行動抑制を測る質問紙-場面緘黙症の研究に使ってほしい! | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

行動抑制の検査は約9か月齢以降の乳幼児や小学生を、検査者が観察して判断するというものが多いです。しかし、それでは労力や時間がかかるので、研究が進展していない場面緘黙症の場合、待ち遠しいことこの上ないでしょう。

このジレンマを解決するのに質問紙調査という方法があります。

そこで、抑制気質を計測する際に利用できる質問票を集めてみました。おそらく、これほどまでに抑制気質質問票を寄せ集めたサイトはほとんどないと思います。

特に場面緘黙症と抑制気質の関わりを推す人にとっては避けて通れない質問紙・尺度群です。臨床家が使える尺度にも言及しているので、臨床現場で使いたい方にもおすすめです。

なお、行動抑制(抑制気質)の基本的事項についてはこちらをご覧ください⇒行動抑制の概念 by Jerome Kagan

○古典的な質問紙は自己報告(成人向け)

古典的な行動抑制の質問紙は自分で記入する形式です。乳幼児が自分で記入することはできませんから、大人向けとなります。

Reznick et al.(1992)は行動抑制の回顧的自己報告(retrospective self-report of behavioral inhibition:RSRI)と行動抑制の現在に関する自己報告(concurrent self-report of behavioral inhibition:CSRI)を用いています。これが最初なのかどうかは分かりませんが、行動抑制の尺度に言及する際、よく引用される文献です。

名前の通り、RSRIは過去を振り返って自分が抑制気質だったかどうか回想を求める質問紙で、CSRIは現在の抑制気質を尋ねる質問紙です。

RSRIは30項目、CSRIは31項目からなります。回答は全く○○でないから非常に○○であるまでの5件法です(リッカート尺度)。

使用例:Blackford et al.(2009)Blackford et al.(2011)

回顧的質問紙のRSRIに関してはドイツ語版も開発されています(Rohrbacher et al., 2008)。

次の項目で述べる行動抑制尺度では大学生を対象としたものも開発されています(Muris et al., 2007)。

大学生の行動抑制尺度で内的整合性(internal consistency)、4週間の検査―再検査信頼性(test-retest reliability, test-retest stability)、不安症状との相関(収束的妥当性:convergent validity)、他症状との無相関(弁別的妥当性:discriminant validity)が確認されています(Muris et al., 2007)。

内的整合性とは、テストの質問項目が同じ内容を測定しているかどうかの指標です。内的一貫性とも呼ばれます。

検査―再検査信頼性とは、ある一定の期間をおいて検査しても同じ値が出るかどうかの指標です。

収束的妥当性とは他の関連する尺度との相関の高さを、弁別的妥当性とは関連のない他の尺度との相関性がどの程度低いかを示す指標です。

○両親と教師が対象の質問紙&9歳以上の子どもの自己報告。

先に述べた行動抑制尺度(Behavioral Inhibition Scale:BIS)は本来、両親や教師が回答者となる尺度です。BISは大人ではなく、子どもの行動抑制レベルを評価する質問票です。

誰が開発したのか分かりませんが、マーストリヒト大学のVan Brakel et al.(2004)はBISと行動観察の結果や不安症状・引っ込み思案とがよく一致しており、妥当性のある尺度だと報告しています(収束的妥当性)。

Van Brakel et al.(2006)はBISの検査―再検査信頼性が良いと主張しています。つまり2年経ってもBISの結果は変わらないというわけです。Rothbartの気質との相性も良いようです(妥当性)。

行動抑制質問紙(Behavioral Inhibition Questionnaire:BIQ)というのもあります(Broeren et al., 2010)。親が回答者です。オーストラリアのブリスベンにあるクイーンズランド大学の研究者が2003年に開発しました(Bishop et al., 2003)。

オランダのロッテルダムにあるエラスムス大学のBroeren et al.(2010)はオランダ人用のBIQを開発しました。4~15歳の子どもで内的整合性の高さが確認されました。

BIQ得点が不安症状(特に社会不安)と相関しました(収束的妥当性)。

BIQによれば行動抑制は6因子から形成され、社会的行動抑制と非社会的行動抑制に分けられます。

実はBIQには自己報告(self-report)バージョンもあります(Broeren et al., 2010)。ただし、あまりにも小さいお子さんには難しいので9歳以上限定です。内的整合性だけでなく、親子の一致度(評定者間信頼性:inter-rater reliability)も確認されました。

同じエラスムス大学のVreeke et al.(2012)は行動抑制質問紙短縮版(Behavioral Inhibition Questionnaire-Short Form:BIQ-SF)を開発し。質問を14項目に限定しました。やはり親が回答者です。対象児は就学前期の2.5~6歳です。

BIQ-SFは内的整合性だけでなく2年間、スコアが安定していることも確認されています(検査―再検査信頼性)。教師の回答と親の回答もある程度は一致するようです(評定者間信頼性)。ただ、行動観察との一致度は中程度でした(収束的妥当性)。BIQ-SF得点と不安や内在化症状との相関もありました(収束的妥当性)。

○3~6歳専用の抑制気質尺度(回答者は両親と教師)

