緘黙の発症に誕生月は関係するか?(後編) | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

緘黙の発症に誕生月が関与しているとの自説を説明します。前回はこちら⇒緘黙の発症に誕生月は関係するか?(前編)

前回は、精神疾患や自殺などと誕生月との関係についての先行研究に言及しました。そして、なぜ誕生月が関わってくるのかについての様々な仮説についてもお話ししました。今回は緘黙に焦点をあてて考えていきたいと思います。

「緘黙の発症に誕生月が関わるとは、なんと突飛な発想か!ばからしい」との意見もあるかもしれません。しかし、私としては何らかの関係性があると疑う必然性があると思っています。

1.生物学的説明

2.日常的トラウマ説や劣等感による説明

に分けてお話しします。

1.生物学的説明

前回にも記したとおり、遺伝的要因の関与(Chotai et al., 2003)が疑われます。また、モノアミン系神経伝達物質(ノルアドレナリン・アドレナリン・ドーパミン・セロトニン)については以下のような研究成果があります。

11-12月生まれの乳幼児は、MHPG(ノルアドレナリン代謝産物)やHVA(ドーパやドーパミンの代謝産物)濃度が高く、5-HIAA(セロトニン代謝産物)濃度が高いのは6-7ヶ月生まれとの報告(Chotai et al., 2006)があります。大人では、5月が5-HIAA濃度の最高点で、11月が最低であるとの報告もあります(Luykx et al., 2012)。

海外では緘黙の治療にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を使用することもあると聞きます。理論的に有効性を確認するためには、場面緘黙と神経伝達物質(特にセロトニン)との関連を調べなければなりません。今後、理論的根拠が蓄積され始めた場合、誕生月との関係も疑うのが自然な流れです。

2.日常的トラウマ説や劣等感による説明

これは仮説に仮説を重ねた2重仮説ですので、解釈には十分にご注意下さい。

日本にある緘黙支援団体の1つ、かんもくネットは2007年7月7日にKnet News「トラウマについて(Ⅱ)」という情報を発信したことがありました。その中では、生物学的要因に基づく機能的未成熟さが日常的トラウマとなって子どもに襲い掛かり、緘黙の発症を促すとの仮説が紹介されています。どうやらこの仮説、Kristensen,H.(2000)が源流のようです。孫引きでスミマセン

Google Scholar⇒Kristensen,H.(2000)

機能的未熟さが具体的にどのようなことを指しているのか分かりませんが、これは誕生月と関係しそうです。たとえば、田中(2011)は早生まれ(1-3月生まれ)の子どもが1年単位で画一的に区切られた学校環境により運動能力や学力の発達が阻害される可能性を指摘しています。ただし、この論文は経済学部1年生によるもので、厳密な統計的検討を行ったわけではないので、注意が必要です。

論文データベース「CiNii」で探索すると、身長や体重と誕生月の関わりを検討した研究がヒット(黒川他, 2009)します。年少児や年中児では体力テスト評価に誕生月による差がでるが、年長児ではでないという研究(中野他, 2010)もあります。

CiNiiで「誕生月」を題名に含む論文一覧⇒CiNii

もし、早生まれの子どもが身体面や学力面で不利益を被っているとしたら、それが劣等感につながり緘黙の発症に影響してくる可能性があります。また、「これこれが出来ないといけない」という子どもへの要請が早生まれの子どもには負担となり、日常的トラウマとなることも考えられます。

緘黙児には早生まれが多いのでしょうか?もし多いとしてもどの程度なのか、調べてみる価値はありそうです。子どもを1年単位で区切る期間が異なる外国との比較も面白いでしょう。もっとも他の要因などと混交してしまったり、相殺されて効果が出なかったりすることもあり得ます。

○引用文献

Chotai, J., Murphy., D. L., & Constantino, J. N.(2006).Cerebrospinal fluid monoamine metabolite levels in human newborn infants born in winter differ from those born in summer. 145, 189-97.

Chotai, J., Serretti, A., Lattuada, E., Lorenzi, C., & Lilli, R.(2003). Gene-environment interaction in psychiatric disorders as indicated by season of birth variations in tryptophan hydroxylase (TPH), serotonin transporter (5-HTTLPR) and dopamine receptor (DRD4) gene polymorphisms. Psychiatry Research,119, 99-111.

Luykx, J. J.., Bakker, S. C., Lentjes, E., Boks, M. P., van Geloven, N., Eijkemans, M. J., Janson, E., Strengman, E., de Lepper, A. M., Westenberg, H., Klopper, K. E., Hoorn, H. J., Gelissen, H. P., Jordan, J., Tolenaar, N. M., van Dongen, E. P., Michel, B., Abramovic, L., Horvath, S., Kappen, T., Bruins, P., Keijzers, P., Borgdorff, P., Ophoff, R. A., & Kahn, R. S.(2012).Season of Sampling and Season of Birth Influence Serotonin Metabolite Levels in Human Cerebrospinal Fluid, PLoS One, 7(2):e30497.

田中駿 (2011). 同学年内において誕生月の差が子供に与える影響 名古屋大学高等教育研究センター.

中野貴博・春日晃章・村瀬智彦 (2010). 幼児の体力テスト評価における誕生月の影響に関する検討 日本体育学会大会予稿集, 61, 189.

○内容を把握できなかったが、言及した論文

黒川修行・佐藤洋 (2009). 同一学年間における誕生月別にみた児童・生徒の身長・体重の関係 学校保健研究, 51, 90-94.

○参考URL

かんもくネット Knet News 7月 トラウマについて(Ⅱ)(2012年7月16日現在)
http://kanmoku.org/news07.html

番外編もあります。よかったらどうぞ⇒精神疾患等々と誕生月~緘黙と誕生月(番外編)~

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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