場面緘黙の経験者への質問紙、インタビュー調査(日本) | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
HOME   »   緘黙症に関する論文、文献、学会発表  »  場面緘黙の経験者への質問紙、インタビュー調査(日本)

問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

2012年に7月14~15日の2日間を通して北翔大学で行われた日本コミュニティ心理学会第15回大会において、場面緘黙に関するポスター発表がされました。その内容は「場面緘黙の当事者団体に所属する」経験者への質問紙、インタビュー調査で、その概要が株式会社コスモプリントのサイトで閲覧できます。電子ブック形式です。

なお、コスモプリント社は神奈川県相模原にある印刷会社で、学会印刷管理サービスも提供しています。北翔大学は北海道江別市にある私立大学です。

以下、内容の紹介とそれに関するコメントを書きます。

広瀬慎一 (2012). 社会的認知度の低い行動問題についての現状と展望 -場面緘黙の当事者団体を対象とした質問紙調査に基づいてー 日本コミュニティ心理学会第15回大会プログラム論文集, 56-57.

★研究概要

「場面緘黙の当事者団体に所属する場面緘黙経験者63名のうち、協力に同意が得られ、質問紙を回収することができた31名を分析」した。

男性5名、女性26名、平均年齢31.00±7.80。インタビュー調査はこの内、14名が対象。

年齢や性別などに関するフェイスシートや場面緘黙質問票(SMQ:Selective Mutism Questionnaire)日本語版、自由記述形式やインタビュー形式の質問を実施。回復・克服の程度も調査。インタビューとはいっても、実際には電話や電子メール、windows live messenger(現在はSkypeへ移行)で、対面形式ではありません。

○結果

「場面緘黙が始まった時期は平均5.1歳、場面緘黙を認識した時期は平均21.9歳で」した。

問題意識を持っていない家族が48.4%、20.9%の教師が問題視していませんでした。

場面緘黙を認識した媒体としてはインターネットが58.1%、本が29.0%、病院が12.9%でした。

場面緘黙を知ったことによって、「自分と同じ人がいることが分かり、安心した」が67.7%、「悲しみと同時に放置されていた怒りを感じた」が32.3%、「自分の状態に名前がついていることに驚いた」が29.0%、「自分の状態を理解し、納得した」が16.1%でした。さらに、自分が場面緘黙である(だった)ことを知って回復に向かうことも示されたそうです。

必要だと思う支援は「専門機関の設立」が35.5%、「症状の理解及び社会的認知の向上」が29.0%、「就労支援」が16.1%でした。

★コメント(例によって批判ばかり)

場面緘黙質問票(SMQ)日本語版は信頼性、妥当性を検討した研究がないので、このままではきちんとしたpeer review(査読)体制の整っている学術雑誌への投稿は難しいでしょう。英語版で信頼性、妥当性が保証されているからいいのではないかという意見もあるでしょうが、伝統的に心理学の世界では、質問紙の翻訳バージョンでも再度、信頼性、妥当性を確認するという手続きが標準的です。ただし、精神医学の世界でも同じ実践がなされているかどうかまでは分かりませんが、ともかくも正式な論文としてまとめるには難しい感があります。

場面緘黙が始まった時期の回答は何が根拠となっているのか疑問です。根拠には緘黙経験者ご本人だけでなく、親(保護者)の記憶に頼る方もいらっしゃるでしょうから、個人ごとにばらつきがある可能性があります。

場面緘黙を認識した時期は平均21.9歳とありますが、私の場合は21~22歳の間です。参考記事⇒緘黙症に気づいたきっかけ

問題意識がない家族が約半数を占めますが、これはあくまでも当事者が感じた印象で、実際には問題視していたけれども、具体的な言動には表れなかった、または表れても緘黙人が気付かなかった可能性があります。母親や父親、その他保護者の方への質問紙・インタビュー調査をするのも一考に値します。

緘黙の問題視に関しては、教師の場合も同様です。もっとも何を根拠に問題視していると判断するのかが当事者ごとに違えば、数字の意味を解釈することは難しくなります。

インターネットをきっかけに場面緘黙を知った人が半数以上で、かくいう私もネット具体的に言うと、Yahoo!知恵袋で知りました。ただし、当事者団体に所属している方々が対象の調査ですから、ネット以外の媒体を通じて知った方が少なくなったのかもしれません(著者も言及)。

