ギャンブル依存症、拒食症、非行等は不安障害と遺伝的基盤が同じ | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

場面緘黙症はDSM-5では不安障害だとされます。そこで、不安障害と遺伝的リスクが同じ精神疾患を調査しました。

なぜ、そんなことが分かるのかというと、行動遺伝学の双生児法による研究で、遺伝相関(genetic correlation)という数字をはじき出すことが可能だからです。遺伝相関とは2つの特性の根底にある遺伝的因子がどの程度同じなのかということです。

参考記事⇒緘黙を行動遺伝学で分析 

なお、不安と不器用さには部分的にせよ同じ遺伝子が関与しています。

参考記事⇒不安障害の児童や青少年、場面緘黙児は運動が苦手

○大うつ病、パニック障害、広場恐怖症、社会恐怖症はリスク遺伝子が部分的に共通

オーストラリアのクイーンズランド医学研究所が行った双生児研究(Mosing et al., 2009)によると、大うつ病、パニック障害、広場恐怖症、社会恐怖症の4疾患には共通の遺伝的基盤があります。特に、パニック障害と広場恐怖症の遺伝相関は0.83と、共通遺伝子の影響が大きいことがうかがえます。

○子どもの分離不安障害と大人のパニック発作もリスク遺伝子が一部共通

バージニア・コモンウェルス大学の双生児研究によると、小児分離不安障害と成人発症型パニック発作はリスク遺伝子を共有しています(Roberson-Nay et al., 2012)。

一方、小児期過剰不安障害の遺伝因子は成人発症パニック発作に影響しません(Roberson-Nay et al., 2012)から、分離不安障害とパニック発作には特異的な関係が存在すると考えられます。

過剰不安障害とは、成人でいうところの全般性不安障害のことです。

この研究では、共有環境が共通しているということはありませんでした。

共有環境とは家族など、双生児で同じ環境のことです。

それに対して、非共有環境とは家庭外の人間関係など双生児間で異なる環境のことです。

○全般性不安障害/パニック障害とギャンブル依存症にも共通するリスク遺伝子が存在

エール大学医学部のChild Study Centerの双生児研究(Giddens et al., 2011)によると、中年男性の全般性不安障害と病的賭博(ギャンブル依存症)には共通するリスク遺伝子があり、相加的遺伝相関係数は0.53です。

相加的遺伝とは「ひとつひとつの遺伝子の影響は小さいけれども,ひとつの遺伝子の影響が累積的に効果を持つような遺伝子の働き」のことです(慶應義塾双生児研究のHPより)。

一方、パニック障害と病的賭博とでは相加的遺伝相関係数が0.34、非共有環境相関係数が0.31でした。

○全般性不安障害と拒食症は遺伝的リスクが部分的に共通している

バージニア・コモンウェルス大学の双生児研究(Dellava et al., 2011)によると、女性の神経性無食欲症(拒食症)と全般性不安障害は部分的に遺伝的リスクが同じで、遺伝相関は0.20です。

ちなみに、非共有環境相関は0.18で、それぞれの双生児に特有の環境が同じリスク因子として若干ながらも働いていることが分かります。

○内在化問題と外在化問題のリスク遺伝子は部分的に共通する

コロラド大学の双生児研究(Cosgrove et al., 2011)によれば、思春期の内在化問題行動(不安や抑うつなど)と外在化問題行動(非行や行為障害、反抗挑戦性障害など)に共通する非共有環境因子、遺伝的因子があります。

ちなみに、内在化問題と外在化問題は合併しやすいことが知られています。

○内在化問題と外在化問題が合併するのはネガティブ感情が一因

フロリダ州立大学の双生児研究(Mikolajewski et al., 2013)では、ネガティブ感情が内在化問題と外在化問題の両方と遺伝的、環境的因子を共有していることが見出されています。

