緘黙を行動遺伝学で分析 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。



『精神疾患の行動遺伝学―何が遺伝するのか』という本を読みました。行動遺伝学の知識が浅い私にとって興味深い話が多かったです。というわけで(場面)緘黙を行動遺伝学的に考えます。もちろん思弁的なもので実証的な裏付けはほとんどありません。

1.緘黙はどの程度遺伝の影響を受けるか?

精神疾患の遺伝子を探す試みは多いですが、実際には結果が再現されないことがあります。そのため、双生児法など行動遺伝学的手法を駆使してあらかじめ遺伝の影響度を推定することが重要です。緘黙でも双生児が見つかっているようですが、残念ながら緘黙に対する遺伝と環境の影響度を具体的に何%と推定した研究はありません。

2.緘黙の発症と維持には同じ遺伝要因、環境要因が働くのか?

遺伝や環境の影響度を推定できたとしても、それがどのようなメカニズムによるのかは不明です。その際、緘黙の発症と維持に同じ因子が影響するという仮定の妥当性が問題となります。たとえば、緘黙発症初期よりも症状が固定化している時期の方が環境の影響(特に非共有環境)が大きければ、緘黙の持続には学習が関わっていると推測することができます。

3.緘黙は不安障害か?

複数の症状あるいは障害の間で同じ遺伝因子や環境因子が働いているかどうかは遺伝相関や環境相関という数値で求めることができます。

多様な不安障害に共通の遺伝因子が緘黙にも関わっていれば、「緘黙は不安障害の一種である」との説を補強する材料となります。ただし、複数の精神疾患で同じような診断基準が部分的に使用さていることが共通因子の原因の可能性もあります。

また、緘黙と社会不安障害(または特定恐怖)が連続体だと主張したいなら、両者が同じ遺伝子の影響を受けていることを実証する必要があります。ちなみに、否定的評価に対する恐れ-社会不安障害-回避性人格障害という連続体を支持する研究があるそうです。

緘黙の人は扁桃体が過敏であるとの説があります。緘黙症状と扁桃体の過敏性(中間表現型)の間の遺伝相関が高ければ、扁桃体の過活動は緘黙症状と共通の遺伝的基盤があるということになります。

4.全緘黙は場面緘黙の極端な症状か?内気やシャイとの関係は?

3.にも書きましたがある障害(症状)が連続体かどうかを遺伝相関で判断することができます。これは全緘黙と場面緘黙の場合にも適用できるでしょう。緘黙と内気やシャイが連続体かどうかも同様です。

5.緘黙は実体か?それとも便宜上の名称か?

独立経路モデルでは実体としての障害は存在せず、その名は症状の寄せ集めをラべリングしたものにすぎないとします。一方、場面緘黙という実体が存在すると仮定する場合は共通経路モデルといいます。なぜこれが問題になるかというと、前者は症状間に共通の遺伝因子・環境因子を想定しなくてもいいのに対し、後者は共通因子を想定する必要があるからです。もちろん共通経路モデルでも各症状に独自の因子があっていいわけです。

しかし、実体(共通経路モデル)と虚像(独立経路モデル)のどちらを採択すべきかという疑問に答える客観的な基準は開発されていないようです。また、(場面)緘黙はアメリカ精神医学会が定めた診断基準DSM-IV-TRの5要件をすべて満たす必要がありますが、場面緘黙の場合は実質的にA「特定の場面で話せない」だけが明確な症状で、残りの4つは除外基準であったり、他の障害にも記述されていることです。だから、緘黙はうつ病などのように症状自体が複数ではないので、共通因子を探す必要はないでしょう(じゃあ、こんな話をしたんだ<怒>という声が聞こえてきそうです)。

6.遺伝環境相関

人がある環境にさらされるかどうかは遺伝の影響をうけます。これを遺伝環境相関といいます。遺伝環境相関には3つのタイプがあり、それぞれ受動的、能動的、誘導的と名付けられています。緘黙をたとえに説明します。

まず、受動的とは内気な家族に緘黙児が誕生する傾向が多いという例があります(あくまでたとえです)。内気さが遺伝の影響を受けており、内気な家族が「選んだ」環境(例:付き合いが少ない)は緘黙児にとって選択の余地はないことになります。

次に、能動的とは緘黙児が自らの特性に合わせて人との接触を避けるというように、自らの「遺伝的特性に見合った環境を能動的に選択、形成していく」(p.49)ことです。

最後の誘導的とは緘黙児のしゃべらないという反応に対して、周囲の人が話しかけなくなるというように、本人の行動に応じて他者が反応することにより形成されます。

なお、私は行動遺伝学の専門家ではないため誤りがあるかもしれません。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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