認知行動療法が効くのは注意バイアスが変化するから? | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioural Therapy)が不安障害に効くというエビデンスがあったとしても、それがどのようなメカニズムによるものなのか、疑問が残ります。今回は子どもを対象にしたCBTが成功した場合、注意バイアスも同時に変化するという研究です。著者によれば、大人ではこの種の研究がわりと古くからあるのですが、子どもに関する文献は少ないそうです。

Legerstee, J. S., Tulen, J. H., Dierckx, B., Treffers, P. D., Verhulst, F. C., & Utens, E. M. (2010). CBT for childhood anxiety disorders: differential changes in selective attention between treatment responders and non-responders. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 51, 162-72.

★概要

様々な不安障害を抱える子ども(平均年齢11歳)が参加しています。不安障害には特定恐怖症や社会(社交)不安障害、分離不安障害、全般性不安障害、パニック障害が含まれます。

第一段階として子ども中心の認知行動療法(CBT)を実施し、それでも改善しなかった場合だけ親も積極的に関与する第二段階のCBTを試みています。

結果、治療に成功した子どもは脅威度が高い絵(例:銃)に対する注意バイアス(dot-probe課題で評価)が減少しました。なお、脅威度が低い絵(例:墓地)に対する注意バイアスと治療成果には関連はなく、治療に失敗した子どもでは治療の前後どちらでも注意バイアスがありませんでした。

また、第一段階で改善した子どもと第二段階で改善した子どもでは治療前の注意バイアスが異なっていました。つまり、前者は脅威度が高い絵から注意をそむけるバイアスを示していたのに対し、後者は注意を向けるバイアスを示していました。

しかし、注意バイアスが減少したといっても完全になくなったわけではありません。治癒した段階に関わらずCBT後でも脅威の高い絵から脅威のない絵に注意を移すのが難しい傾向でした。一方、第二段階で治癒した子ども(治療前に脅威に注意を向ける傾向のあった子ども)では注意を脅威の高い絵に向けないようにする方略が認められました。

★コメント

異なる不安障害を一括りにしているので、各障害の違いが把握できません。また、複数の不安障害を合併している子どもが40%以上います。しかし、実際の臨床現場では単一より複数の不安障害が合併しているケースが多いあるいは今回の結果が複数の不安障害で共通しているのであれば、このようなアプローチも大切だろうと思います。

認知行動療法(CBT)と銘打ってはいますが、問題解決スキルやソーシャルサポートの訓練(段階1)もしており純粋なCBTといえるのか疑問も残ります。特に段階2では父-母間、親-子ども間の意思疎通を改善するなど家族療法の世界に入っているような気もします。それとも、(子どもの)CBTではそのようなプログラムが普通なのでしょうか?現場を知らない私には分からないことです。

治療後でも脅威の高い絵から脅威のない絵に注意を移すのが難しいということはまだ注意バイアスがあるといえます。しかし、1.初めから不安障害のない子供を統制条件に加えていないことおよび2.驚異の高い刺激から目を離さないことは適応上大切なことをふまえるとこれが病的なものかどうかは分かりません。一方、第二段階で治癒した子どもは注意を脅威の高い絵に向けないようにしていたため、不安が減少したという可能性があります。したがって、脅威に注意を向けさせると過剰な不安を抱くことがあるかもしれません。

今回の結果だけで、注意バイアスの減少がCBTが成功した原因であるとはいえません。というのも注意バイアスの減少は何らかの因子X(例:コーピングスキル)の変化に伴って現れただけで、あくまでも重要なのはその因子Xであるという考え方も可能だからです。あるいは、CBTで不安が減少した結果、注意バイアスが減少したと考えることもできます。

しかし、1.CBTで改善しなかった子どもの注意バイアスは大きくなかったことおよび2.注意バイアスの形成が不安を高めること(Eldar et al., 2008)も有り得ることをふまえると、CBTによる不安障害からの回復と注意バイアスの減少が全く無関係だと考えるのも無理があります。

考察に関してはCBTの内容(特に曝露)と注意バイアスや方略の変化の関係を指摘しており、興味深かったです。この考察が正しければ子どもの不安障害の治療には治療前の注意バイアスの傾向によって異なった方法を用いる必要がでてきます。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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