69歳で場面緘黙症?の女性-米国精神医学会での事例発表- | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

米国精神医学会(APA:American Psychiatric Association)の第166回年次総会が2013年5月18日から22日にわたって開催され、DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)の第5版、DSM-5が発行されました。 同学会では、DSM-5の正式発行だけでなく、ポスターセッションも行われたのですが、その中で個人的に気になる事例が報告されていました。

それは場面緘黙症の事例発表だったのですが、当の場面緘黙人はなんと69歳の女性なのです!

Iluonakhamhe, J., Madaan, V. (2013, May). Selective Mutism in Adults: Case. Report and Review of Literature. Paper presented at the annual meeting of the American Psychiatric Association, San Francisco, CA.

彼女は夫にだけ頷いたり、短くささやいたりして返事ができました。母親とsister(姉?妹?)にも場面緘黙症の経験があったそうです。akinetic(無動/緘動?)という記述もあります。

彼女は大うつ病性障害と全般性不安障害の病歴があり、てんかんの偽発作を起こしました。神経学的疾病におかされている形跡はありませんでした。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬のロラゼパム(アチバン)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチン(サインバルタ)の投薬を試みた結果なのかは分かりませんが、症状が改善されたようです。

非定型抗精神病薬のオランザピン(ジプレキサ)を投与したという叙述もありますが、これは彼女が疑り深かったためで、場面緘黙症のためではありません。

発表者は、一般的に場面緘黙症は思考障害か情動障害の一次症状、もしくは転換性障害かせん妄の二次的症状として出現することがあることを指摘しています。そして彼女の場合は第一次的な情動障害に加えて転換性障害として、場面緘黙症を患ったと考察しています。ここでいう第一次的な情動障害とは大うつ病性障害や全般性不安障害のことだろうと思うのですが、はっきり書かれていないためよく分かりません。

夫との交流に転換性障害を示唆する側面があったそうです。

結論から言うと、なんだか本当に場面緘黙症(selective mutism)なのか?と思ってしまいます。DSM-5は場面緘黙症を不安障害としてカテゴライズしましたが、本事例はそういう意味での場面緘黙症とは違うような…。何だかよく分かりません。

○過去にあった研究発表(米国精神医学会)

実は2012年度に発行された第165回米国精神医学会年次総会の研究概要ブック(New Research Abstract Book)にも場面緘黙症の事例研究がありました。この報告では16歳の少女が登場し、69歳の女性よりも場面緘黙症だという確信が得られます。

Kulkarni, G., Aggarwal, A., & Jahan, S. (2012, May). “My child won't speak”: Treating Selective Mutism in Children and Adolescents with Escitalopram, a Case Study. New Research Abstract Book. 165th Annual meeting of the American Psychiatric Association, Philadelphia, PA.

この研究は隣近所で親しくしていた友人が引っ越したのをきっかけに場面緘黙症になった白人女性(16)の事例です。12歳ごろまでは話せたのに、友人の引っ越しで学校の先生にまで話せなくなってしまいました(家族とは話せます)。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)のエスシタロプラム(レクサプロ)を投薬しています。選択的アドレナリンα2受容体作動薬であるクロニジン(カタプレス)の服用もされましたが、それは睡眠の問題を解決するためです。

薬物療法と心理療法を併用すること1年、場面緘黙の症状が改善し始めたとのことです。

12歳ごろになるまでは普通で、友人の引越しを機に場面緘黙症になったということが肝ですね。「普通とはなんぞや?」というのはこのさい置いておいて、入学や転校だけが発症のきっかけになるとは限らないことを示唆しています。

抽象的にいえば、本人自身はあらゆることが新しい環境に適応することを要求されてもいないのに、(心理的に重要な)外部環境の一部が変わっただけで場面緘黙症になった事例と考えることができます。

米国精神医学会のサイトで確認できる最古の報告は場面緘黙症(selective mutism)の旧表記法"elective mutism"を含めて1995年年次総会アブストラクトにあるものです。ただし、オンライン上にないだけで実際にはそれ以前から研究発表が行われていた可能性があります。

Young, D., Wright, H. H., leonhardt, T., Cuccaro, M., & Noll, L. J. (1995, May). Selective Mutism in Preschool Children: Anxiety As a Primary Associated Feature. Research Program and Abstracts. 148th Annual meeting of the American Psychiatric Association, Miami, FL.

○参考URL(2013年8月18日現在)

Iluonakhamhe, J., Madaan, V. (2013, May). Selective Mutism in Adults: Case. Report and Review of Literature. Paper presented at the annual meeting of the American Psychiatric Association, San Francisco, CA.

http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&frm=1&source=web&cd=2&cad=rja&ved=0CDAQFjAB&url=http%3A%2F%2Fwww.psych.org%2FFile%2520Library%2FLearn%2FArchives%2Fam_posters_2013.pdf&ei=os8OUo3_CM3WkgXY-YDYDg&usg=AFQjCNFjYz6zaytTJwaN8Yn_KZnO_p433A&sig2=EGtfmLg5-Eqvx0za4rO4Dw&bvm=bv.50768961,d.dGI

Kulkarni, G., Aggarwal, A., & Jahan, S. (2012, May). “My child won't speak”: Treating Selective Mutism in Children and Adolescents with Escitalopram, a Case Study. New Research Abstract Book. 165th Annual meeting of the American Psychiatric Association, Philadelphia, PA.

http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&frm=1&source=web&cd=3&cad=rja&ved=0CDIQFjAC&url=http%3A%2F%2Fwww.psych.org%2FFile%2520Library%2FLearn%2FArchives%2Fam_newresearch_2012.pdf&ei=Cg0QUuXKPIWSiAey14GACg&usg=AFQjCNEwouzauqWQjUtNEgPW48raQ23bUw&sig2=jz_dnlbXbLnTLZdbBb13mg&bvm=bv.50768961,d.dGI

Young, D., Wright, H. H., leonhardt, T., Cuccaro, M., & Noll, L. J. (1995, May). Selective Mutism in Preschool Children: Anxiety As a Primary Associated Feature. Research Program and Abstracts. 148th Annual meeting of the American Psychiatric Association, Miami, FL.

http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&frm=1&source=web&cd=6&ved=0CDsQFjAF&url=http%3A%2F%2Fwww.psych.org%2FFile%2520Library%2FLearn%2FArchives%2Fam_newresearch_1995.pdf&ei=aREQUurvGsediAf33oHoDg&usg=AFQjCNHoN7Kd1jYw1SVsUCU4W3LKUFFo4g&sig2=Bgn03wQLQtfFtn6LOP7Vrg

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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