自閉症スペクトラム障害の少年の不安に注意バイアスは関与しない | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが、最新の研究成果です。

なぜ、不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害を合併していることが多いという知見があるからです。

今回は自閉症スペクトラム障害の少年はたとえ不安が高かったとしても、注意バイアスを示さないというお話です。

自閉症スペクトラム障害と場面緘黙(症)の関わりを指摘する研究(Sharkey et al., 2012)もありますから、自閉症の不安研究として取り上げることにしました。 

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最新記事⇒映画の登場人物が鼻をクンクンさせていると、観客もクンクンする

Hollocks, M. J., Ozsivadjian, A., Matthews, C. E., Howlin, P., & Simonoff, E. (2013). The relationship between attentional bias and anxiety in children and adolescents with autism spectrum disorders. Autism Research, 6(4), 237-247. doi:10.1002/aur.1285.

キングス・カレッジ・ロンドン精神医学研究所児童青年精神医学部&心理学部&医学教室、キングス・カレッジ・ロンドンメンタルヘルス研究センター精神医学生医学研究所児童青年精神医学部、Guy's Hospital(ガイズ病院)の方々の研究です。

○背景

自閉症スペクトラム障害の人は健常発達の人よりも不安が高く、不安障害の有病率も高いことが知られています。

一方、不安の維持、形成(Eldar et al., 2008)には注意バイアス(attentional bias,attention bias)が重要な役割を果たしているとされます。また、注意バイアスは修正可能(Eldar et al., 2010)で、認知行動療法が効果的な理由の1つに注意バイアスの変化があると主張する研究者(Legerstee et al., 2010)もいます。

ネガティブ表情から笑顔を見つける注意バイアスの修正訓練が社会恐怖を低下させたとの報告(De Voogd et al., 2014)や脳波フィードバックで注意バイアスと特性不安が減少したという報告(Wang et al., 2013)もあります。2014年初頭にはスマートフォンで注意バイアス修正訓練を実施したという初のランダム化比較試験(RCT)が報告されました。

参考記事⇒スマートフォンで注意バイアス修正訓練→社会不安が減少?

したがって、自閉症スペクトラム障害患者の不安に注意バイアスが関与している可能性があります。これを調べたのが本研究です。

○方法

自閉症スペクトラム障害の少年38人と健常発達児41人が参加しました。年齢は10~16歳でした。

dot-probe課題(dot-probe task)で注意バイアスを計測しました。表情刺激を用いたdot-probe課題と情動語を用いたdot-probe課題の2種類を実施しました。

なお、dot-probe課題についてはPérez-Edgar et al.(2010)や「背景」に貼ったリンク先をご覧ください。

○結果

自閉症スペクトラム障害群は健常発達群と比較して不安・うつが重篤でした(親・子どもが評定)。しかし、注意バイアス得点に群間の有意差はなく、不安と注意バイアスの相関もありませんでした(ただし、健常発達群でも相関は有意でなかった)。これは刺激が表情であっても情動語であっても同じ結果となりました。

○コメント

自閉症スペクトラム障害者の不安症状に注意バイアスが関与していないとしたら、『Personal Zen』という無料アプリで注意バイアス修正訓練を実施しても自閉症の人には効き目がない可能性があります。

ただ、自閉症スペクトラム障害はheterogeneous(異質な)集団で個人差が多いとも考えられ、追試が必要です。さらに、健常発達群でも不安と注意バイアスに相関がみられなかったことから、dot-probe課題の妥当性さえ疑われます。ゆえに、不安障害患者も含めて実験すると良いかもしれません。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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