笑顔に接近する訓練でプレゼン後の不安が低下する | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)と本文を少しだけ読んだ、社会不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社会不安なのかというと、場面緘黙症児は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害)を合併していることが多いという知見があるからです。

今回は社会不安が高い人に笑顔に接近する訓練をすると、プレゼン後のムード・不安が改善するという研究です。

なお、社会不安以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事1⇒一妻多夫制のハエは一夫一婦制のハエより頭が良い

最近の記事2⇒人への信頼感、人が自分を信頼しているという信念は遺伝しない

↑ハエの話は性淘汰で女がいっぱいいる環境だと男は頭が良くなるよという研究です。

↑信頼の話はTwitterでもお気に入り登録が多くなりました。双生児法などの行動遺伝学的研究によりほとんどすべての人間の特性は大なり小なり遺伝の影響をうけるということが示されているのに、信頼は全く遺伝の影響がないという非常に不思議な現象についての論文を紹介しています。

Rinck, M., Telli, S., Kampmann, I. L., Woud, M. L., Kerstholt, M., te Velthuis, S., Wittkowski, M., & Becker, E. S. (2013). Training approach-avoidance of smiling faces affects emotional vulnerability in socially anxious individuals. Frontiers in Human Neuroscience, 7:481. doi:10.3389/fnhum.2013.00481.

オランダのナイメーヘン・ラットバウト大学行動科学研究所等の方の論文です。

○背景

社会不安が高い人は笑顔をポジティブに評価しているにもかかわらず、笑顔から回避する傾向が強いという報告があります。もし、笑顔の回避と社会不安に因果関係があるとすれば、笑顔に接近する訓練で社会不安が低下するかもしれません。よって、本実験では笑顔に接近する訓練の効果を検証しました。

○手続き

社会不安が高い人が実験に参加しました。彼らを笑顔接近訓練群、笑顔回避訓練群にランダムに割り当てました。

接近-回避課題(Approach-Avoidance Task:AAT)で笑顔に接近する訓練または回避する訓練を実施しました。笑顔に接近する群では同時にチェッカー盤(碁盤)を回避、笑顔を回避する群では同時にチェッカー盤に接近するよう、教示を出しました。

なお、接近-回避課題の詳細については「オキシトシン鼻腔投与で怒り表情に対する接近が増加するが…」をご覧ください。簡単にいうと、joystick(操作レバー)を自分に向って引くのが接近を、自分とは反対方向に押すのが回避です。反応時間が指標となります。

Face-Turn AAT(Face-Turn Approach-Avoidance Task:FTAAT)で訓練効果の般化を検証しました。Face-Turn AATとは横を向いている刺激顔(または統制刺激)の向きを変える課題のことです。Face-Turn AATは直訳すると顔振り向き接近-回避課題となります。

普通の接近-回避課題とは異なり、接近は刺激の正面を見えるようにすること、回避は刺激の背面を見えるようにすることです。本研究では左側を向いている刺激を回避し、右側を向いている刺激に接近するように教示を出しています。

Face-Turn AATで用いた刺激はコンピュータモニターの写真(統制刺激)と少しフレンドリーな顔でした。

また、社会的ストレスとしてプレゼンテーションを参加者にさせ、プレゼン前後のムードの評定を行いました。

○結果

笑顔接近訓練群は笑顔に接近する傾向が強まり、笑顔回避訓練群では笑顔を回避する傾向が強まりました。

Face-Turn AATでも笑顔接近訓練群で、より素早く顔に接近しました(笑顔回避訓練群との比較)。ただし、効果が表れたのは女性の顔だけで、男性の顔では生じませんでした。

また、笑顔接近訓練群は、プレゼン後のムードがポジティブになり、不安が減少しました(プレゼン前との比較)。一方、笑顔回避訓練群では有意差が検出されませんでした。また、両群の比較でも笑顔接近訓練でプレゼン後のポジティブムードが強まること、不安が低下することが分かりました。

○コメント

笑顔を回避した群と比較しているのが難点ですし、不安の低下がプレゼン後というのが微妙という感じですが、これらの結果から研究チームは自動的な接近・回避傾向が社会不安の原因であると考察しています。

本実験は単に笑顔に接近する訓練をするだけでも、プレゼン後の不安を低下させる効果が期待できることを示しています。しかし、現時点ではスマートフォン(スマホ)等で接近-回避課題を気軽に使用できないはずです。

一方、注意バイアスではすでに注意バイアス修正トレーニング(Attention-Bias Modification Training:ABMT)をスマホで実施できる状況です。なので、手軽さという面では接近-回避課題よりも注意バイアス修正訓練の方が上手のような気がします。

*『Personal Zen』という注意バイアス修正訓練アプリが無料でiTunesからダウンロードできます。もっともこれは英語ができないと使えないのですが…。緘黙経験者でも、不安が高い方はこれで注意バイアスを修正し、不安が低下する効果が期待できると思われます。

関連記事⇒スマートフォンで注意バイアス修正訓練→社会不安が減少?

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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