体重は自分でコントロールできるものなんだと感じることにつながる(肥満は自己責任だという考えが強まる)→肥満は自己責任だと思うと脂肪に対する批判的な態度が強まる。

肥満を個人の責任だけに求めるのは一面的で、本当は遺伝や環境、文化の影響もあるはずです。しかし、Biggest Loserを観ることで肥満の原因を個人的要因だけに還元する傾向が強まる恐れが高まります。

○緘黙にも当てはめる場合

同じ理屈を緘黙にも適用すると次のようになります。ただし、ここでいう克服物語とは元緘黙の人の努力ばかりが強調されたものをいいます。環境や家族、友人の協力も大事だというお話は対象ではありません。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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