社会不安と扁桃体の関係は他の脳部位の影響を受ける | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

社会(社交)不安障害の人は扁桃体が興奮しやすいとされます。

たとえば、社会不安障害の人は自己に関する否定的な文を読んでいると扁桃体が活性化します(Blair et al., 2008)。また、社会的場面に不安がある子供は他者からの否定的な評価を予想すると、扁桃体が活発になります(Guyer et al., 2008)

しかし、社会(社交)不安が高い人は扁桃体の興奮閾値が低いというだけではありません。脳は扁桃体だけで構成されるわけではなく、扁桃体へ情報を入力する部位、扁桃体から情報を出力する領域を考慮しなければなりません。

今回は扁桃体と連絡している紡錘状回が登場します。

なお、紡錘状回には紡錘状回顔領域(Fusiform Face Area:FFA)と呼ばれる領域があり、文字通り顔の認識に重要な役割を果たしています。

Pujol, J., Harrison, B. J., Ortiz, H., Deus, J., Soriano-Mas, C., López-Solà, M., Yücel, M., Perich, X., & Cardoner, N. (2009). Influence of the fusiform gyrus on amygdala response to emotional faces in the non-clinical range of social anxiety. Psychological Medicine, 39, 1177-1187.

★概要

22人の健常者が参加しました。これらの協力者は各々、幅広い範囲(低~高)の社会不安度(Liebowitz Social Anxiety Scale質問紙に基づく)を示していました。

課題では中央上に表示された顔(ターゲット)の表情が下にある表情の左右どちらと同じかどうか、5秒間の間に回答してもらいました。ターゲット表情は幸福か恐怖、下に表示される左右の表情は幸福、恐怖、怒りの3種類でした。

同じようなことを顔ではなく、物体の形で実施し、それを統制課題としました。

fMRI(機能的磁気共鳴画像法)で脳活動(正確にはBOLD信号)を計測しました。

結果、恐怖表情(vs. 幸福表情)は紡錘状回と中前頭回の両側を賦活させました。

表情判断は物体の形状判断と比較して、扁桃体と紡錘状回の機能的結合を強めました。

右紡錘状回の活動を統制して初めて扁桃体の活動と社交不安の間に正の相関が生じました。この結果は幸福表情の時には左扁桃体で、恐怖表情の時には左右両半球の扁桃体で得られました。

つまり、社交不安と扁桃体の関係には、右紡錘状回からの影響もあるというわけです。

なお、表情を見たときに活性化したその他の領域(視覚皮質、前頭前野)の活動を統制しても、扁桃体と社会不安の関係に有意な相関が生じませんでした。

さらに、恐怖表情で紡錘状回の活動が高いほど、社会不安や損害回避、罰感受性が低い結果となりました。社会不安に関しては特に右半球の紡錘状回との関係が有意でした。

★コメント

あくまでも、参加者は臨床閾値以下の社会不安を呈した人で、社会(社交)不安障害の人ではないことに注意する必要があります。課題では複数の表情が同時に出現したという点も特徴的でした。

事故や病気などで脳の一部を損傷してしまった患者さんが協力した実験で、顔処理は左半球より右半球の方が強いことがわかっているそうです。これは左半球よりも右半球の関与が示された本結果と一致します。

考察(discussion)には視覚野→紡錘状回顔領域(FFA)→扁桃体という流れで顔情報の処理がなされていると書かれています。

また、無意識的な顔処理経路は視床枕→扁桃体→視覚皮質と視覚野を飛ばしてなされる場合もあります。さらに、扁桃体は前頭葉からのトップダウン制御を受けており、非常に複雑な顔処理ネットワークが脳内に形成されています。

表情判断課題だから紡錘状回の活動が扁桃体と社会不安の関係を修飾しているという結果が出たのでしょう。顔刺激を用いない課題なら、また違った結果となる可能性があります。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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