7~13歳の双生児が対象の研究で、親が質問紙の回答者でした。

この研究は、少なくとも子どもでは内在化問題/外在化問題とネガティブ感情が相関するという知見に基づくものです。

○不安/行為問題/多動性と睡眠問題には共通の遺伝的リスクがない。だが…、

キングス・カレッジ・ロンドン(King's College London)の精神医学研究所の双生児研究(Gregory et al., 2004)によれば、3、4、7歳の睡眠問題と不安、行為問題、多動性は弱い相関を示します。しかし、これらのほとんどは共有環境が相関しているためで、遺伝や非共有環境が共通であることが原因ではありません。

ただし、3、4歳での睡眠問題が7歳の不安、行為問題、多動性を予測し、これに遺伝の影響が認められます(環境の影響もあり)。

保護者版子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire:SDQ)を用いた調査です。

○性格(神経質傾向)と不安/うつ、身体症状に共通のリスク遺伝子

オーストラリアのクイーンズランド医学研究所の双生児研究(Hansell et al., 2012)によると、思春期の神経質傾向と不安/うつ症状、身体症状・身体ストレスには共通の遺伝的リスクがあります。ただし、神経質傾向と不安/うつ症状の方が神経質傾向と身体症状・身体ストレスよりも遺伝的共通性が高いという結果になりました。

また、神経質傾向とは独立して、不安/うつ症状と身体症状・身体ストレスに共通の遺伝的リスクがあることも発見されました。

○注意事項

遺伝子と環境の影響度は年齢とともに変化することがあります。ゆえに、これらの知見が他の年齢層にも当てはまるかどうかは不明ですし、民族が違えば遺伝率も異なる可能性があります。

○引用文献(要約だけ読みました)

Cosgrove, V. E., Rhee, S. H., Gelhorn, H. L., Boeldt, D., Corley, R. C., Ehringer, M. A., Young, S. E., & Hewitt, J. K. (2011). Structure and Etiology of Co-occurring Internalizing and Externalizing Disorders in Adolescents. Journal of Abnormal Child Psychology, 39(1), 109-123.

Dellava, J. E., Kendler, K. S., & Neale, M. C. (2011). Generalized anxiety disorder and anorexia nervosa: evidence of shared genetic variation. Depression & Anxiety, 28(8), 728-733.

Giddens, J. L., Xian, H., Scherrer, J. F., Eisen, S. A., & Potenza, M. N. (2011). Shared genetic contributions to anxiety disorders and pathological gambling in a male population. Journal of Affective Disorders, 132(3), 406-412.

Gregory, A. M., Eley, T. C., O'Connor, T. G., & Plomin, R. (2004). Etiologies of Associations Between Childhood Sleep and Behavioral Problems in a Large Twin Sample. Journal of American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 43(6), 744-751.

Hansell, N. K., Wright, M. J., Medland, S. E., Davenport, T. A., Wray, N. R., Martin, N. G., & Hickie, I. B. (2012). Genetic co-morbidity between neuroticism, anxiety/depression and somatic distress in a population sample of adolescent and young adult twins. Psychological Medicine, 42(6), 1249-1260.

Mikolajewski, A. J., Allan, N. P., Hart, S. A., Lonigan, C. J., & Taylor, J. (2013). Negative Affect Shares Genetic and Environmental Influences with Symptoms of Childhood Internalizing and Externalizing Disorders. Journal of Abnormal Child Psychology, 41(3), 411-423.

Mosing, M. A,, Gordon, S. D., Medland, S. E., Statham, D. J., Nelson, E. C., Heath, A. C., Martin, N. G., & Wray, N. R. (2009). Genetic and environmental influences on the co-morbidity between depression, panic disorder, agoraphobia, and social phobia: a twin study. Depression & Anxiety, 26(11), 1004-1011.

Roberson-Nay, R., Eaves, L. J., Hettema, J. M., Kendler, K. S., & Silberg, J. L. (2012). Childhood separation anxiety disorder and adult onset panic attacks share a common genetic diathesis. Depression & Anxiety, 29(4), 320-327.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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