スマートフォンで注意バイアス修正訓練→社会不安が減少? | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、社会不安(障害)の治療法に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが、最新の研究成果です。

なぜ、社会不安なのかというと、場面緘黙症児は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害)を合併していることが多いという知見があるからです。

今回は社会不安を弱めるためにスマートフォンで注意バイアス修正訓練を試みた研究です。スマートフォン(スマホ)での注意バイアス修正をランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)で検証した初めての論文になります。

なお、社会不安以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒ハンマーで手を叩きながら大理石を殴打している音を聞くと、手の感覚が「大理石」になる

↑Twitterでは結構人気で、Facebookでもいいね!を獲得した記事です。

Enock, P. M., Hofmann, S. G., & McNally, R. J. (2014). Attention bias modification training via smartphone to reduce social anxiety: A randomized, controlled multi-session experiment.Cognitive Therapy & Research, 38(2), 200-216. DOI;10.1007/s10608-014-9606-z.

研究チームはハーバード大学心理学部とボストン大学心理学部の方たちです。

○注意バイアスの基礎知識

注意バイアス(attentional bias,attention bias)は不安の維持、形成(Eldar et al., 2008)に重要な役割を果たしているとされています。また、注意バイアスは修正可能(Eldar et al., 2010)で、認知行動療法のメカニズムに注意バイアスの変化があると主張する研究者(Legerstee et al., 2010)もいます。ネガティブ表情から笑顔を見つける注意バイアスの修正訓練が社会恐怖を低下させたとの報告(De Voogd et al., 2014)や脳波フィードバックで注意バイアスと特性不安が減少したという報告(Wang et al., 2013)もあります。

○方法

RCTで二重盲検法(double-blind design)。待機群(waitlist)も設定。

注意バイアスの訓練は中性表情と嫌悪表情を用いたdot-probeで実施しました。訓練内容は嫌悪表情から注意を逸らすものでした。なお、dot-probeに関してはPérez-Edgar et al.(2010)等をご覧ください。

注意バイアス修正訓練は1日3回、4週間行いました。場所はどこでもOK牧場としました。

1週間ごとに、インターネット経由で症状の自己申告をしてもらい、スマホでの注意バイアス計測結果も提出してもらいました。

○結果

注意バイアスの修正訓練の影響は統計的分析によって有意差がある場合とない場合が発生し、その効果は微妙なものとなりました。

ただし、社会不安に関しては治療の意図による分析(intention to treat analysis:ITT解析)をすると、統制訓練群、訓練群ともに減少し、その効果量は中~大になりました(待機群との差も有意)。一方、待機群は待機期間の前後で有意な社会不安の減少がありませんでした。

*ITT解析とは実験計画とは違うことを間違ってやってしまった人も合わせて分析する方法です。本研究の場合ですと、実際に訓練を行うはずの人が統制訓練をしてしまったり、あるいは逆に統制訓練群にあたるはずの人が実際の訓練をしてしまったりした時に役立つのがITT解析になります。

○コメント

注意バイアス修正訓練と統制訓練で社会不安が低下したということは、スマホさえあれば家でも簡単にできるということになります。ただし、社会不安に関して統制訓練群と訓練群に有意差がなかったので、わざわざ嫌悪表情から注意を逸らさなくても良いようです。

個人的には場面緘黙症の人に同じことをやるとどうなるのかなと興味があります。と、その前に場面緘黙症と注意バイアスの関係を調べた研究が1つも発表されていないので、まずは基礎研究からになりますが。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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