行動抑制尺度3-6歳版(Behavioral Inhibition Scale 3-6:BIS 3-6)は3~6歳専用の質問票です(Ballespí et al., 2012a; Ballespí et al., 2012b)。バルセロナ自治大学のBallespí et al.(2012a)やBallespí et al.(2012b)では両親と教師が回答者となりました。

Ballespí et al.(2012a)での内的整合性は、クロンバックのα係数が0.95なので妥当性の高さが窺われます(要するに各質問項目がちゃんと同じ概念を計測しているということ)。内在化問題との相関はありました(収束的妥当性)が、外在化問題との相関はありませんでした(弁別的妥当性)。

Ballespí et al.(2012b)ではBIS 3-6得点と行動観察の結果は軽~中程度の一致しかありませんでしたが、質問紙は「特性としての行動抑制」を、行動観察は「状態としての行動抑制」を計測していると考察しています。

○両親に対する回顧的質問紙

回顧的乳幼児行動抑制尺度(Retrospective Infant Behavioral Inhibition Scale:RIBI)という質問票が2013年に開発されました(Gensthaler et al., 2013)。回顧的というのは昔を振り返ってという意味です。

ドイツにあるヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学フランクフルト・アム・マインという長ったらしい名称の大学の研究者が開発者です。

尺度の特性上、この質問紙では両親(保護者)に子どもが抑制気質だったかを記憶に基づいて判断させることが可能…なはずです。

両親の記憶に頼って抑制気質を評価。これは場面緘黙症の大人の研究に使えそうですね。

○臨床家が行動抑制を評価する質問紙

メンタルヘルスのプロが抑制気質を評価する質問紙が開発されました(Ballespí et al., 2013)。これまた2013年の開発です。 行動抑制観察システム(Behavioral Inhibition Observation System:BIOS)という名称がつけられています。

スペインのバルセロナ自治大学の研究者が開発しました。

行動抑制観察システムは質問項目が8項目で、回答時間も3分で済みます。こちらは研究だけでなく、実際の臨床現場でも役立つでしょう。

○引用文献(要約だけ読みました)

Ballespí, S., Jané, M. C., & Riba, M. D. (2012a). Parent and Teacher Ratings of Temperamental Disposition to Social Anxiety: The BIS 3–6. Journal of Personality Assessment, 94(2), 164-174.

Ballespí, S., Jané, M. C., & Riba, M. D. (2012b). The Behavioural Inhibition Scale for Children Aged 3 to 6 (BIS 3-6): Validity Based on Its Relation with Observational Measures. Journal of Psychopathology and Behavioral Assessment, 34(4), 487-496.

Ballespí, S., Jané, M. C., & Riba, M. D. (2013). Reliability and Validity of a Brief Clinician-Report Scale for Screening Behavioral Inhibition. Journal of Psychopathology and Behavioral Assessment, 35(3), 321-334.

Bishop, G., Spence, S. H., & McDonald, C. (2003). Can Parents and Teachers Provide a Reliable and Valid Report of Behavioral Inhibition? Child Development, 74(6), 1899-1917.

Broeren, S., & Muris, P. (2010). A psychometric evaluation of the behavioral inhibition questionnaire in a non-clinical sample of Dutch children and adolescents. Child Psychiatry & Human Development, 41(2), 214-229.

Gensthaler, A., Möhler, E., Resch, F., Paulus, F., Schwenck, C., Freitag, C. M., & Goth, K. (2013). Retrospective Assessment of Behavioral Inhibition in Infants and Toddlers: Development of a Parent Report Questionnaire. Child Psychiatry & Human Development, 44(1), 152-165.

Muris, P., Rassin, E., Franken, I., & Leemreis, W. (2007). Psychometric Properties of the Behavioral Inhibition Scale in Young Adults. Journal of Individual Differences, 28(4), 219-226.

Reznick, J. S., Hegeman, I. M., Kaufman, E. R., Woods, S. W., & Jacobs, M. (1992). Retrospective and concurrent self-report of behavioral inhibition and their relation to adult mental health. Development & Psychopathology, 4(2), 301-321.

Rohrbacher, H., Hoyer, J., Beesdo, K., Höfler, M., Bittner, A., Lieb, R., & Wittchen, H. U. (2008). Psychometric properties of the Retrospective Self Report of Inhibition (RSRI) in a representative German sample. International Journal of Methods in Psychiatric Research, 17(2), 80-88.

Van Brakel, A. M. L., & Muris, P.(2006). A Brief Scale for Measuring “Behavioral Inhibition to the Unfamiliar” in Children. Journal of Psychopathology & Behavioral Assessment, 28(2), 79-84.

Van Brakel, A. M. L., Muris, P., & Bögels, S. M. (2004). Relations between parent-and teacher-reported behavioral inhibition and behavioral observations of this temperamental trait. Journal of Clinical Child & Adolescent Psychology, 33(3), 579-589.

Vreeke, L. J., Muris, P., Mayer, B., Huijding, J., Bos, A. E., van der Veen, M., Raat, H., & Verheij, F. (2012). The assessment of an inhibited, anxiety-prone temperament in a Dutch multi-ethnic population of preschool children. European child & adolescent psychiatry, 21(11), 623-633.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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