行動抑制+注意バイアス=ひきこもり | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

これまで経験したことのない刺激に対して、不安を抱く行動抑制(behavioral inhibition by Jerome Kagan)。乳幼児期に抑制傾向が強いと、将来社交不安障害やうつ病になるリスクが高くなるといわれています。

一方、普通の子どもたちでも怒りの表情に注意を向け続けると不安が高まるとの報告(Eldar et al., 2008)認知行動療法に伴って注意バイアスが変化するとの報告(Legerstee et al., 2010)もあり、注意バイアスが不安の形成、維持に何らかの役割を果たしていると考えられます。

そして今回の論文では、行動抑制(乳幼児期)と注意バイアス(思春期)が合わさるとひきこもり(思春期)のリスクが増加するというのです。

注意:social withdrawal(ひきこもり)の得点化は親がChild Behavior Checklist(CBCL)に回答するという形式で行っています。CBCLは日本語版も開発されており、そこでも、ひきこもり(引きこもり)という訳語が使用されているので本ブログもそれに則ります。

Pérez-Edgar, K., Bar-Haim, Y., McDermott, J. M., Chronis-Tuscano, A., Pine, D. S., & Fox, N. A. (2010). Attention biases to threat and behavioral inhibition in early childhood shape adolescent social withdrawal. Emotion , 10, 349–357.

★概要

大都会ワシントンD.C.に住む中上流階級の白人集団を継続的に追跡した縦断研究です。最終的には126人のデータが有効となりました。

行動抑制の指標:新奇な人や物に対する反応(14ヶ月齢と24ヶ月齢)及び知人でない同年齢児に対する発話度(4、7歳)を行動観察でもって評価。また、14・24ヶ月齢での社会恐怖と4・7歳でのシャイネスを母親への質問紙で評定。

各年齢における行動観察得点と質問紙得点を合算し、行動抑制の指標としました。

ひきこもり度:子どもが平均15歳の時に、親がCBCLに回答することで数値化。

注意バイアス:15歳前後にDot-Probe課題を用いて計測。

Dot-Probe課題:1.スクリーンの左右に表情が現れ、消える→2.上向きまたは下向きの矢印が左右のどちらか片方に出現→3.矢印の向きを回答。

表情のペアは次の3種類でした。1.怒りと無表情2.幸福と無表情3.無表情と無表情

もしも、怒った表情に注意を向けていたのなら、無表情の場合と比べて怒りの表情と同じ場所に現れた矢印の向きを素早く答えることができるはずです。この反応時間を注意バイアスの指標としました。

結果、乳幼児期に抑制気質が強かった青年は怒った顔に対する注意バイアスが高いことが分かりました。逆に幼児期の行動抑制が低かった青年は幸福の表情に対する注意バイアスが生じました。

さらに、怒り表情に注意してしまうバイアスが強い群でのみ、行動抑制とひきこもりの間に正の相関関係が生じました(乳幼児期に行動抑制が強いと引きこもりの度合いも強い)。

以上は、顔ペアの呈示が500msの場合の結果です。1500msの場合は有意な結果は得られませんでした。

★コメント

CBCLで測ったひきこもりが何を意味するのか論文を読んだだけでは判断できませんでした。それだけでなく、ネット上には具体的な質問項目が転がっていません(探すのが下手なだけかもしれません)。したがって、ここでいうひきこもりが日本の厚生労働省の定義と同じかどうかは分かりません(おそらく違うものであると私は考えています)。

Fox et al.(2001)によれば、14・24ヶ月齢~4歳の間に行動抑制が持続しやすい乳幼児は右前頭葉が活発か、または2歳までに家族以外に育てられる機会が少なかったということでした(ただし、2歳までの他人との接触そのものよりも2歳以降の交流の方が大事と考えることも可能)。

もしかしたら、前頭葉と親以外に接する機会のほかに、注意バイアスが行動抑制ひいてはひきこもりの要因になっている可能性があります。それだけに、今回の研究は注意バイアスを思春期の頃に計測したのが残念です。もしもこれが比較的幼い頃のデータなら、説得力も増すと思うのです。

そして、抑制気質と注意バイアスが強い子どもに注意の訓練を施すことで将来の不安障害、ひきこもりの発生率を低減させることができれば、注意バイアスが重要な因子だという主張にさらなる論拠をもたらします。

この点に関して著者は別の見方もしています。脅威刺激に対する注意バイアスが低いということではなく、ポジティブな表情に対するバイアスがひきこもりの予防因子だというのです。本研究で乳幼児期の行動抑制が低かった青年が幸せな表情に注意を向ける傾向があったという事実はこの仮説を支持します。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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