ミスイングランドでも場面緘黙症から逃れられない | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
HOME   »   緘黙ニュース、緘黙情報  »  ミスイングランドでも場面緘黙症から逃れられない

問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

2012年度ミスハートフォードシャーを制し、2013年度には見事ミスイングランドの座を射止めたKirsty Heslewood(カースティー・ヘィズルウッド/ヘイズルウッド)さん。

2013年2月13日に日本テレビで放送された「ザ!世界仰天ニュース」でも登場(厳密にいうと、子どもは役者で、最後のインタビューが本人)し、それをきっかけに場面緘黙症のことを知ったという方もいらっしゃたはずです。特に、無料オンライン百科事典Wikipediaでのアクセス数の伸びは目覚ましいものがあります。

参考記事⇒Wikipediaでの緘黙ページビュー(アクセス数)の推移

カースティさんはモデルとして有名ですが、実は国際航空貨物輸送を業務とするフェデックス社に6年間勤務していました(現在は離職)。スタンステッド空港で働いていた模様です。

いずれにせよ、ミスイングランド2013で優勝したことからミスワールドへの切符を手にしたことになります。ミスワールド2013は9月にインドネシアの首都ジャカルタで開催されます。 9月4日から始まりましたが、28日にはファイナルが行われます。

というか、ミスワールドのファイナルが近づいてきたこと等の理由から本記事を書いているのですけどね。といっても下書きを開始したのは6月末ですが…。

*FC2ブログでは各記事のURLを見比べてもらえばいつ頃から下書きを書き始めたのか推測することも可能です。ただし、厳密には正確に推定することができるのは下書きを開始した順番(または記事を即刻公開した順番)で、時期ではありません。

長い前置きはここまでにして本題に入りましょう。

○場面緘黙症を克服したはずのミスイングランドでも緘黙を意識することが示唆するもの

そのカースティーさんが2013年度ミスイングランドのファイナルステージおよびインタビューの時にselective mutism(場面緘黙症)とはっきりおっしゃりました。「Former selective mute is elated at becoming Miss England」という題名の動画です。

本動画は英紙デイリー・メールのオンラインHP、Mail Onlineが元ですが、今や凍結されています。一時はYouTubeにも流れたのですが、削除されてしまいました。

ただし、その他の動画ならYouTubeにもあります⇒YouTubeで"Kirsty Heslewood"と検索

特に「Crowning Kirsty Heslewood - Miss England 2013」という動画はデイリー・メールの動画の前半と独自コンテンツを組み合わせたような編成となっています。残念ながら、デイリー・メールと比較して、ファイナルステージ上でのselective mutismという発言が聞き取りにくく、最後のインタビューもありません。

ただし、ミスワールド2013に向けてのインタビュー記事はpageantology.netというミスワールドのフォーラムにあり、はっきりselective mutism(場面緘黙症)と書かれています(参考URK参照)。トップページには各候補者へ投票する場も設けられており、人気度が分かります。

フォーラムとは別にミスワールドのアプリを通しても候補者に投票できます。最も得票した方がPeople's Choice Awardという賞を手に入れられます。カースティーさんを応援したい方はぜひiTunesやGoogle playでアプリをダウンロードし投票しましょう。

またまた、脱線しました。本題はカースティーさんがはっきりselective mutism(場面緘黙症)とミスイングランドのファイナルステージおよびインタビュー時におっしゃったことに関してです。

私はカースティーさんがミスイングランド2013の場ではっきり場面緘黙症とおっしゃったことに驚きました。というのも、幼少期のころから、緘黙症の改善がみられた方でさえ、成人してもなお緘黙症を意識することがあるということを物語っているからです。もちろん、カースティーさんが正式な「治療」を受けていたのかどうかは知りませんから、意識せざるを得ないのは自己流で克服したからなのかもしれません。

*注意:カースティーさんに関する報道は幼少期と成人期に集中しており、その間の思春期ごろに関する情報はほとんどありません。

*追記(2013年11月2日):カースティーさんが場面緘黙症を知ったのは、20歳頃にイギリスの公共放送局BBC(英国放送協会)のドキュメンタリー番組を観たことがきっかけだったということが判明しました。詳細はこちらです⇒英国の緘黙団体、SMIRAの拠点がある地方の新聞にカースティ

または、緘黙関係の団体から緘黙症に言及するように圧力でも受けていたのでしょうか?実際にカースティーさんは、英国のレスターに本部を置く緘黙の保護者団体、SMIRA(Selective Mutism Information & Research Association)とチャリティーで何やら連携します(1年間の時限措置)。以前からSMIRAメンバーの中に知り合いがいた場合は告白を唆された可能性があります。

ミスイングランド自体も'Beauty with a Purpose'(目的あっての美しさ)が標語で、元々、障害などで恵まれない子どもたちのためにチャリティを主宰していましたから、その影響もあるのでしょう。

あるいは、マスメディアに一度場面緘黙症を経験したミスイングランド候補だと報道されたので、よけいに緘黙症のことを意識するようになったのかもしれません。

もちろん、カースティーさん自身にも場面緘黙症の人たちへ勇気や希望を届けたいという想いや認知度向上につなげたいという考えもあるのでしょう。

しかし、元場面緘黙症というのは彼女にとっては1つのアイデンティティにすぎず、実際には緘黙症以外にも複数の自己概念を形成しているはずです。心理学の専門用語ではこれを自己概念の複雑性(self-complexity)と呼んでいます。

自己概念が複雑な人はストレスフルな出来事が起きても身体症状やうつ、自覚ストレスを経験しにくいという研究もあります(池上知子・遠藤由美『グラフィック 社会心理学』サイエンス社 1998年発行の第5章自己認知 6節自己概念の複雑性と適応より)。

グラフィック社会心理学 (Graphic text book)グラフィック社会心理学 (Graphic text book)
(2009/01)
池上 知子、遠藤 由美 他

商品詳細を見る


*amazon.co.jpへのリンクは最新版。私の手元にあるのは1998年発行の古い版です。

○カースティーさんの親(保護者)とカースティーさんの認識にずれ?

