セロトニントランスポーター遺伝子が短いと赤面しやすい? | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

セロトニントランスポーター遺伝子は人前でのスピーチ中の扁桃体血流(Furmark et al., 2004)SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の効き目(Stein et al., 2006)偽薬(プラセボ)による治癒(Furmark et al., 2008)に関与していると主張している研究者がいます。

そして、今回の論文を著した研究グループはセロトニン遺伝子は赤面にも関係するというのです。赤面は交感神経系だけでなくセロトニンの影響も受けるとのエビデンスがあり、それが今回ご紹介する研究の出発点だったようです。

Domschke, K., Stevens, S., Beck, B., Baffa, A., Hohoff, C., Deckert, J., & Gerlach, A. L. (2009). Blushing propensity in social anxiety disorder: influence of serotonin transporter gene variation. Journal of neural transmission, 116, 663-666.

★概要

社交不安障害(社会不安障害)のドイツ人62名、健常者62名が参加しました。

赤面度は赤面傾向尺度(blushing propensity scale:BPS)という質問紙で調査しました。BPSにより様々な社会的場面での赤面度を5段階評定させました。

セロトニントランスポーター関連遺伝子(5-HTTLPR)とそのSNP(一塩基多型)であるrs25531に焦点を当てて、遺伝子解析を実施しました。SNPとは全塩基中、1つの塩基だけが他の塩基に置換していることです(実際には頻度が云々という細かな定義もありますが、省略します)。

○セロトニン遺伝子について

5-HTTLPRには遺伝子が長い型のホモ接合(LL)と1つ以上の短い型(SS/SL)をもつ多型があります。SS/SLの方がセロトニン再取り込み機能が低く、うつや不安との関係があるとされています。

rs25531は5-HTTLPR上にあるSNPで、大きく分けてA/A型と1つ以上のGがある型(AG/GG)があります。A/A型はセロトニントランスポーター活動が高く、AG/GG型は同活動が低いとされています。LL型かつAA型が最もセロトニントランスポーター活動が高く、それ以外の保因者はrestと表記されています。

○結果

社交不安障害の患者は健常者と比較して、5-HTTLPRのSS/SL型をもつ人は赤面度が高くなりました(p <.05)。rs25531を考慮に入れると、社交不安障害患者(vs. 健常者)でrest型の人は赤面傾向が強いと報告する傾向にありました(p <.10)。

探索的研究なので、多重比較を行っていませでした。なので、本当は赤面と遺伝子には何の関係もないのに、有意な関係が検出された可能性も否定できません。

★コメント

もしもこの研究が事実なら、セロトニン関連遺伝子は不安だけでなく、赤面にも関与しているということになります。今後の研究が期待されます。

自己報告に頼っているので、もしかしたら単に不安が強い人が赤面を意識する傾向にあり、結果として赤面度を高く評価してしまった可能性もあります。つまり、今回の結果は赤面そのものではなく、不安を反映しているのにすぎないと解釈することもできるのです。

この限界を解決するためには客観的な赤面の測定法を開発、利用する必要があります。赤面は生物学的な指標(例:顔面の血流)で表現できるのだとしたら、質問紙調査よりも有益でしょう。

実際に子どもの歌を歌うという恥ずかしい場面で顔面の血流量が増加したとの報告があります(Drummond et al., 2012)。自己報告による赤面度と社交不安(社会不安)度が高いほど歌唱中の顔面血流が増加しました。しかし、社交不安レベルを統制すると、自己報告による赤面度と顔面血流の関係は消失しました。したがって、赤面傾向尺度による赤面レベルの評価は実際の顔面血流ではなく、社交不安を反映している可能性があるのです。

ただし、これは健常者が被験者です。

引用文献(要約だけ読みました)

Drummond, P. D., & Su, D. (2012). The relationship between blushing propensity, social anxiety and facial blood flow during embarrassment. Cognition & Emotion , 26, 561-567.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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