カンナビジオールによる社会不安障害の治療 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、社会不安(障害)の治療法に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが、最新の研究成果です。

*ただし、本論文に関しては本文を少し読んでいます。

なぜ、社会不安なのかというと、場面緘黙症児は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害)を合併していることが多いという知見があるからです。

今回は大麻成分であるカンナビノイドの1種、カンナビジオールを用いた社会不安障害の治療のお話です。

なお、社会不安以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒女性は妊娠可能性が高い時期に赤やピンクの服装をする

Bergamaschi, M. M., Queiroz, R. H. C., Chagas, M. H. N., de Oliveira, D. C. G., De Martinis, B. S., Kapczinski, F., Quevedo, J., Roesler, R., Schröder, N., Nardi, A. E., Martín-Santos, R., Hallak, J. E., Zuardi, A. W., & Crippa, J. A. S. (2011). Cannabidiol reduces the anxiety induced by simulated public speaking in treatment-naïve social phobia patients. Neuropsychopharmacology, 36(6), 1219-1226. doi:10.1038/npp.2011.6.

ブラジルのサンパウロ大学リベイラウンプレト医学研究科神経科学行動学部、サンパウロ大学リベイラウンプレト薬学研究科臨床毒性学食物科学分析学部、サンパウロ大学リベイラウンプレト哲学科学文学研究科化学学部、伯国立トランスレーショナル医療研究所、リオグランデ・ド・スル州(伯)のポルト・アレグレ臨床病院(Hospital de Clínicas de Porto Alegre)双極性障害プログラム、クリシューマ(伯)の南サンタカタリナ大学健康科学ユニット神経科学実験室、リポルト・アレグレ(伯)のリオグランデ・ド・スル大学基礎健康科学研究所薬理学部分子薬理学実験室、ポルト・アレグレ(リオグランデ・ド・スル州)の教皇庁立カトリック大学バイオサイエンス研究科神経科学発達生物学実験室、リオデジャネイロ連邦大学精神医学研究所、バルセロナ(スペイン)のIDIBAPS病院クリニック神経科学研究所精神医学部の研究です。

*伯とはブラジルの漢字表記のことです。

○背景

カンナビジオールは動物でもヒトでも抗不安作用を示すとされます。したがって、社会不安障害の治療にも使える可能性があります。

カンナビジオールとは大麻(アサ)に含まれる化学物質のことで、カンナビノイドの1種です。英語でCannabidiolと書くことから、CBDと略されることもあります。

カンナビジオールはラットで消去学習を促進する効果がありますが、人間でもパブロフ恐怖条件付けの消去後に摂取すると、消去の固定が促されることが2013年に初めて報告されました。以下の論文です。

Das, R. K., Kamboj, S. K., Ramadas, M., Yogan, K., Gupta, V., Redman, E., Curran, H. V., & Morgan, C. J. (2013). Cannabidiol enhances consolidation of explicit fear extinction in humans. Psychopharmacology, 226(4), 781-792. doi:10.1007/s00213-012-2955-y.

○本題に戻って…実験手続き

社会不安障害患者24人の半数を600mgのカンナビジオールを服用する群に、半数をプラセボを服用する群にランダムに割り当てました。二重盲検法(double-blind study design)でした。薬物を服用しない健常者も12名参加しました。

実験課題は模擬演説テスト(simulation public speaking test:SPST)を用いました。カンナビジオールの経口服用では1~2時間後に体内濃度がピークになるため、SPSTの説明は服用後90分後に実施しました。スピーチの内容は居住市の交通システムについてで、2分間の準備を与えました。被験者にはスピーチは記録され、心理士?(psychologist)によって評価されるとの説明をしました。

ベースラインやスピーチ予期期、スピーチの途中、スピーチ後に様々な心理尺度をとりました。

状態不安、鎮静状態、認知障害、不快感を視覚アナログスケールムード尺度(Visual Analogue Mood Scale:VAMS)で計測。

スピーチパフォーマンスの自己知覚をSelf-Statements during Public Speaking Scale(SSPS)で計測。SSPSは社会不安の原因が自己知覚や自己に対する他者の知覚がネガティブであることという社会不安の認知モデルに基づいています。

不安に間接的に影響しそうな身体症状を身体症状尺度(Bodily Symptoms Scale:BSS)で計測。

皮膚コンダクタンス(skin conductance)や最高血圧/収縮期血圧(systolic blood pressure)、最低血圧/拡張期血圧(diastolic blood pressure)、心拍数(heart rate)も計測しました。

○実験結果

カンナビジオールの事前投与は社会不安障害患者のスピーチ不安、認知障害、不快感を弱めました。スピーチの予期段階での警戒態勢も減少しました。対してプラセボ投与では健常対照群と比較して、スピーチ不安、認知障害、不快感、スピーチの予期段階での警戒心が高い結果となりました。SSPSのN得点、認知障害、不快感、警戒心はカンナビジオール服用群と健常対照群で有意差が検出されませんでした。

プラセボ投与群で演説中のパフォーマンスの自己知覚が増加したのに対し、カンナビジオール投与群では自己知覚の増加が認められませんでした。

皮膚コンダクタンス、収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数への影響は微妙でした(もう、書くの面倒になりましたので、適当にあしらっておきます)。

○コメント

えっ!大麻で社会不安障害の治療?とびっくりされる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、医療用大麻が合法化されている国もありますし、2014年1月には米国コロラド州でマリフアナ(大麻)が嗜好品として合法化されるというニュースもありました。

*日本では大麻は違法なので注意!大麻取締法により医療目的の大麻も罰せられます。

以前、『行動抑制+線条体の興奮→物質使用(薬物乱用・薬物依存)』という記事の後半で書いたように、社会不安障害(社交不安障害)はアルコールや大麻(マリファナ)、喫煙(ニコチン)の使用問題と関連しており、社会的不安に対処するためにこれら薬物に手を出すことが示されています。

本研究はカンナビジオールの短期的な抗不安作用を示したものであり、長期的な影響については未知数です。今後の研究が望まれます(といっても日本で不安障害の治療にカンナビジオールを使用することはないかもしれませんが)。

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Comment
176
大麻が危険というのは、より強い薬物に手を出す可能性が高くなるからということ以外
には無い。大麻の危険性はアルコールやたばこ以下のものでしかないといわれてますね。


177
Re: タイトルなし
コメント、ありがとうございます。私は大麻の専門家ではないので、詳しいことは分かりませんが、大麻から次の薬物に向かう可能性はありそうですね。

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ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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