緘黙児の出現率、重篤度別の分布、兄弟構成など | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

前回、ふくしま教育情報データベースにおいて緘黙に関する報告が多数発見できるという記事を書きました。その中で、特に気になる文献が見つかったので詳述します。

以下の文献においては長欠児童・生徒は登校拒否と同義とされています。場面無言症との表現も緘黙症と同義として使われています。

星正・佐藤守男(1974). 長欠児童・生徒 かん黙児童・生徒の治療的指導に関する研究. 福島県教育センター研究紀要, 15, 1-22.

○調査概要

「県内公立小学校・中学校の児童生徒(小学校・中学校とも1/3の無作為抽出)」で小学校188校、中学校91校を抽出。

調査年度は1973年(昭和48年)9月5日~10月5日。

質問紙調査。個人的な徴候、知能テスト、兄弟関係、出生の順位、家庭の養育態度、経済状態、同居する家族関係をアンケート。回答者は各学校の担当者。

「聴覚異常,知能障害,自閉症などの障害がないにもかかわらず,口をきかない児童・生徒」の存在を質問。

○結果

1.かん黙児童・生徒出現率

小学校においては平均して0.149の出現率で、地域ごとのばらつきは0.091(南会地域)~0.188(県南地域)。

中学校においては平均で0.095、地域ごとのばらつきは0.000(会津)~0.217(相双・いわき)。

小中合算で小規模校の出現率が0.2384と中規模校の出現率(0.1333)や大規模校の出現率(0.0978)より多い(統計的有意差の有無は報告されていない)。

学校設置地区別も報告されている(詳細は参考URL参照)

男女比は53:47と男児に多い。

○緘黙症の重篤度別の分布! 結果と感想をまぜちゃえ!

本来なら結果と感想、考察を混ぜて書くのは科学的に御法度ですが、分けて書くとあまりに長くなるので、一緒にします。ですから、読者の皆様は調査の結果と私の感想を頭の中で区別してお読み下さい。

私が注目したのはかん黙の状態の項目です。これは、1.「家庭でも学校でも口をまったくきかないので非常に困る」とする全緘黙状態から8.「直接お世話になっている先生とは話をするが,それ以外の先生とは話をしない」までにおける8段階別の緘黙状態の分布を百分率表示する野心的な(?)試みです。現代でもこの種の調査はないと思います(海外ではある)。

一番多いのは4段階目「学校で仲のよい友達とは話をするが,授業中は口をきかなくなる」(小中とも19.4%)です。その次が小中で割れるところで、小学校では、第6段階「順番で当てられたり,話を強いられたりすると,低い声で無表情にかんたんに答える」 が18.4%、中学校では第2段階「家庭では,どうにかこうにか口をきくが,家庭から一歩外に出ると口をきかない」(17.5%)が二番目に多くなっています。

第1段階の全緘黙状態でも小学生(1.3%)よりも、中学生(4.9%)のほうが割合が高く、緘黙が長引くと、症状が深刻になるか、もしくは深刻な児童が取り残されていく状態がうかがわれます。

ただし、筆者によれば、全緘黙状態の生徒について、「小学校4名,中学校5名は,明らかに①器質的障害②機能的障害によるかん黙児」と指摘しています。しかし、根拠は示していません。

その他、かん黙の状態の重積度、緘黙児の成績、知能について表を添付していますが、明確な説明がありません(明快な説明がある科学論文の良さを痛感!)。

かん黙児童・生徒の同胞数(兄弟姉妹)に関しては2人、3人が多いようですが、この地域の基本的な兄弟姉妹数に関するデータがないと多寡を論じることはできません。長女/長男、次女/次男も三女/三男以降より多いですが、兄弟姉妹が2、3人であることが多いことを踏まえると、当然の結果といえそうです。

経済状態は「中程度の家庭が多く,中の下および下のものがそれに続いている」とありますが、これだけで経済状態が悪い家庭に緘黙児が生じやすいと考えるのは早計です。一般家庭との比較をしないことには何とも言えません。

両親のかん黙児に対する養育態度では両親共無視型、両親共過保護型,両親共溺愛型、両親不一致拒否・無視型が多いそうです。これまた一般家庭との比較なし。

他にかん黙児の父母の有無なんていうのも調べています。効果のある指導法だけでなく、効果の少ない指導に関する調査結果もあります。

○あらためて、感想

回答者が各学校の担当者だけというのが欠点です。親や本人、診断を下した人、治療者にもアンケート調査すべきだったと思います。ただ、あまり大規模にすると、時間、労力、資金の面で頓挫する可能性が高まるので、難しいところです。

聴覚障害、知能障害、自閉症などと緘黙症の区別を学校担当者ができないケースはどうしたのか疑問に感じました。学校担当者の判断がどれだけ正確なものかどうか疑念が生じます。

男女比は53:47で男児に多かったですが、これは女児のほうが多いとする近年の見方と逆行するものです。

ただ、もしかしたら、緘黙である/なしにかかわらず、男児のほうが多いという地域的特殊性を有しているのかもしれません。あるいは学校の先生には男児に多いとされる自閉症スペクトラム障害(ASD)との区別が難しく、ASDが混在した結果、男児が多くなった可能性もあるでしょう。

○良い点

多くの欠点があるとはいえ、21世紀に入ってもこのような詳細な研究/調査はあまり例を見ません。それを1970年のうちにやってのけた点は特筆すべきかもしれません。

最後にもうひとつ、「Ⅲかん黙児童・生徒のとりあつかいについて」という小見出しで「学校かん黙症で問題になるのは,ことばが少なく学習に障害が生ずることよりも,急速に社会性が養われる学齢期にかん黙が続き,社会性が身につかないことであろう。さらには,過度の緊張感が本人の特性として固着し,人間不信につながり,ますますかたくなな性格を増長させていくことの恐れであろう」と現代の「緘黙界」にも通じる指摘を1974年の時点ですでに行っていることを指摘しておきます。

福島県教育センター研究紀要だけでなく、教育福島や福島県教育センター所報(ふくしま)に掲載された緘黙に関する報告記事がオンライン上で手に入ります。詳細は以下のリンク先をご覧ください。

福島県教育センターが頻繁に緘黙を報告していた

参考URL(2013年6月26日現在)

星正・佐藤守男(1974). 長欠児童・生徒 かん黙児童・生徒の治療的指導に関する研究. 福島県教育センター研究紀要, 15, 1-22.

http://is2.sss.fukushima-u.ac.jp/fks-db/txt/60000.kiyou/kiyou_015/index.html

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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