初めて場面緘黙を知って抱いた感想ですが、これはあくまでも過去の回想です。初めて認識した日から時間が経てばたつほど、記憶の歪みが生じやすくなります。また、場面緘黙を知ってから経過した時間によって緘黙に対する見方、考え方が変容する可能性もあり、それを追跡調査するのも面白そうです。もっとも私なら、そんな余裕があるなら緘黙児を追跡調査しろと言いたくなりますが。

批判ばかりで不愉快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、批判をしなければ真相には辿り着けないし、より良い体制づくりも難しいので、批判的精神はいついかなる時でも発揮するよう心がけています。それに自らの考察を付加しなければ、著作権法に抵触する恐れがでます。

○ポスター発表者、著者について

場面緘黙に関するポスター発表をし、本稿を執筆したのは広瀬慎一助手(北翔大学大学院臨床心理センター)です。2011年に開催された日本行動療法学会大会においても、西山薫教授(北翔大学人間福祉学部)とともに学術発表をされたことのある方です。

広瀬慎一助手は「修士論文として場面かんもくに関する当事者団体との関わった(ママ)」方です。2011年4月19日(火)に北翔大学で開催された臨床心理学研究会「当事者研究の視点からホームレスの自立を考える」(企画発表:北翔大学・佐藤至英教授)においても場面緘黙に関する「修士学生レポート」を発表しています。

北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)運営の北海道地域イノベーション創出協働体サイトには、広瀬慎助手(人間福祉学部・臨床福祉学科)が『場面緘黙児・者に対する支援方法に関する研究』という題目で技術開発支援者検索システムに登録されています。注目すべきは場面緘黙児だけでなく、「場面緘黙者」までも視野に入れているということです。

なお、北海道地域イノベーション創出協働体は、「北海道内の大学、公設試験研究機関、事業化支援機関などが広域的連携組織(中略)を形成して、各研究機関が保有する人材、試験研究機器等の研究開発資源の相互活用により、」北海道の振興を目指す組織です。

○参考文献(中身は読んでいませんが、触れているので一応)

広瀬慎一・西山薫(2011). 場面緘黙の維持要因および回復プロセスの検討―場面緘黙経験者の言語報告に基づいて―. 日本行動療法学会大会発表論文集, 37, 298-299.

参考URL(2013年7月30日現在)

広瀬慎一 (2012). 社会的認知度の低い行動問題についての現状と展望 -場面緘黙の当事者団体を対象とした質問紙調査に基づいてー. 日本コミュニティ心理学会第15回大会プログラム論文集, 56-57.

http://www.cosmoprint.co.jp/digitalbook/15thprogrum/_SWF_Window.html?pagecode=60

広瀬慎一 場面緘黙児・者に対する支援方法に関する研究(北海道地域イノベーション創出協働体形成事業HPより)

http://db.noastec-nic.org/supporters/index/ALL/*/20/page:238/sort:furi/direction:asc

臨床心理学研究会の4月初回が開催されました-臨床心理センターニュース-テーマ:「当事者研究の視点からホームレスの自立を考える」(北翔大学 北翔大学短期大学部 北翔大学大学院HPより)

http://www.hokusho-u.ac.jp/sisetu/rinsyo_f/news/2011051701

スポンサードリンク

Comment

スポンサードリンク

Trackback
Comment form
カテゴリ
ランキング
Twitter
スマートフォンサイト
Amazon書籍
場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

リンクについて
このサイトはリンクフリーです。リンクの取り外しはご自由になさって下さい。個別ページのSNSでの共有やブログ、サイトへのリンクも自由です。
プライバシーポリシー
当ブログはGoogle Adsense広告を掲載しています。Google Adsenseでは広告の適切な配信のためにcookie(クッキー)を使用しています。ユーザーはcookieを無効にすることができます。

なお、Google Adsenseで上げた収益は将来のホームレス生活を見越し、すべて貯金にまわしています。
免責事項
ブログ記事の内容には万全の注意を払っていますが、管理人はその内容の正確さについて責任を負うものではありません。

PAGE TOP