12週間のSSRI服用で上側頭皮質と小脳が委縮 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

どうやら、12週間のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)服用で、社交不安障害(社会不安障害)の人の上側頭皮質と小脳が委縮するようです。

しかし、この論文には様々な問題が山積しており、今後の検証しだいで、結果が否定される可能性を孕んでいます。

Cassimjee, N., Fouche, J. P., Burnett, M., Lochner, C., Warwick, J., Dupont, P., Stein, D. J., Cloete, K. J., & Carey, P. D. (2010). Changes in regional brain volumes in social anxiety disorder following 12 weeks of treatment with escitalopram. Metabolic Brain Disease, 25, 369-374.

★概要

社交不安障害の人11人(平均年齢40.64歳:SDは11.74)が最終的なデータ解析で有効となりました。

なお、SDとは標準偏差(Standard Deviation)のことで、平均値からデータがどれぐらい散らばっているかを表す統計用語です。

SSRIのエスシタロプラム(レクサプロ)を毎日20mg、12週間服用してもらい、前後の脳容量をMRI(核磁気共鳴画像法)で計測したというシンプルな臨床試験です。

ただし、医者も患者も用いている薬が本物であることを知っているオープンラベル試験となっています。

結果、12週間の服用で社交不安は減少しました(完全な回復ではないことに注意)。社交不安はLiebowitz Social Anxiety Scaleを用いて評価しました。

MRIスキャンの結果、灰白質構造については有意差は検出できませんでした。しかし、SSRI服用開始時と比較して、12週間後に両側上側頭皮質、左小脳、小脳虫部容量が低下しました。

★コメント

海馬や扁桃体に直接的な変化がないのは不思議な結果です。というのも全般性社交不安障害者の扁桃体は約13%、海馬は約8%、萎縮しており、右海馬が萎縮しているほど社交不安が高く、右扁桃体が萎縮しているほど状態不安が強いとの報告(Irle et al., 2010)があるからです。

ただし、小脳に関しては最近、運動だけでなく、認知や情動への関与も指摘されており、それほど意外というわけではありません。

○シンプルなだけに問題が多い(時間経過・プラシーボ効果・障害特異性・年齢など)

本結果は果たして、治療の効果なのでしょうか?

clinical global impression(臨床全般印象度)によれば、11人中4人しか寛解しなかったようです。それにもかかわらず、脳構造の変化が認められました。よって、症状の改善と脳構造の変化には何ら関係がないと考えることも可能です。それとも、症状が改善する前に上側頭皮質や小脳が変化する必要があるのでしょうか?

統制群との比較ではないので、時間の経過によって脳容量が変化したのであり、SSRIの効果ではないとの反論を許してしまいます。あるいは治療への期待(プラシーボ効果)によって本結果が得られた可能性もありますが、その場合、心理的要因で脳容量が変わるという興味深い現象となります。

また、健常者が含まれていないので、ひょっとすると社交不安障害でなくても、12週間の服用で脳容量に変化が認められた可能性もあります。

平均年齢が約40歳と高めでした。もしかしたら高齢だから上側頭皮質、小脳、小脳虫部容量が減少したかもしれません。そのあたり老年医学(geriatrics)の知識がない私には分かりませんが…。

脳容量には性差がある可能性もあるので、今回のように男女を分けないで分析するには無理があるかもしれません。実際、社交不安障害患者で扁桃体の委縮が認められるのは男性患者特有の現象であるかもしれません(Irle et al., 2010)から、SSRIの効果に性差が生じてもおかしくありません。

残りのピル(錠剤)の数を数えていただけで血中濃度を測定していないので、患者群がSSRIをきちんと服用していたかどうかは不明です。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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