子どもの扁桃体は恐れの表情よりも無表情に興奮する | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

扁桃体はネガティブな表情に対する反応性が高いといわれます。社交不安障害の患者でも恐怖の表情(Labuschagne et all., 2010)怒りの線画(Evans et al., 2008)に対して扁桃体が活性化します。

しかし、それらはあくまでも大人の話です。子どもではどうなっているのでしょうか?扁桃体が原因だという科学的根拠が曖昧な説が溢れる場面緘黙症の場合、低年齢のうちに発症することが多いので、この問題は非常に重要です。

そこで今回は恐怖の表情に対する扁桃体の反応を大人と子どもで比較した研究です。

Thomas, K. M., Drevets, W. C., Whalen, P. J., Eccard, C. H., Dahl, R. E., Ryan, N. D., & Casey, B. J. (2001). Amygdala response to facial expressions in children and adults. Biological Psychiatry, 49(4), 309-316.

★概要

平均年齢が24歳(標準偏差6.6歳)の男性6人、平均年齢が11歳(標準偏差2.4歳)の子ども12人が参加しました。12人の子どもの内、6人が男、6人が女でした。すべて健康な方たちです。

顔は恐れの表情と無表情を用いました。顔刺激を見ている間、何ら反応を求めませんでした。

顔刺激の呈示は200ミリ秒、刺激間間隔は800ミリ秒でした。ただし、ブロックデザイン(block design)による実験なので、同じ表情が繰り返し呈示され、その継続時間は42秒でした(その間に注視点が明滅する刺激間間隔含む)。

脳活動の計測はfMRI(機能的磁気共鳴画像法)で行いました。

結果、大人(男性)と子ども(男性)に限った分析では、恐れの表情/無表情に対して左扁桃体と前脳基底部にある無名質が賦活し、恐怖の表情に関しては反復呈示で活動が減弱していきました(注視点が統制条件)。少年、少女に限った分析でも、無名質を除き同じ結果でした。

大人(男性)では無表情よりも恐れの表情に対して左扁桃体が興奮したのに対し、子ども(男性)は恐れの表情よりも無表情で扁桃体が活性化しました。

恐れの表情が繰り返し呈示されると、男児では扁桃体の興奮が弱まっていったのに対し、女児では扁桃体活動の低下が生じませんでした。

★コメント

本論文では、子どもの無表情/恐怖表情の弁別能力は大人よりも低いという行動学的な先行研究の知見と合わせて考察されています。

男児では恐怖の表情の反復呈示で扁桃体の活動が減弱していきましたが、女児ではそうではありませんでした。社交不安障害のリスク要因である抑制気質が高い大人は、以前に見た顔でも扁桃体が興奮したままだという研究(Blackford et al., 2011)もあり、扁桃体の「慣れ」は重要因子です。

被験者数が少ないので、他の論文も読んでみる必要があります。

大人は男性だけなので、成人女性と少女の比較ができていません。

実験に用いた顔には髪がなく、頭頂部も見えないので現実的な刺激ではありません。

顔写真に用いた顔の年齢について言及がありませんでしたが、もしかしたら子どもの顔写真を使えば違う結果が得られたかもしれません。

被験者に特段の課題を与えなかったことから、注意の向け方が大人と子ども、あるいは被験者ごとに違っていた可能性があり、それが脳活動(BOLD信号)に影響した可能性があります。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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