感情がネガティブな子は左より右の鼓膜が温かい | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

不安などネガティブな感情が強い子どもは左より右の鼓膜が温かいそうです。絶対温度では、ネガティブな子はポジティブな子と比較して、左右の鼓膜温度がともに高いらしいです(曖昧な表現でスミマセン)。

Boyce, W. T., Essex, M. J., Alkon, A., Smider, N. A., Pickrell, T., & Kagan, J. (2003). Temperament, tympanum, and temperature: four provisional studies of the biobehavioral correlates of tympanic membrane temperature asymmetries. Child development, 73, 718-733.

★概要

4地域での異なる研究を鼓膜の温度を測ることで1つに集約した研究です。

その地域とはサンフランシスコ(カリフォルニア州)、バークリー(カリフォルニア州)、マディソン(ウィスコンシン州)、ボストン(マサチューセッツ州)でした。

異なる地域での研究をまとめたのですから、心理尺度もそれぞれ違ったものを用いました。

合計、468人の児童(4~8歳)のデータをとることができました。

○全般的結果

鼓膜に関して右より左が温かい子は基本的な感情がポジティブ、右の方が温かい子はネガティブな感情を示しました。温度差「左鼓膜-右鼓膜」は±1℃が最高でした。

○個別結果(時間がない方は読まなくても支障はありません)

サンフランシスコ(37人):外在化問題行動(攻撃など)と心拍が温度差「左鼓膜-右鼓膜」と逆相関(男児)。活動レベル(activity level)と低強度の快感(low-intensity pleasure)が温度差「左鼓膜-右鼓膜」と正の相関(ただし仮説に反する結果も出現)。女児では関連なし。

絶対的温度:左鼓膜が温かいほど、社会的能力が高く(男児)、怒ることが少ない(女児)。仮説に反する結果として1.怒り表出得点が高いほど右鼓膜の温度が低い(女児)、2.恐怖を感じやすいほど右鼓膜が冷たい(男児)が得られた。

バークリー(79人):温度差「左鼓膜-右鼓膜」では有意な相関関係を検出できず。

絶対的温度:左鼓膜が温かいほど抑制制御が上手で、怒りの表出が少ない(女児)。右鼓膜が温かいほど高強度快感(high-intensity pleasure)が少なく、シャイ(男児)。仮説に反する結果として、右鼓膜が温かいほど怒りの表出が小さい(女児)との結果も得られた。

マディソン(192人):温度差「左鼓膜-右鼓膜」が高いほど4、12ヶ月齢でなだめやすい乳児で、3年5ヶ月~4年5ヶ月齢の幼児期に注意制御、抑制制御、向社会性が高くなりました(男児)。「左鼓膜-右鼓膜」が高いほど新奇性に対するストレス反応(乳児期)、幼児期の怒り、ネガティブな感情、敵意-攻撃性、多動性-注意散漫性が低くなりました(男児)。女児では「左鼓膜-右鼓膜」が高いほど向社会性が高い結果でした。温度差「左鼓膜-右鼓膜」が高いほど怒り、シャイ、不安-恐怖が低い結果となりました(女児)。

絶対的温度:左鼓膜が温かいほどシャイネス、ネガティブな感情が低くなりました(男児)。女児では左鼓膜の温度が高いほど怒り、シャイ、ネガティブな感情、敵意-攻撃性、不安-恐怖が低くなりました。右側の鼓膜が温かいほど乳児期になだめにくく、幼児期に多動-注意散漫性が高くなりました(男児)。

ボストン(160人):温度差「左鼓膜-右鼓膜」に関しては有意な結果が得られませんでした。

ただし、左右ともに絶対的な鼓膜温度が高いほど14、21ヶ月齢のときに様々な刺激に対して恐怖を示し、5~7歳で不安が高くなりました(女児)。

サンプルサイズから、マディソンやボストンの方が大規模であることが了解できます。したがって、統計的には個別結果はサンフランシスコよりもその他の地域の方が異常な値(外れ値)の影響を受けにくく、信頼できます(ただし、大規模調査でも尺度測定の問題がある場合はその限りでない)。

★コメント

著者は、脳の活動が高まると、血流が増加し、結果、鼓膜の温度が高くなるので、本結果が得られたと考察されています。一般的に前頭葉の左半球の活動とポジティブな情動、右半球の活動とネガティブな情動が互いに関連しています。

たとえば、社会(社交)不安障害の人は人前でのスピーチが予測される状況下では右半球が活発に活動します(Davidson et al., 2000)。また、1歳から4歳にかけて社会不安障害のリスクである行動抑制が持続しやすい幼子は右前頭葉が活発です(Fox et al., 2001)。

ネガティブな人はポジティブな人よりも両半球の前頭葉活動が高いという知見もあります。留意してもらいたいのは、この知見は「右半球優位-ネガティブ情動、左半球優位-ポジティブ情動」との両立が可能だということです。前者は絶対的な活動を、後者は相対的な活動のことだからです。

序論によれば、鼓膜への血流は視床下部や前頭葉と同じ血管によって支持されているそうです。ちなみに、交感神経は身体の右側の方が反応性が高いと述べられています。

脳の免疫系では左側の方が強いそうです。表情は顔の左側に強く現れます。ただし、表情がポジティブなのかネガティブなのかによって顔のどちら側に表情が出やすいかは異なります。

すべての結果が仮説を支持するものではありませんでしたが、一定の結果は得られたと評価できます。鼓膜温度と心理、行動変数が無関係ならば、もっと結果がランダムになっていたはずです。仮説とは逆の結果もありましたが、91%は仮説と一致しているので、本研究は信頼できるとの考察が書かれています。

それに、異なる3つの州で別々のサンプリング法、尺度を用いても一定の結果が得られた点も仮説を支持する方向に働きます。しかし、これは同時に欠点でもあり、質問紙に回答する人が親や教師などばらばらです(同じ地域での研究でも回答者が異なる場合あり:詳細は論文を参照)。さらに、乳児期には質問紙ではなく、実験室での観察も行っており、異質な行動指標の集合体といえます。

日本人にも同様の傾向があるかどうかは分かりません。しかし、身体的特徴でリスクのある子供を特定できれば、客観的な介入、支援基準となり得ます。

スイスの Frontiers社出版のジャーナル「Frontiers in Psychology」から最新のレビュー論文がでていますから、ご興味のある方は読んでみてください。Frontiersシリーズはすべてオープンアクセスなので、誰でも無料で論文を入手することができます。

Propper, R. E., & Brunyé, T. T. (2013). Lateralized Difference in Tympanic Membrane Temperature: Emotion and Hemispheric Activity. Frontiers in Psychology, 4:104. doi:10.3389/fpsyg.2013.00104

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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