健常者でもSSRIで表情評価中の扁桃体、島皮質の活動が減少 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今回の論文によれば、健常者でもSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)の長期的服用により扁桃体及び島皮質の活動が減少するようです。

Arce, E., Simmons, A. N., Lovero, K. L., Stein, M. B., & Paulus, M. P. (2008). Escitalopram effects on insula and amygdala BOLD activation during emotional processing. Psychopharmacology, 196, 661-672.

★概要

健康な女性13名(19~27歳)が参加しました。

SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)のエスシタロプラム(レクサプロ)または偽薬(プラセボ)を21日間(3週間)服用してもらいました。5mgを3日間、次の18日間で10mgを服用してもらいました。

被験者には本物の薬と偽薬と2種類服用してもらいました。もちろん、その間に2-4週間の断薬期間を設定しました。いわゆるクロスオーバー比較試験というやつです。

fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いてemotion face assessment課題中に脳活動を計測しました。この課題ではコンピュータスクリーン下部に表示されている表情2つの内どちらがスクリーン上部の表情と一致するかを5秒以内に答えてもらいました。表情は怒り、恐怖、幸福の3種類です。

統制課題では図形で同じようなマッチングテストを実施しました。

結果、服用している薬及び課題の表情によらず、脳活動(BOLD信号)「表情課題マイナス図形課題]で両側島皮質と両側扁桃体、視覚野、膝下部帯状回が活性化しました(腹側前帯状回の活動は低下)。

しかし、エスシタロプラムの尿中濃度が高いほど、両側扁桃体、両側島皮質、膝下部帯状回の活動が低下していました。

表情ごとの分析はSSRIの尿中濃度が500ナノグラム/ミリリットルだった10人に絞って実施しました。すると、恐怖や怒りの表情に対する扁桃体の活動がプラセボを投与した時よりもSSSRIを投薬した時の方が低下していました。ところが、仮説に反して怒りの表情に対する両側島皮質の活動はSSRI投与時の方がプラセボ服用時より活動が亢進していました。

本物のエスシタロプラムを服用している健常者でも不安/うつレベルに影響はありませんでした(State-Trait Anxiety Inventory・Beck Depression Inventory・Social Interaction Anxiety Scale・Brief Symptom Inventoryによる質問紙調査により計測)。

★コメント

著者は先行研究を渉猟し、島皮質は情動、認知、身体的生理の合流地点だと考えているようです。

SSRI長期間投与で不安やうつに変化はみられなかったのにもかかわらず、脳活動に変化があったという点が興味深いです。というのも、エスシタロプラムの効果は脳への作用が先で心理的な影響は後になって現れることを示唆するからです(ただし、健常者だから顕著な不安、うつレベルの変化が検出できなかったと解釈することも可能)。

男性ではSSRIの単回服用により表情課題中の扁桃体が賦活する(Bigos et al., 2008)ようで、長期的なSSRIの効果とは異なります。ただし今回は女性が被験者で、Bigos et al.(2008)は男性が被験者。単純比較はできません。

SSRIの一種、シタロプラムの9週間投与で社交不安障害の症状が緩和するとともに、人前でのスピーチ中に生じた扁桃体・海馬脳血流量が減少するという報告(Furmark et al., 2002))があります。しかし、Furmark et al.(2002)は社交不安障害の患者がスピーチしている最中の脳血流量をPET(陽電子放射断層撮影)で計測したのに対し、今回の実験は健常者でfMRI、課題は表情の判断です。

著者によれば尿中濃度と血中濃度が示すことには何らかの違いがあるので留意すべきとのことです。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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