シャイネスと社会不安の違いは脳構造と脳活動にも表れている | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

シャイネスと社会不安(障害)は違います。と偉そうなことをいっても私には具体的にどう違うのか分からないのですが、少なくともアメリカでは違うんです。

たとえば、1万人以上の若者(13-18歳)を対象にしたNIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)の調査(参考URL参照)によれば、約半数の回答者がシャイだと認めたものの、その中で社会不安障害に当てはまったのは12%にすぎないそうです。さらに、シャイでなくても社会不安障害の方が5%いたといいます。社会不安障害の患者はうつ病や物質使用障害など他の障害との合併率がシャイな人よりも高いとの結果も得られています。

どうやら、シャイネスと社会不安の違いは脳構造や安静時の脳活動にも生じているらしいぞという論文が今年発表されました。これはシャイネスと社会不安の脳が違うことを示唆した世界初の業績です。研究グループは中国の四川大学華西医院と電子科技大学生命科学技術学部の人達です。

本論文でもシャイネスと社会不安の相関係数は0.376と弱く、完全に同じ概念ではないことが窺われます。なお、特性不安と社会不安の相関係数は0.622でした。

ただし、今回は社会不安障害ではなく、健常者における社会不安です。

Yang, X., Kendrick, K. M., Wu, Q., Chen, T., Lama, S., Cheng, B., Li, S., Huang, X., & Gong, Q. (2013). Structural and Functional Connectivity Changes in the Brain Associated with Shyness but Not with Social Anxiety. PLoS One, 8(5):e63151, doi:10.1371/journal.pone.0063151.

★概要

健康な漢民族の大人61名を対象に脳構造、脳活動をMRI(核磁気共鳴画像法)、fMRI(機能的MRI)を使って計測した研究です。中国(成都)の大学で参加者を募りました。fMRIでは安静時(閉眼)の機能的結合を測定しました。

社会不安(社交不安)はLiebowitz social anxiety scale(LSAS)でシャイネスはCheek and Buss Shyness Scale(CBSS)で質問紙調査し、得点化しました。 State-Trait Anxiety Inventory-Trait version(STAI-T)で特性不安も質問紙調査しました。

結果、年齢、性別、総頭蓋内容量、社会不安(LSAS得点)、特性不安(STAI-T得点)を統制すると、シャイであればあるほど、右上側頭回と左小脳後葉の灰白質密度が高くなりました(社会不安を統制しない場合は海馬傍回や右島皮質もシャイネスと相関)。

同じく、年齢、性別、総頭蓋内容量、社会不安(LSAS得点)、特性不安(STAI-T得点)を統制すると、シャイ度が低ければ低いほど、左上側頭領域、両側中側頭領域の白質が密でした。

*灰白色や白質の密度が高いということは神経細胞(ニューロン)が多いということを示唆しています。

○機能的結合(年齢、性別、社会不安、特性不安を統制した結果)

シャイであればあるほど、1.左小脳後葉と右喫前部2.右上側頭回と右上前頭回3.左偏桃体と左中前頭回/内側前頭回4.右扁桃体と左右の中前頭回/左下頭頂葉/左内側前頭回の機能的結合が強い結果となりました。

さらに、シャイ度が低ければ低いほど右扁桃体と左下頭頂葉/右上側頭回の機能的結合が強くなりました。

一方、年齢、性別、シャイネスなどを統制した統計的分析により、社会不安(LSAS得点)や特性不安(STAI-T得点)と相関を示した脳構造、機能的結合はありませんでした(ただし、LSAS得点やSTAI-T得点を統制しなかった場合、結果が異なるため、全く関係しないというわけではない)。

★コメント

これまでの研究ではシャイネスと社会不安はともに社会的刺激に対する辺縁系や前頭葉の活動亢進と関連しているとされてきました。しかし、機能的結合をみてみるとその差が認められるわけです。

上側頭回は視線や表情など社会的情報の処理に重要な部位です。

ここでも、小脳が登場します。やはり小脳は運動調整だけでなく、情動や認知にも重要なんでしょうね。

大人(平均年齢21.9±1.94歳)の結果ですから、子どもでも同じことがいえるかどうかは分かりません。また、中国人(漢民族)での結果なので、日本人や欧米人にも当てはまるかは分かりません。

場面緘黙症がシャイネスと社会不安、どちらに近いのか脳構造および安静時機能的結合でもって明らかにできるかもしれません。

NIMHはRDoC(Research Domain Criteria)という研究フレームワークを提唱しており、精神疾患を認知行動面からだけでなく、神経生物学的因子という側面からも捉えなおす必要性を認めています。今回の結果はシャイネスと社会不安を区別する上で役立つでしょう。

○参考URL(2013年6月24日現在)

National Survey Dispels Notion that Social Phobia is the Same as Shyness(米国国立精神衛生研究所のHPより)

http://www.nimh.nih.gov/news/science-news/2011/national-survey-dispels-notion-that-social-phobia-is-the-same-as-shyness.shtml

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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