社会不安が高いと逸れた視線を直視と感じやすい | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、社会不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが、最新の研究成果です。

なぜ、社会不安なのかというと、場面緘黙症児は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害)を合併していることが多いという知見があるからです。

今回は社会不安が高い人は逸れた視線が自分に向いていると感じやすく、それは怒り、恐れ、無表情で強いという研究です。

なお、社会不安以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最新記事⇒赤ちゃんが女の子だと男の子の場合よりおっぱいが大きくなる

おっぱい云々とありますが、子どもでも読める記事です。もっとも進化心理学のTrivers–Willard仮説(Trivers–Willard hypothesis)に関する説明は少し難しいかもしれませんが(実は少し論理の飛躍がある記事です)。

Schulze, L., Lobmaier, J. S., Arnold, M., & Renneberg, B. (2013). All eyes on me?! Social anxiety and self-directed perception of eye gaze. Cognition & emotion, 27(7), 1305-1313. DOI:10.1080/02699931.2013.773881.

ドイツのベルリン自由大学教育科学心理学部とスイスのベルン大学心理学研究所の合同研究です。

○実験手続き

被験者174人に300ms(ミリ秒)呈示された顔の視線が自分に向けられているかどうか回答してもらいました。顔の表情は怒り、恐れ、幸せ、無表情でした。視線の角度は0°, 2°, 4°, 6°, 8°の5パターン用いました。

○実験結果

社会不安が高いほど視線を直視と感じやすいことが分かりました。特に怒り、恐れ、無表情で顕著でした。

また、社会不安が高い人は0°, 2°, 4°の視線に対する反応が早い結果となりました。

余談ですが、社会不安の高低を考慮しない実験では、幸せそうな表情の視線が自分に向いていると感じやすいという結果になります(以下の論文参照のこと)。

Lobmaier, J. S., & Perrett, D. I. (2011). The world smiles at me: Self-referential positivity bias when interpreting direction of attention. Cognition & Emotion, 25(2), 334-341. doi:10.1080/02699931003794557.

英国のセント・アンドルーズ大学とスイスのベルン大学の研究で、両目が隠されていようがいまいが、幸福な顔が最も視線を感じる表情であるという結果でした(用いた表情刺激は幸福、恐怖、怒り、無表情)。

研究者は上の実験結果を自己参照性のポジティブバイアス(self-referential positive bias:self-referential positivity bias)との関連から考察しています。つまり、幸福表情を自分と結びつけて考えてしまうことが実験結果の原因の1つだと推察しています。

ここでの(自己参照性の)ポジティブバイアスとはおそらく、自分は良いんだという認知バイアスのことでしょう。ポジティブ幻想(positive illusion)とほとんど同義として使用されていると思います。

*ポジティブ幻想とは自分には楽観的なことが起こるはずだという認知バイアスのことです。

○日本でも同様の研究が行われている

専修大学社会知性開発研究センター・専修大学人間科学部心理学科の石川・岡村・大久保(2012).も同様の実験も行い、同じような結果を得ています。西洋人でも日本人でも社会不安が高いと、視線の方向が曖昧な場合には「見られている」と感じやすいというわけです。

石川健太・岡村陽子・大久保街亜(2012).社会不安傾向者の視線方向判断:表情と解釈バイアス 心理学研究,83, 225-231. Permalink:http://id.nii.ac.jp/1015/00005015/. 

↓専修大学学術機関リポジトリのURL(2014年2月8日現在)

http://ir.acc.senshu-u.ac.jp/index.php?active_action=repository_view_main_item_detail&page_id=13&block_id=52&item_id=5019&item_no=1

日本の研究論文には正面判断率云々とありますが、要するに視線がずれていても正面であると判断する傾向のことです。ただし、日本の研究では「社交不安傾向群では笑い,怒り,中立顔の順で正面判断率が高くなった」、「統制群においては笑い,中立顔,怒りの順で正面判断率が高くなった」と、ドイツ・スイスの研究と微妙に異なった結果になっています(笑いと幸せの表情を同義と考えた場合)。

実は上の日本の研究はドイツ・スイスの英語論文をツイートした時に、専修大学の大久保街亜准教授からTwitterを通して教えていただきました。ありがとうございます。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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