SSRIの慢性服用でネガティブな感情が減少、協力的になる | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
HOME   »   薬物療法  »  SSRIの慢性服用でネガティブな感情が減少、協力的になる

問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

これまで、表情認知に対するSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)の影響を調べた研究を読んできました。

たとえば、SSRIやNARIを1週間服用すると、怒りや恐怖などネガティブな表情を認識する能力が減退し、ポジティブな性格語に対する記憶が増強した研究(Harmer et al., 2004)SSRIの単回投与で幸福だけでなく恐怖の表情も早く、正確に認識できるようになった研究(Harmer et al., 2003)です。

また、SSRIの急性投与で表情に対する扁桃体の活動が増したという報告(Bigos et al., 2008)も読みました。

しかし、これらの研究の大元となった論文を読んでいなかったので、今回取り上げてみます。

Knutson, B., Wolkowitz, O. M., Cole, S. W., Chan, T., Moore, E. A., Johnson, R. C., Terpstra, J., Turner, R. A., & Reus, V. I. (1998). Selective alteration of personality and social behavior by serotonergic intervention. American Journal of Psychiatry, 155, 373-379.

★概要

健常者51名が実験に協力しました。

SSRIのパロキセチン(パキシル)20mg/日またはプラセボ(偽薬)を4週間服用させました。実験者にも被験者にも薬が本物かどうかわからない二重盲検法を用いました。

敵意はBuss-Durkee Hostility Inventory、ポジティブ、ネガティブ感情はPositive Negative Affect Scalesで質問紙によって測りました。これらはすべて実験前、服用1週間後、4週間後に行いました。質問紙に回答する際に被験者は「1週間前との比較で答えなさい」との教示を与えられました。

質問紙調査と同じ時期にパズル課題で親和行動を評定しました。パズルにはタングラム(知恵の板)を用い、2人(SSRI群1人、プラセボ群1人)で解かせました。親和行動はパートナーにヒントを与えると1点、自分だけで解決しようとしたり、相手に命令すると-1点という方法で得点化しました。

結果、SSRI投与群はネガティブな感情(特に敵意)が1週間目から減少しました(ポジティブな感情では有意な変化なし)。血漿中の薬物濃度(4週間目)が大きいほどネガティブな感情(1週間目と4週間目)が減少しました。

パズル問題での親和行動は7日目に増加しましたが、7日~28日の間では協力が増加しませんでした。しかし、SSRIの血漿濃度(4週間目)が高い人ほど親和行動(1週間目と4週間目)が多くなりました(正の相関関係)。

★コメント

この研究が端緒となってSSRIが表情認知に与える影響に関心が集まったと私は考えています。しかし、元の論文は表情の知覚や認知ではなく、感情や行動に与える影響を報告したものです。

薬物によって協力行動が増加したという結果に私は驚かされました。

SSRI投与でネガティブな感情が減少したことを実験的に示しただけでなく、血中濃度と感情、親和行動の相関関係まで図示しており、説得力のある論文となっています。

○注意点(研究の限界)

実験の協力者が健常者であったことに注意しましょう。また、参加者の募集は地元の週刊新聞に掲載した広告経由ですから、最初から他人と協力する傾向が高い可能性も頭の片隅に置いておきましょう。

著者らは、パズル課題のパートナーが見知らぬ他者であった点に注意を促しています。というのも、最初から支配-服従の関係が成立している者同士だと結果は異なる可能性があると論じている箇所があるからです。

スポンサードリンク

Comment

スポンサードリンク

Trackback
Comment form
カテゴリ
ランキング
Twitter
スマートフォンサイト
Amazon書籍
場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

リンクについて
このサイトはリンクフリーです。リンクの取り外しはご自由になさって下さい。個別ページのSNSでの共有やブログ、サイトへのリンクも自由です。
プライバシーポリシー
当ブログはGoogle Adsense広告を掲載しています。Google Adsenseでは広告の適切な配信のためにcookie(クッキー)を使用しています。ユーザーはcookieを無効にすることができます。

なお、Google Adsenseで上げた収益は将来のホームレス生活を見越し、すべて貯金にまわしています。
免責事項
ブログ記事の内容には万全の注意を払っていますが、管理人はその内容の正確さについて責任を負うものではありません。

PAGE TOP