社会恐怖症は上側頭溝の活動が高く、紡錘状回の活動が低い | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

これまでの社会恐怖症(社会不安障害、社交不安障害)に関する研究では、恐怖の表情(Labuschagne et al., 2010)怒りの顔文字のようなもの(Evans et al., 2008)など社会的脅威となる表情で扁桃体などの情動領域の活動を調べてきました。

しかし、顔知覚そのものを神経科学的に検証した研究は比較的少ないです。今回の論文は社会恐怖症患者で顔知覚を担う脳部位の活動も調べた点に特長があります。

Gentili, C., Gobbini, M. I., Ricciardi, E., Vanello, N., Pietrini, P., Haxby, J. V., & Guazzelli, M. (2008). Differential modulation of neural activity throughout the distributed neural system for face perception in patients with Social Phobia and healthy subjects. Brain Research Bulletin, 77(5), 286-292.

★概要

8人の社会恐怖症患者(平均年齢39±7歳)と7人の健康な人(平均年齢30±7歳)が参加しました。

課題はone-back repetition detection taskでした。

課題で使用した刺激は顔でした。顔は怒り、恐怖、嫌悪、幸福、無表情の5種類を用いました。

対照刺激として顔をごちゃまぜにした意味のない写真(scrambled pictures)を用いました。

課題では今見ている表情の主(identity)が1つ前の表情の主と同かどうかを判定させました。ごちゃまぜ顔では1つ前の写真と同じかどうかを判断させました。

刺激呈示時間は2000ms、刺激間間隔は1500msでした。刺激間間隔の間に判断をボタンで回答してもらいました。

課題中にfMRI(機能的磁気共鳴画像法)で脳活動を計測しました。

○結果

【顔-無意味写真】:社会恐怖症患者の方が左扁桃体、左島皮質、両側上側頭溝、右頭頂葉、楔部(ブロードマンの脳地図の17野:左内側後頭葉)が賦活しました(健康対照群との比較)。

社会恐怖症患者の方が活動が低い領域もあって、それは両側頭頂間溝、左前頭前野、左内側前頭回、左紡錘状回でした。

社会恐怖症患者の右紡錘状回は【顔-無意味写真】で賦活するものの、左紡錘状回では有意差が見出せませんでした。

つまり、社会恐怖症患者は顔刺激に対して情動領域(扁桃体・島皮質)での反応が高く、顔の社会的評価が活発(上側頭溝の賦活)であることが示唆されました。

しかし、紡錘状回や頭頂間溝、前頭前野の活動が低下しているので、顔の視覚的処理や顔刺激への注意ができていないと思われます。

★コメント

扁桃体や島皮質は表情に反応することから、顔知覚の拡張システム(extended system for face perception)とも呼ばれる領域群です。

*島皮質は内臓感覚に関与しているので、表情というよりは表情に対する被験者の身体反応を反映しているかもしれません。

一方、紡錘状回や上側頭溝は顔知覚の中枢システム(core system for face perception)を構成します。

中枢システムを担う紡錘状回は顔のアイデンティティの認識、上側頭溝は表情や視線、声など動的な社会的情報の処理に関与しているとされます。

*紡錘状回は人間の顔だけでなく、被験者に知識、関心がある架空のキャラクターにも反応します。実際に、ポケモンカードに尋常ならざる興味を抱く子どもは、そうでない子どもと比較して、ポケモンのキャラクターに対する紡錘状回顔領域(FFA:fusiform face area)の活動が高いのです(James et al., 2012)。

従来、紡錘状回や上側頭溝は自閉症スペクトラム障害で異常が指摘されてきた領域ですが、社交不安障害でも異常が見出されたわけです。

今回は社交不安障害の話でしたが、健常人でも恐れの表情に対する紡錘状回の活動が高ければ、社会不安が低いとの結果が得られています(Pujol et al., 2009)

本実験とほとんど同じ手続きだったDanti et al.(2010)は、複数の脳部位の活動の相関を求めたという点で異なります。

社会恐怖症の患者群と健常群で状態不安に有意差はなかったことから、少なくとも状態不安の差が本結果の原因ではありません(社会不安の差はあります)。

本研究では状態不安は状態・特性不安検査(State-Trait Anxiety Scale)、社会不安はリーボビッツ社会不安評価尺度(Liebowitz Scale for Social Phobia)や対人不安感尺度(Interaction Anxiousness Scale)、聴衆不安尺度(Audience Anxiousness Scale)で測定しています。

課題の正解率や反応時間にも群間に有意差はありませんでした。したがって、正解率や反応時間が脳活動の差の原因ではありません。

被験者数が少なかったことから結果の再現が求められます。

表情ごとの分析もありません。

○引用文献(アブストラクトだけ読みました)

James, T. W., & James, K. H. (2012). Expert individuation of objects increases activation in the fusiform face area of children. NeuroImage, 67(15), 182–192. doi:10.1016/j.neuroimage.2012.11.007.

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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