指示性忘却でポジティブ語を忘れるのが得意な高社会不安群 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、社会不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社会不安なのかというと、場面緘黙症児は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害)を合併していることが多いという知見があるからです。

今回は社会不安が高い人は忘れるように言われた社会的にポジティブな単語を忘却するのが得意という研究です。これは指示性忘却(Directed Forgetting)の実験です。学生時代から指示性忘却という実験パラダイムを知っていた私としては「えっ!」と驚く研究だったので取り上げておきます。

指示性忘却とは「忘れろ」という教示(指示)を受けた刺激は「覚えろ」という教示を受けた刺激よりも、記憶成績が悪くなる現象のことです。ヒトだけでなく、動物でも指示性忘却が生じることが知られています。近年、心理学や脳科学(神経科学)の世界で忘却は能動的にできるという知見が蓄積されており、忘却の積極的役割に注目が集まっています。

なお、社会不安以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒出産は友人へ波及する(ただし、2年まで)

Liang, C. W., Hsu, W. Y., Hung, F. C., Wang, W. T., & Lin, C. H. (2011). Absence of a positive bias in social anxiety: The application of a directed forgetting paradigm. Journal of Behavior Therapy & Experimental Psychiatry, 42(2), 204-210. doi:10.1016/j.jbtep.2010.12.002.

台湾の国立政治大学(國立政治大學)心理学部&心・脳・学習研究センター(Research Center for Mind, Brain, and Learning)と中原大学心理学部の研究者達の論文です。

○実験の目的

社会不安が高い人が社会的情報に対する記憶バイアスを示すかどうか調査すること。手続きは指示性忘却を使用。

○実験手続き

社会不安高群と社会不安低群に3種類の単語を見せました。3種類の単語とは社会的ニュートラル語、社会的ポジティブ語、社会的ネガティブ語のことです(以下、社会的は省略)。コンピュータスクリーンに単語を呈示した後、被験者に当該単語を記憶するか、忘却するかの教示を与える手がかり(cue)を見せました。

*専門的には記憶手がかりをR-cue(Remember-cue)、忘却手がかりをF-cue(Forget-cue)といいます。

記憶検査は自由再生法(free recall test)と再認法(recognition test)を用いました。記憶検査はR-cueが呈示された単語でも、F-cueが呈示された単語でも行いました。F-cue呈示刺激で記憶検査をするなんて実験者はずる賢いですね。

*自由再生法とは被験者が思い出した順番に自由に回答させる手続きのことで、再認法とは以前見せなかった刺激と見せた刺激を見せて、どれが前に見た刺激かどうか答えさせる手続きのことです。 一般に再認法より自由再生法の方が難しいとされます。

○実験結果

社会不安低群と比較して、社会不安高群は自由再生法による記憶検査でポジティブ語で強く指示忘却効果(directed forgetting effect)が生じました。つまり、社会不安が高い人は「忘れろ」といわれた社会的なポジティブ語を忘却するのが得意だという結果になったのです。

研究チームはこの結果は社会不安が低い人なら社会的ポジティブ語を忘却するのが苦手(ポジティブバイアス:positive bias)なのに、社会不安が高い人ではポジティブバイアスが欠如していることを示唆すると考察しています。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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