大井らの緘黙児分類と荒木の緘黙児分類を批判 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

以前述べたように、長野大学の臼井なずな非常勤講師、高木潤野講師による緘黙の類型化に関する論文が長野大学リポジトリの「最も閲覧されたアイテム」で第一位を獲得しました(2014年1月6日現在)。

参考記事⇒臼井なずな、高木潤野講師の緘黙類型化論文が閲覧ランキング1位

その文献とは以下のものです。

臼井なずな・高木潤野 (2013). 緘黙の類型化に関する研究―従来指摘されてきた2つの分類からの検討― 長野大学紀要 34(3), 1-9. Permalink:http://id.nii.ac.jp/1025/00001052/.

臼井・高木(2013)の内容は大井ら(1979)の緘黙児分類と荒木(1979)の緘黙児分類を場面緘黙児に適用することで、その妥当性を検討するものです。

*大井ら(1979)、荒木(1979)とはそれぞれ以下の文献こと

大井正巳・鈴木国夫・玉木英雄・森正彦・吉田耕治・山本秀人・味岡三幸・川口まさ子(1979). 児童期の選択緘黙についての一考察 精神神経学雑誌, 81(6), 365-389.

荒木冨士夫(1979). 小児期に発症する緘黙症の分類 児童精神医学とその近接領域 20(2), 60-79.

○大井ら(1979)の分類と荒木(1979)の分類

孫引きになり恐縮ですが、臼井・高木(2013)によれば、大井ら(1979)は場面緘黙児を

TypeⅠ(社会化欲求型):家族以外にコミュニケーションを自ら求めるもの(コミュニケーションの手段としての緘黙)

TypeⅡ(社会化意欲薄弱型):家族以外にコミュニケーションを自ら求めようとする意欲に乏しいが、受動的には求めるもの(無気力な生活行動の一部としての緘黙)

TypeⅢ(社会化拒否型):家族以外にコミュニケーションを拒絶するかの如く求めないもの(コミュニケーションを避ける手段としての緘黙)

に分類し、荒木(1979)は場面緘黙児を

第Ⅰ群(積極的依存型):甘えと攻撃性を積極的に表出でき、家庭では多弁、治療導入が容易で、わがまま群。

第Ⅱ群(消極的依存型):甘えと攻撃性を消極的に発揮できる、もしくは甘えと攻撃性をまったく発揮できず、家庭では普通、治療導入が容易及び深まりにくく、内向性群。

第Ⅲ群(分裂気質型):甘えはなく、破壊的な攻撃のみが発揮され、家庭では無口で、治療導入が困難な分裂気質群

の3つに分類しています。

○大井ら(1979)の分類と荒木(1979)の分類の批判

しかし、私はこれらの分類を大真面目に議論する気にはとてもなりません(批評開始!)。

大井ら(1979)、荒木(1979)の文献が手元にないのでよく分からないのですが、おそらく統計的に導き出した分類ではないでしょう。まさか1979年の段階でそこまで研究が進展していたとは思えませんから。

統計的検討がされていなければ、緘黙児の3分類が必要十分だという保証はどこにもありません。もしかしたら、2つでいいのかもしれないし、4つ以上の分類が必要なのかもしれませんからね。

また、具体的な数値データに基づき、クラスター分析(クラスター解析)等の統計的手法を使用していればいいのですが、そうでなければ研究者の主観の影響を免れません。

臼井・高木(2013)は大井ら(1979)の分類や荒木(1979)の分類を場面緘黙児に適用していますが、その判断基準が質的なものであり、量的なものではありません。それゆえ、研究者の主観に基づく分類との批判を免れることはできません。少なくとも、検査者間信頼性(Inter-Examiner Reliability)等で信頼性を確認すべきです。

検査者間信頼性とは複数の検査者(調査者)の間での意見の一致度のことです。同じ分類基準を用いていても、場面緘黙児の分類結果が分類者(診断者)によって違うのでは話になりませんからね。

そもそも大井ら(1979)の分類や荒木(1979)の分類で対象となったのは場面緘黙「児」です。したがって大井ら(1979)や荒木(1979)の分類はあくまでも場面緘黙症の「子ども」の分類であって、場面緘黙症そのものの分類ではありません。

別の言い方をすれば、思春期以降でもこれらの緘黙の分類が当てはまるかどうかは不明だということです。

えっ!なぜ文献を読んでいないのに場面緘黙「児」が対象の調査だと分かるのかだって。それは論文のタイトルが大井ら(1979)で「児童期の」、荒木(1979)で「小児期に発症する」とあることに加え、場面緘黙症Journalブログの記事、「積極的依存型、消極的依存型、分裂気質型」や「社会化欲求型、社会化意欲薄弱型、社会化拒絶型」に「緘黙症児」という明言があるからです。

以上を要約すると、現在の(日本の)緘黙児分類は、

1.3つが主流だが、それが必要十分であるという証拠はどこにもない

2.主観的印象に基づいて行われており、信頼性が保証されていない(妥当性はひとまずおいておく)

3.あくまでも、緘黙の子どもの分類であって、思春期以降も同じ分類が適用できるかどうかは不明

という問題を抱えています。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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