cone of gazeが広いのは社会不安が高い男性 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、社会不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが、最新の研究成果です。

なぜ、社会不安なのかというと、場面緘黙症児は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害)を合併していることが多いという知見があるからです。

なお、社会不安以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒ポジティブなサブリミナル刺激や身体感覚への注意で署名(サイン)が大きくなる

↑余談ですが、リンク先で紹介した論文に引用されている文献に神経性無食欲症(拒食症)患者は署名が小さいという先行研究があって驚きました。

今回紹介する論文は社会不安が高い男性は女性と違い、cone of gazeが広いという研究です。

○cone of gazeとは何ぞや?

cone of gaze、あるいはcone of direct gazeとは直視と感じる視線の範囲のことで、心理物理学(psychophysics)の用語です。たとえば、科学雑誌『プラスワン』掲載の論文では、8歳の子どもで中性顔や恐れの表情よりも怒りの表情の方がcone of gazeが広いことが示されています(Rhodes et al., 2012)。

*『プラスワン』掲載の論文とは以下の文献のこと。

Rhodes, G., Addison, B., Jeffery, L., Ewbank, M., & Calder, A. J. (2012). Facial expressions of threat influence perceived gaze direction in 8 year-olds. PLoS ONE, 7(11):e49317. doi:10.1371/journal.pone.0049317.

また、実験児童心理学雑誌掲載の論文では、写真に写っている顔を見ている時に「私はあれを見ている」という声を聞くと、「私は君を見ている」という声や声が全くなかった試行と比較して、cone of gazeが狭いという結果になっています(Vida et al., 2013)。ただし、この現象は6歳児だけに生じ、8歳児や大人では生じませんでした。

*実験児童心理学雑誌掲載の論文とは以下の文献のこと。

Vida, M. D., & Maurer, D. (2013). I see what you’re saying: Voice signals influence children’s judgments of direct and averted gaze. Journal of Experimental Child Psychology, 116(3), 609-624. doi:10.1016/j.jecp.2013.07.005.

ただし、上記の論文では6歳児よりも、8歳児や大人の方がcone of gazeが狭かったので、床効果(floor effect)が生じた可能性があります。床効果とはベースラインの計測値が低かったら、それ以上低い値を取れないので、あたかも実験の効果(統計学の専門用語で言うと独立変数の影響)がないように見えることです。事実、同論文の実験2では、顔呈示時間を短くすると大人でもcone of gazeが拡大し、「私はあれを見ている」という声を聞くとcone of gazeが狭くなりました。

また、米国の科学的心理学会(Association for Psychological Science)が発行するPsychological Scienceというインパクトのある科学雑誌に掲載された論文によれば、中性表情を見ている時に被験者の名前を誰かが言っているのを聞くと、少し逸れた視線が自分に向いていると感じやすくなります(Stoyanova et al., 2010)。

*Psychological Science掲載の論文とは以下の文献のこと。

Stoyanova, R. S., Ewbank, M. P., & Calder, A. J. (2010). “You talkin’to me?” Self-relevant auditory signals influence perception of gaze direction. Psychological Science, 21(12), 1765-1769. doi:10.1177/0956797610388812.

さて、本題に戻って、今回の論文はこちらです。

Jun, Y. Y., Mareschal, I., Clifford, C. W., & Dadds, M. R. (2013). Cone of direct gaze as a marker of social anxiety in males. Psychiatry Research. 210(1), 193–198. doi:10.1016/j.psychres.2013.05.020.

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学心理学部、シドニー大学心理学部、シドニー大学オーストラリア視覚科学エクセレンスセンター(Australian Centre of Excellence in Vision Science)、ロンドン大学クイーン・メアリー生物化学学部心理学教室の研究です。

○背景

社会不安が高い人、または社会不安障害患者は見られることへの恐怖を持ち、見つめられていると感じやすいとされます。

参考記事⇒社会不安が高いと逸れた視線を直視と感じやすい

○目的

社会不安が高い人のcone of gazeを計測すること。

○実験手続き

被験者に視線の角度や表情を様々に変化させた男性の顔を見せて、視線が自分に向いているかどうか判断してもらいました。被験者は社会不安が高い高社会不安群と社会不安が低い低社会不安群のグループに分けました。

○実験結果

社会不安が高い男性陣はcone of gazeが広くなっていました(社会不安が低い男性陣との比較)。一方、女性陣では社会不安の高低による差は検出されませんでした。

全般的に、恐れの表情は中性表情や怒りの表情よりもcone of gazeが狭い結果となりました。ただし、効果量(effect size)は小さく、社会不安が高い男性陣には生じませんでした。

効果量とは実験条件の効果の大きさを表す統計値のことです。サンプルサイズによって変化する統計的有意性の検定基準、p値の限界を克服するために用いられます。

その他、男性の方が見られることに不快感を抱くことを示唆する結果も得られたそうです。ただし、刺激顔が男性だけなので、女性の顔を刺激とした場合は分かりません。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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