2015年06月 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回は神経症傾向についての論文です。不安に関する論文ではありませんが、神経症傾向は抑うつや不安のリスクですし、なにより実験結果が興味深いのでとりあげることにします。なお、神経症傾向とはストレッサーに対して情動的に過敏に反応する傾向のことです。

*恥かしいことに、いままで神経症傾向を神経質傾向だとばかり思っていました。2つの言葉が性格心理学の世界で混在していることに最近気づいた次第です。私の手元にある東京大学の丹野義彦教授著『性格の心理―ビッグファイブと臨床からみたパーソナリティ(コンパクト新心理学ライブラリ)(サイエンス社)』では性格の5因子(ビッグファイブ)モデルの第4次元として神経症傾向(Neuroticism)という言葉を使っており、本記事ではそれにのっとって、神経症傾向と翻訳することにします。なお、性格の5因子モデルとは性格を5つの因子によって説明できるとする理論のことです。その5因子とは外向性、神経症傾向(情緒不安定性)、勤勉性、協調性、開放性です。丹野義彦教授は臨床心理士という肩書もお持ちのようです。

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興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)、実験方法、実験結果を読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です(今回は考察部も斜め読みしました)。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙(選択性緘黙)児は不安が高いか、もしくは不安障害を合併していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会(APA)が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害(不安症)になりました。

今回は夜に恐怖反応が強まるのは暗いからではないという研究です。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒暗闇でも目を閉じると体性感覚知覚が敏感になる
↑部屋の電気を点けているか否かに関わらず、目を閉じると体性感覚が敏感になるという実験です。この暗闇実験から視覚情報の遮断ではなく、目を閉じることそのものが体性感覚に影響している可能性が考えられます。また、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)により、目を閉じると脳が視覚処理モードから体性感覚処理モードに切り替わることが示唆されました。ただ、暗闇でも目の順応(暗順応)が働くので、そのあたりはどうなのでしょうか?

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1980年代にはすでにシャイネスと社交性は関連性はあるものの、シャイだからといって社交性が低いとは限らないことが示唆されていました。つまり、シャイな人にも社交性が高い人や社交性が低い人が存在するわけです(抽象的に書くと、シャイネスと社交性は独立しているという表現になります)。この知見は1980年代以降でも数々の研究で繰り返し示されてきた再現性の高い結果です。

ドイツのフンボルト大学ベルリンの心理学者、ジェンス・アセンドルフ教授(Prof. Jens B. Asendorpf)の以下の図式が比較的有名でしょうか。


シャイネス(回避)
社交性(接近)
高い低い
高い葛藤社交的
低い回避的内向的

Matsuda et al. (2013)によると、この図式は以下の文献によります(←孫引き)。また、マックマスター大学心理学のルイス・A. シュミット助教授(現在は教授)とジョージタウン大学のジェイ・シュルキン教授(生理学/生物物理学)が編集した『Extreme Fear, Shyness, and Social Phobia (Series in Affective Science)(オックスフォード大学出版局)』という本にもこの図式が登場します(なお、この本は『社会不安障害とシャイネス―発達心理学と神経科学的アプローチ』という翻訳書が日本評論社から出版されています)。
・Asendorpf, J. B. (1990). Beyond social withdrawal: Shyness, unsociability, and peer avoidance. Human Development, 33(4-5), 250-259. doi:10.1159/000276522.
・Asendorpf, J. B. (1990). Development of inhibition during childhood: Evidence for situational specificity and a two-factor model. Developmental Psychology, 26(5), 721-730. doi:10.1037/0012-1649.26.5.721.

シャイネス(社会的回避動機づけ)×社交性(社会的接近動機づけ)の4類型はそれぞれリスクの高い精神病理が異なっているとされます。不安リスクが高いのはシャイネスと社交性がともに高い葛藤型です。これは不安が接近と回避の葛藤に起因するからと考えられています。今回取り上げる論文の序論によれば、物質使用や物質乱用のリスクが高いのも葛藤型で、抑うつや孤独感のリスクが高いのは回避型(シャイネスが高いが、社交性が低いタイプ)だそうです。

しかし、神経生物学的、脳科学的にシャイネスと社交性という2次元の性格特性の特徴がどの程度分かっているかというと、まだまだ未解明なことが多いそうです。特にコルチゾールの結果は一貫していません。このような現状にかんがみ、シャイネスと社交性の神経生物学的調査が実施されました。

*シャイネスの日本語訳は何が良いのかは難しい問題です。私が少し調べただけでも、内気、恥ずかしがりや、照れ屋、はにかみ屋、人見知り、引っ込み思案といった訳語が出てきます。果たしてどの邦訳が良いのか分からないため、ここでは単にシャイネスと表記します。ネバダ大学ラスベガス校のクリストファー・A・カーニー教授著で立教大学現代心理学部の大石幸二教授監訳の『親子でできる引っ込み思案な子どもの支援(学苑社)』ではシャイネスの日本語訳に「極度の引っ込み思案」というものを当てていますが、研究分野や文脈の微妙な違いによって適切な邦訳が異なると考えられるので、本記事では「極度の引っ込み思案」という訳語は採用しません。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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