ストレス下でのスピーチで発話の認知的複雑性が減少 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

*ただし、今回はアブストラクトだけでなく、実験方法とその結果も読みました。また、今回の論文は不安との関係を直接調べた研究ではありません。しかし、高いストレスとなるスピーチ状況で、発話の認知的複雑性が減少するという内容は場面緘黙症に関するあの論文を彷彿とさせますので、本ブログでも取り上げたいと思います。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒女性は妊娠可能性が高い時、魅力が低い男性が恋人だと睡眠時間が長く、魅力が高い男性が恋人だと睡眠時間が短い

↑では、寝ないで何をやっているのでしょうかね(笑)

Saslow, L. R., McCoy, S., Löwe, I., Cosley, B., Vartan, A., Oveis, C., Keltner, D., Moskowitz, J. T., & Epel, E. S. (2014). Speaking under pressure: Low linguistic complexity is linked to high physiological and emotional stress reactivity. Psychophysiology, 51(3), 257–266. DOI:10.1111/psyp.12171.

アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校オッシャー統合医学研究センター&精神医学部、カリフォルニア大学バークレー校心理学部、カリフォルニア大学サンディエゴ校Rady School of Managementメイン大学心理学部、サウスカロライナ大学社会科学部、オックスフォード大学心理学部の方々の研究です。

○実験手続き

実験1:大学生136人が参加。同性ペアで情緒的につらかったことを話してもらい、その後話し手を交替し、その状況についての会話を継続してもらいました。これが実験ストレッサーです。特性としての情動的ストレス反応を質問紙で、状態としての情動的ストレスはベースラインと会話後に評価しました。心拍数は心電図(ECG)で計測しました。言語の認知的複雑性は排他語、仮定語、否定、矛盾の使用頻度を指標としました(以下同じ)。

実験2:44人の女性(平均年齢27.7歳)が参加。就職のための偽面接を受けてもらいました。2人の面接官の前でスピーチしました。面接が終わってから引き算をさせる計算課題を実施しました。Trier Social Stress Test(TSST)と似ていますね。コルチゾール濃度計測のための唾液はベースラインと面接課題後に採取しました。面接の前後に情動ストレスレベル、ポジティブ感情レベルを被験者に質問しました。言語の認知的複雑性は面接時のスピーチで評価しました。

*Trier Social Stress Testとは心理社会的ストレス負荷試験のことで、面接官の前でスピーチや暗算を被験者に求める課題です。

実験3:41人の母親(平均年齢= 37.5歳)。実験2とほとんど同じ手続きでした。ただし、偽の職業面接ではなく、最近のつらかった出来事をスピーチしてもらいました。慢性ストレスの指標は育児ストレスで、質問紙評定しました。外傷後成長尺度(Posttraumatic Growth Inventory:PGI)で最も大きなストレスとなった出来事の後のポジティブな変化を評定しました。また、コーピング法質問紙(Ways of Coping Questionnaire:WCQ)でここ1週間に起こった育児上の問題に対する対処法(コーピング法)について質問しました。

○実験結果

実験1ではベースラインの心拍数を統制しなければ、話している間の心拍数が高いほど、発話の認知的複雑性が低い結果となりました。また、会話後の情動ストレスが高いと、ベースラインの情動的ストレスを統制してもしなくても、話し言葉の認知的複雑性が低いことになりました。さらに、特性としての情動ストレス反応が高い人は話している間に言葉の認知的複雑性が低いことも分かりました。回帰分析では会話中の心拍数だけが有意に話し言葉の認知的複雑性の低さと関連しました。

実験2ではベースラインのコルチゾール濃度を統制すると、就職面接の20分以後のコルチゾール濃度が高いとスピーチの認知的複雑性が低いことが示されました。これと同じ結果が主観的ストレスレベルでも示されました。つまり就職面接で情動的ストレスを高く感じた人ほど、話し言葉の認知的複雑性が低い結果となりました。さらに面接後のポジティブ感情が高かった人はスピーチの認知的複雑性が高い結果となりました。回帰分析で言葉の認知的複雑性の低下を予測するものはコルチゾール反応とポジティブ感情の変化でした。

*コルチゾール濃度は心理社会的ストレッサーの20~40分後にピークを迎える。

実験3では実験2と同じく、スピーチに対するコルチゾール濃度反応が高い母親ほど、言葉の認知的複雑性が低くなりました。また、育児ストレスを慢性的に高く感じている母親ほど、スピーチでの認知的複雑性が低くなりました。また、外傷後成長尺度(PGI)でポジティブな変化を遂げた人やストレスをポジティブに再評価しなおす人はスピーチの認知的複雑性が高くなりました。回帰分析でスピーチの認知的複雑性を予測するのに有意だったのはコルチゾール反応とストレスでの成長(PGI得点)の2つで、慢性的な育児ストレスは有意傾向でした。

いろいろ長ったらしく書きましたが、研究チームは心拍数、情動的ストレス反応、コルチゾール濃度、すべてにおいてスピーチの認知的複雑性との関連が示されたと強調したいようです。

関連記事⇒TSSTで発話の機能性が高まり、ポーズ時間が長くなる

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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