2015年02月 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

非常に驚くべき学位論文を見つけてしまいました。といっても、驚いたのは私だけで、実は皆さんはすでにご存じか、またはこの記事で初めて知ったとしても驚かないかもしれませんが…。なんとコルネリア・デ・ランゲ症候群は場面緘黙(選択性緘黙)の有病率が40%だというのです!これは場面緘黙症の発症率が1%未満だとされることに比べると非常に多い割合です。

*場面緘黙症の有病率が1%以上(1.5%)という研究(Bufferd et al., 2011)もあります。ただし、Bufferd et al. (2011)は調査対象がすべて3歳児でした。なので、小学生なんかも対象となっている研究報告(Sharkey & McNicholas, 2012)よりも場面緘黙症の有病率が高めにでてもおかしくありません。

訂正(2015年3月11日):以前は場面緘黙症の罹患率(incidence rate)という表記をしていましたが、どうやら有病率(prevalence)の間違いだったようです。罹患率とは特定期間中の疾患の新規発生症例数のことで、有病率とは特定時点における疾患を有する人口のことです。ある方からご指摘を受けました。

Nelson, L. K. (2010). Mood and sociability in Cornelia de Lange syndrome. Ph.D. Thesis, University of Birmingham, Birmingham, West Midlands county.

○コルネリア・デ・ランゲ症候群とは何ぞや?

コルネリア・デ・ランゲ症候群についてはよく知らないので、勉強してみました。コルネリア・デ・ランゲ症候群の症状は顔が特徴的(両側の眉毛がつながっている・濃い眉毛・上向き鼻孔・薄い唇等)であることや低身長、発達の遅れ、胃食道逆流などです。小児慢性特定疾病の一種です。英語名がCornelia de Lange syndromeであることからCdLSという略語で表記することもあります。原因は5番染色体のNIPBL遺伝子の変異やX染色体にあるSMC1A遺伝子の変異などが報告されています。

ついでに後に出てくる脆弱X症候群、アンジェルマン症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群についても解説をしておきます。といってもネット上からかき集めた付け焼刃の情報にすぎないのですが。

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場面緘黙(選択性緘黙)児とその親とのやり取りを行動観察した論文を読みました。この論文は第一著者(ファーストオーサー)がカナダのグエルフ大学大学院で書かれた博士論文がもとになっています。

Edison, S. C., Evans, M. A., McHolm, A. E., Cunningham, C. E., Nowakowski, M. E., Boyle, M., & Schmidt, L. A. (2011). An investigation of control among parents of selectively mute, anxious, and non-anxious children. Child Psychiatry & Human Development, 42(3), 270-290. DOI:10.1007/s10578-010-0214-1.

★概要

○実験手続き

内在化問題症状が何もない統制児25人(女児14人,男児11人)、場面緘黙症がない不安障害(不安症)児17人(女児8人,男児9人)、場面緘黙児21人(女児13人,男児8人)とその両親が参加。子供の年齢の範囲は4~13歳。両親は57人(90%)が母親で、6人(10%)が父親(義理の親が1人)。子供の年齢と性別に有意差はありませんでしたが、場面緘黙症がない不安障害児(以下、不安障害(児)とする)群の世帯の平均年収および場面緘黙群の世帯の平均年収と比較して統制児群の世帯の平均年収が高くなりました(しかし、実験結果は年収の違いを取り除いても変わりませんでした)。

なお、不安障害の内訳は特定恐怖症が13人、全般性不安障害が3人、パニック障害が1人、社交恐怖症(社会恐怖症,社交不安障害)が1人、分離不安障害が3人、強迫性障害が3人、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が1人でした(合併児が6人)。場面緘黙児の合併症は特定恐怖症が3人、社交恐怖症が3人、分離不安障害が3人でした(複数該当あり。2人は合併診断の有無が不明)。

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今回はいつもの実証的研究とは違って理論編です。具体的に書くと、進化心理学の観点からは、母親の社交不安(社会不安)よりも父親の社交不安の方が子供の社交不安に与える影響が強いと考えられるというお話になります。

本モデルの趣旨は、母親よりも父親の方が外的世界で起こりうる脅威(現代社会では他人の行動)に対処してきたので、子供は父親の方が外的脅威の学習素材として適切だと認識しており、そのため、母親の社交不安よりも父親の社交不安の方が子供の脅威の知覚/解釈/信念、さらには社交不安に影響するというものです。

なお、社交不安(症/障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒マインドフルネス瞑想訓練を受けると松葉杖の女性に席を譲るようになる
↑ちなみに、マインドフルネス瞑想は不安障害(不安症)の改善に効果がある(Boettcher et al., 2014)とされます。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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