個人的に疑問なのは彼女の親(またはそれに相応する人)のことです。御存命なのかどうかは知りませんが、親は子どもの心配や不安感情を低く考える癖があり、子どもの楽観傾向を高く考えてしまうとの研究結果(Lagattuta et al., 2012)もあります。

Lagattuta et al.(2012)によれば、親の不安や楽観傾向と親が評定した子どもの不安/楽観傾向が類似してしまうのだそうです(統計用語でいえば、相関が強いということ)。さらに子どもによる言語報告で示された不安/楽観レベルが親の評定による子どもの不安/楽観レベルと相関しないようです。

要するに親の心、子知らずではなく、子の心、親知らずということが示唆されたわけです。しかも親の不安感情/楽観傾向に引きずられた結果である可能性があります。

*注意:Lagattuta et al.(2012)の研究は英語圏の健康な家庭が対象。

関連記事⇒場面緘黙児の親は子どもの気持ちがどの程度分かるか?

なお、カースティーさんのような緘黙克服物語はその副作用にも目を向けなければなりません。詳しくは以下の記事をご覧ください。

緘黙克服物語は有害にもなりうる諸刃の剣!?

リンク先では、緘黙克服物語に接することがかえって緘黙児・者が自らの状態を責め、恥辱に責め苛まれるリスクを高める可能性をほのめかしています。

○引用文献(本来ならば許されないことですが、要約だけ読みました)

Lagattuta, K. H., Sayfan, L., & Bamford, C. (2012). Do you know how I feel? Parents underestimate worry and overestimate optimism compared to child self-report. Journal of experimental child psychology, 113(2), 211-232.

○参考URL(2013年9月24日現在)

Pageantology's interview with Ms. Kirsty Heslewood, Miss World England 2013.(ミスワールドのフォーラムより)

http://www.pageantology.net/t972-an-interview-with-kirsty-heslewood-miss-world-england-2013

Parents underestimate their children's worry levels and overestimate their optimism(Research Digestより)

http://www.bps-research-digest.blogspot.co.uk/2012/09/parents-underestimate-their-childrens.html#.UGQRke3cKM0.twitter

スポンサードリンク

Comment
160
はじめまして。^^

子の心、親知らずということが示唆されたわけです・・・・
という部分、ほんとそのままだと思います。

元場面緘黙児(現在、後遺症あり)の私は、幸か不幸か、小学校~高校まで全く不登校にはならず皆勤賞をとるほどでした。
親としては、非常に大人しく人見知りな子供である以外は特に問題もなかったのでそれほど心配はしていなかったのでしょう。

返って、不登校になったりする子供のほうが、親も違った対応の仕方をするのだろうと思います。その意味では、素直にSOSサインを発することができる子供はずっと健全であるように思います。

一見大丈夫そうに見えても、本当のところは、本人にしかわかりません。場面緘黙の症状も千差万別、元々の気質というかそういった下地のようなものが、後遺症の有無にも影響を及ぼすのでしょうかね。

カースティーさんも、実際のところは本人にしかわからない重いものを抱えているのかも知れませんね。。

161
Re: タイトルなし
こちらこそ、はじめまして。コメントありがとうございます。^^

親が子どもの不安をどの程度理解しているかについてはまた改めて記事を書くつもりでいます。なぜこのようなことが生じるのか、その原因について考えると面白いかもしれません

ブログでは原因まで踏み込まない予定ですが、子どもがSOSサインを発しない、微妙なサインを発していても親が気付かない、気付いても態度・行動に表さない、親が態度・行動に表さないので子どもは余計親に訴えづらくなる、などなどが考えられますね。

私も不登校にならず、記憶するかぎりでは一度も学校を休んだことがありません。たしかに、子どもが不登校になって初めて問題に気付いたり、対応したりする親もいると思います。


スポンサードリンク

Trackback
Comment form
カテゴリ
ランキング
Twitter
スマートフォンサイト
Amazon書籍
場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

リンクについて
このサイトはリンクフリーです。リンクの取り外しはご自由になさって下さい。個別ページのSNSでの共有やブログ、サイトへのリンクも自由です。
プライバシーポリシー
当ブログはGoogle Adsense広告を掲載しています。Google Adsenseでは広告の適切な配信のためにcookie(クッキー)を使用しています。ユーザーはcookieを無効にすることができます。

なお、Google Adsenseで上げた収益は将来のホームレス生活を見越し、すべて貯金にまわしています。
免責事項
ブログ記事の内容には万全の注意を払っていますが、管理人はその内容の正確さについて責任を負うものではありません。

PAGE TOP