不安の高低によって恐怖、幸福の表情の認識に違いがある | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

不安が高い人は怒った表情に対する注意バイアスがあります。また、注意バイアスは認知行動療法による不安障害の改善と関係しているようです(Legerstee et al., 2010)

しかし、そもそも注意バイアスの基盤はいったい何なのかよく分かっていません。そこで、情報を処理する際に生じるバイアスを知覚の個人差として説明しようとした論文を読んでみました。具体的には、不安の高低によって表情判断の基準と感度(弁別力)に差があると主張しています。

Frenkel, T. I., Lamy, D., Algom, D., & Bar-Haim, Y. (2009). Individual differences in perceptual sensitivity and response bias in anxiety: Evidence from emotional faces. Cognition & Emotion, 23, 688-700.

★概要

スピルバーガー(Spielberger)による状態-特性不安検査(STAI)の特性不安得点に基づき、大学生を高不安群と低不安群に分けています。

刺激は恐怖または幸福の表情で様々な強度のものを用い、その強さを①17.5%または22.5%、②47.5%または52.5%、③77.5%または82.5%の2×3=6種類用意しました。なぜ20%、50%、80%の3種類にしないのかというと、17.5%と22.5%の比較などで微妙な表情の差に対する感度も測ることができるからです。

①~③の条件で、被験者にはどちらが表情が強いか(または弱いか)を判断させました。たとえば、①17.5%または22.5%の条件だと22.5%強度の方を強いと判断すれば正解です。顔刺激は判断が終わるまで見ることができました(つまり、考える時間が与えられていました)。

結果、高不安群は低不安群と比べて、①表情を恐怖と判断する基準が緩い(約20%、50%の強度)②表情を幸せと判断する基準が厳しい(約50%の強度)という結果になりました。

低不安群の立場からいうと、①は表情を恐怖と判断する基準が厳しい、②は表情を幸せと判断する基準が緩いということになります。

もっとも、恐怖表情の判断基準が0と有意に異なる(つまり、判断基準にバイアスが存在する)のは高不安群ではなく、低不安群の方でした。

高不安群のほうが低不安群よりも①弱い恐怖表情の強度(17.5% vs. 22.5%)間の違いを認識するのが苦手(p<.05)で②中程度の幸福表情(47.5% vs. 52.5%)間の違いにも鈍感な傾向(p<.10)でした。

★コメント

刺激(ここでは表情)に対する感度を測定する際に信号検出理論という私には全く知識がない方法を用いているので、難解でした。しかし、漠然とした内容はつかめたかな?と思ったのでその内容を記事にしています。したがって、内容には誤りが含まれている可能性が多分にありますのでご注意ください。

○不安が高い人は表情の知覚が普通とは異なる

高不安群の人たちは表情を恐怖と判断しやすく、それだけ恐怖を認識しやすいといえます。しかし、これは同時に恐怖の表情ではないのに、誤って恐怖の表情だと判断することが増えることを意味します(専門的はfalse alarmと言います)。

もっとも、統計学的検定の結果をふまえると、判断基準にバイアスがあるのはむしろ低不安群の方で、表情を恐怖と判断する基準が厳しすぎる(それだけ楽観的?)ようです。

一方、高不安群は表情を幸福だと判断しにくいという結果も得られました。これは裏返せば幸せな表情なのに、幸せでないと判断することが多いということです(専門用語ではmissに相当します)。

低不安群は表情を幸福だと判断する基準が緩く、false alarmが多いということですから、それだけ他者の表情をポジティブに評価するバイアスが存在することになります。

同じ表情を見ていても知覚の仕方が異なるのはどうしてでしょうか?注意バイアスと表情知覚の歪みは関連しているのか?さらなる研究が必要です。

なお、顔刺激が閾値以上ではっきりと認識可能な点が先行研究とは違うので、比較をする際には注意が必要です。

○不安ではなく、うつの影響?

今回の研究では、高不安群は低不安群よりもうつ得点(ベック抑うつ評価尺度で評定)が高い結果となっていました。

高不安/うつ群は表情を恐怖だと判断する際のバイアスがなく、むしろ低不安/うつ群に「表情を恐怖でないと判断するバイアス」が存在するという結果は不安ではなく、うつの違いとしても説明できそうです。実際、抑うつ度の高い人は現実を正しく認識し、抑うつ度の低い人は世界を(ポジティブに)歪めて捉えているという理論が存在します。これはAlloy & Abramson (1979)により提唱された考えで、抑うつリアリズム(depression realisim)といいます。

抑うつリアリズムの観点からいえば、今回の結果が不安の高低が反映されたものなのか、それともうつの違いによるものなのかは判断できません。

○参考URL(2013年2月13日現在)

石田翼(2001).信号検出理論について-数式と実践

http://www5e.biglobe.ne.jp/~tbs-i/psy/tsd/tsdrev.pdf

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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