子どものほめ方:方法によっては逆効果になるので要注意 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

突然ですが、子どもの褒め方講座です!

といっても、私は別に子持ちではありませんから、心理学的に有効な子育て法を考えます。それは場面緘黙児の保護者のブログなどを拝見していると、褒めて自信を与えようという内容ばかりで、具体的な褒め方に対する考察がなされていないと感じるからです。

また、褒め方によっては逆効果になることも心理学の研究で示されています。その陥穽に陥らないためにも、適切な称賛方法を理解しておきたいものです。

○先行研究

4歳児に身振りで絵描きをさせたスタンフォード大学の実験によると、「君は良い絵描きだね」と褒めると、その後大人から批判された時に描画に興味を無くし、ミスを修正する方法を思いつかなかったそうです(Cimpian et al., 2007)。反対に、「君は良い絵を描いたね」と称賛すると、たとえ批判されても間違いを訂正する子どもが多くなりました。

原典では「君は良い絵を描いたね」は"You did a good job drawing"、「君は良い絵描きだね」は"You are a good drawer"となっています。

音のテンポに身体を同調させるリズムタッピング能力を調べたノーザン・アイオワ大学の研究では、努力の称賛で粘り強さが高まりました(Droe, 2012)。

ペロタス連邦大学とネバダ大学の合同研究によると、お手玉のような座布団(beanbags)を投げる課題でも、生まれつきの能力を強調するよりも努力を強調した方が、成績が良くなります(Drews et al., 2013)。

母親が子どもの学校での成功を努力ではなく、才能を強調して褒めると、6カ月後に挑戦をしなくなります(Pomerantz et al., in press)。それだけでなく、実体理論(entity theory)を信じるようになります。

実体理論とは人の能力や知能はあらかじめ決まっており、変化しないという考えのことです。固定理論、固定的知能観という訳語もあります。

イリノイ大学の研究によると、4~7歳の子どもは、ある属性集団の能力に関する一般化された情報(例:男の子は理系科目が得意)を知ると、特定個人の能力の源は才能であるとの考えを信じるようになります(Cimpian et al., 2012a)。

そして、4~7歳の子どもに「男の子はこのゲームが得意」というように社会的属性が成功の原因であるかのような情報を与えると、課題成績が低下します(Cimpian et al., 2012b)。これは当該児童がその社会的属性を満たしているかどうかに関係なく生じます。この種の情報が実体理論の受け入れにつながると研究チームは考えているようです。

シカゴ大学の研究によれば、子どもが14、26、38ヶ月の時の家での親の称賛が、5年後の子どもの能力や挑戦、モラルに対する心構え(mindset)と関連します(Gunderson et al., 2013)。

具体的にいうと、14、26、38ヶ月の子どもをGood Job!(グッジョブ!)などと言って努力を褒めたら、5年後に子どもが「知能や倫理は努力次第で高められるものなんだ」という考えを持っている傾向にあったのです。

特に、子どもが女の子であった場合、意識的に努力を誉め称えたほうがいいかもしれません。というのも、親は男児では努力を称賛し、女児では才能を褒める傾向にあるということが数々の研究で発見されているからです。

一般的に言って、幼稚園児の努力を誉めると、失敗をしてもモチベーションが維持されたままです(Zentall et al., 2010)。

しかし、努力の称賛と才能の称賛を組み合わせたグランドバレー州立大学の研究(Zentall et al., 2010)によると、ほんの少しでも才能を褒めると、失敗後の根気のよさが弱まります。ただ、少しでも努力を誉めると失敗しても、自己評価が下がることはありません。

ただし、エクセター大学の研究によると、称賛の源が内集団か外集団かによって、外的帰属か内的帰属、どちらの要因によって動機づけられるかが異なるそうです(Rabinovich et al., 2012)。

自尊心が低い子どもは能力を褒められた後、失敗すると恥を強く感じます(Brummelman et al., in press)。そして、大人は自尊心が低い子どもの努力や過程、行動よりもむしろ能力を褒める傾向にあります。

○才能を褒めることが逆効果-そのメカニズムは?

以上のように、才能を誉めることはその後の失敗ですぐあきらめる傾向を強めるようなものです。ただ、そのメカニズムに関しては不明な点が多いのが現状です。数ある研究のうち、メカニズムの解明に挑んだ研究の1つをとりあげてみましょう。

アクロン大学の研究(Zentall et al., 2012)によると、4~7歳児は自分が描いた絵に関して努力よりも能力を褒められると、その後、ミスがある絵を長く、じっと見つめます。そして、絵の誤りを注視する回数が多ければ多いほど、粘り強さや自己評価が低いのです。ただし、これは他の子どもが描いた絵にエラーがあっても生じます。

○努力を誉めるのは本当にいいことか?

