吃音者も注意バイアスを示す(反応形式が口頭の場合) | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害を合併していることが多いという知見があるからです。ただし、今回は不安(障害)の背景にある注意バイアスと吃音の話です。吃音と緘黙症が似ているという意見がネット上(特にTwitter)に散見されるので、媚びを売るつもりで本記事を作成しました(冗談です。そもそも吃音経験者や緘黙経験者に注意バイアスに関する知識がどれだけあるのか疑わしいですから、媚びにもならない可能性大です)。

今回は社会不安障害(社交不安障害,社交不安症)の有病率が高い吃音者も脅威語に対する注意バイアスを示すが、それは回答形式が口頭の場合だけ&注意バイアスが吃音頻度と相関するというお話です。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒鼻先を中央に寄せた顔は魅力的

Hennessey, N. W., Dourado, E., & Beilby, J. M. (2014). Anxiety and speaking in people who stutter: An investigation using the emotional Stroop task. Journal of Fluency Disorders, 40, 44–57. DOI:10.1016/j.jfludis.2013.11.001.

オーストラリアのカーティン大学健康科学研究科心理言語障害学部の研究者による論文です。

○背景と目的

不安の維持、形成(Eldar et al., 2008)には注意バイアス(attention bias)が重要な役割を果たしているとされます。また、注意バイアスは修正可能(Eldar et al., 2010)で、認知行動療法のメカニズムの1つに注意バイアスの変化があると主張する研究者(Legerstee et al., 2010)もいます。ただし、自閉症スペクトラム障害の男の子の不安に注意バイアスは関与しないという報告(Hollocks et al., 2013)もあり、不安の背景に注意バイアスが存在するかどうかは主症状・主障害に依存する可能性が示唆されています(ただし、性別に依存するという解釈も否定できない)。

*注意バイアスとはある特徴をもった刺激(例:怒った顔や自殺・殺人などのネガティブ語)に対して注意を向ける傾向が強かったり、注意を逸らすのが遅いといったことを意味する精神医学・(臨床)心理学の専門用語のことです。情動ストループ課題やドットプローブ課題で計測することができます。情動ストループ課題の手続きについてはWang et al.(2013)を、ドットプローブ課題の手続きについてはPérez-Edgar et al.(2010)をご覧ください。

一方、吃音者は非吃音者と比べて社会不安障害になりやすいことが知られています。事実、本論文が掲載されているJournal of Fluency Disordersの40巻(2014)は不安と吃音(Anxiety and stuttering)という特集号です。したがって、本研究では吃音者に注意バイアスがあるかどうかを調べました。また、吃音者の注意バイアスがスピーチ運動プランニングやその実行に及ぼす影響も調査しました。

○実験手続き

吃音者31人、健常流暢者31人が参加。注意バイアス課題として情動ストループ課題(emotional Stroop task)修正版を使用。

情動ストループ課題修正版では被験者に中性語・脅威語の色を口頭で回答してもらいました。発音速度(回答速度)は通常版と高スピード版の2種類設定しました。一方、手でボタン押し反応をすることで回答する統制課題も実施しました(回答速度は制限時間で調整)。

○実験結果

吃音群は口頭で回答する情動ストループ課題でだけ、中性語よりも脅威語への反応が遅くなりました。この注意バイアスレベルが吃音頻度と相関しました。一方、健常者群ではそのような現象は生じませんでした。

○コメント

ネガティブ表情から笑顔を見つける注意バイアス修正訓練(De Voogd et al., 2014)やスマートフォン(スマホ)で注意バイアス修正訓練/統制訓練(Enock et al., 2014)をすると、社会不安が減少したという研究成果があります。もしかしたら、吃音人も注意バイアス修正訓練で不安が低下するかもしれませんね。ただ、単なる高不安者とは違って吃音人は声をだす注意バイアス修正訓練をしなければならないと思われます。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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