これまでの研究ではあくまでも才能の称賛と努力の称賛の比較で、比較の基準が欠落していました。それを補ったのが以下の研究です。

ケント大学の研究(Skipper et al., 2012)では、教育的課題に対するフィードバックが能力の称賛だと、その後の失敗で感情が否定的になり、粘り強さ・パフォーマンスが減少する想像をする傾向にありました。一方、努力などの過程を褒めると、客観的なフィードバックと比較して、その後の失敗の影響に差はありませんでした。

ケント大学の研究は9~11歳の子どもと大学生が対象です。また、実際にフィードバックを与えるのではなく、文を読ませ、想像させる実験です。

つまり、先行研究で努力の称賛が良いとされてきたのは、単に才能の称賛が悪影響を及ぼしたことが一因である可能性があります。

○実際には、才能を誉めることはほとんどない

もっとも、グランドバレー州立大学の学生研究(Ortiz, 2011)によれば、小学生の先生は才能を褒めることは少なく、1%ほどです。ほとんどの場合、努力を称えるか、もしくはただ単に「よし!」と褒める傾向にあるようです。

ただ、文化の影響もあるでしょうから、日本でも同様の研究が望まれます。称賛方法の個人差もあるでしょう。

○子どもの褒め方以外にも重要な因子が存在

ただし、コロラド州立大学の研究(Wang et al., in press)によると、幼児が1歳6カ月の時の母子のポジティブな感情交流が3歳3ヶ月齢での子どもの粘り強さ、能力と関連します。拒否的、軽蔑的な感情交流は子どもの粘り強さ、独立した熟練さの低下と関連します。

つまり、重要なのは褒め方だけではなく、母子(親子)の良い感情的交流というわけです。ただ、称賛方法と感情的交流は直接的に関連しているかもしれませんし、全く別の共通因子を介して間接的につながっている可能性も捨てきれません。

○引用文献(要点だけ読みました)

Brummelman, E., Thomaes, S., Overbeek, G., Orobio de Castro, B., van den Hout, M. A., & Bushman, B. J. (in press). On Feeding Those Hungry for Praise: Person Praise Backfires in Children With Low Self-Esteem. Journal of Experimental Psychology: General, doi:10.1037/a0031917.

Cimpian, A., Arce, H. M. C., Markman, E. M., & Dweck, C. S. (2007). Subtle linguistic cues affect children's motivation. Psychological Science, 18(4), 314-316.

Cimpian, A., & Erickson, L. C. (2012a). The effect of generic statements on children's causal attributions: questions of mechanism. Developmental Psychology, 48(1), 159-170.

Cimpian, A., Mu, Y., & Erickson, L. C. (2012b). Who Is Good at This Game? Linking an Activity to a Social Category Undermines Children’s Achievement. Psychological Science, 23(5), 533-541.

Drews, R., Chiviacowsky, S., & Wulf, G. (2013). Children’s Motor Skill Learning Is Influenced by Their Conceptions of Ability. Journal of Motor Learning & Development, 1(2), 38-44.

Droe, K. L. (2012). Effect of Verbal Praise on Achievement Goal Orientation, Motivation, and Performance Attribution. Journal of Music Teacher Education, 23(1), 63-78.

Gunderson, E. A., Gripshover, S. J., Romero, C., Dweck, C. S., Goldin‐Meadow, S., & Levine, S. C. (2013). Parent Praise to 1‐to 3‐Year‐Olds Predicts Children's Motivational Frameworks 5 Years Later. Child development, 84(5), 1526–1541.

Ortiz, E. G. (2011). The Frequency of Generic and Nongeneric Praise in the Sports and Academic Settings. McNair Scholars Journal, 15(1). 8.

Pomerantz, E. M., & Kempner, S. G. (in press). Mothers' Daily Person and Process Praise: Implications for Children's Theory of Intelligence and Motivation. Developmental Psychology, doi:10.1037/a0031840.

Rabinovich, A., Morton, T. A., Crook, M., & Travers, C. (2012). Let another praise you? The effects of source and attributional content on responses to group-directed praise. British Journal of Social Psychology, 51(4), 753-761.

Skipper, Y., & Douglas, K. (2012). Is no praise good praise? Effects of positive feedback on children's and university students’ responses to subsequent failures. British Journal of Educational Psychology, 82(2), 327-339.

Wang, J., Morgan, G. A., & Biringen, Z. (in press). Mother–Toddler Affect Exchanges and Children's Mastery Behaviours during Preschool Years. Infant & Child Development, DOI:10.1002/icd.1825.

Zentall, S. R., & Morris, B. J. (2010). “Good job, you’re so smart”: The effects of inconsistency of praise type on young children’s motivation. Journal of experimental child psychology, 107(2), 155-163.

Zentall, S. R., & Morris, B. J. (2012). A critical eye: Praise directed toward traits increases children’s eye fixations on errors and decreases motivation. Psychonomic bulletin & review, 19(6), 1073-1077.

○参考URL(2013年11月3日現在)

How to praise children(BPS Research Digestより)

http://bps-research-digest.blogspot.co.uk/2007/05/how-to-praise-children.html

Seven-year-olds' beliefs about ability are associated with the way they were praised as toddlers(BPS Research Digestより)

http://www.bps-research-digest.blogspot.co.uk/2013/09/seven-year-olds-beliefs-about-ability.html

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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