TSSTで発話の機能性が高まり、ポーズ時間が長くなる | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけ読んだ、不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

*ただし、今回はアブストラクトだけでなく、実験方法とその結果も読みました。また、今回の論文は不安との関係を直接調べた研究ではありません。しかし、高いストレスとなるスピーチ状況で、ポーズ時間が長くなり流暢性が低くなるという内容は場面緘黙症に関するあの論文を彷彿とさせますので、本ブログでも取り上げたいと思います。ただ、ストレススピーチで発言の機能性が高まるというのは私には解釈が難しいですが。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒電話での遅延が長いと、通話相手の気配り・外向性・勤勉性が低く感じられる

↑性能の良い電話機(固定電話・携帯電話・スマホ・パソコンでのテレビ電話)を選ばないと、通話相手に自分の性格が悪く映ってしまうし、こちらも相手の性格を悪く感じてしまうので要注意ですね。

Buchanan, T. W., Laures-Gore, J. S., Duff, M. C. (2014). Acute stress reduces speech fluency. Biological Psychology, 97, 60-66. doi:10.1016/j.biopsycho.2014.02.005.

アメリカのセントルイス大学心理学部、ジョージア州立大学コミュニケーション(障害)科学プログラム神経科学研究所、アイオワ大学コミュニケーション(障害)科学神経科学科の方の研究です。

○実験手続き

健常者91人が参加(女性は51人)。年齢は平均20歳。

本物のTrier Social Stress Test(TSST)と偽物のTSSTを実施しました。これは1週間の期間をおいて被験者間で順番をカウンターバランスして行いました(被験者内実験計画:within-subject design)。

TSSTとは面接官の前でスピーチをさせた後に暗算をやらせる社会的ストレス課題のことです。しかし、本実験ではスピーチといってもちょっと違うようですよ。

本物のTSSTでは5分の準備期間、5分のスピーキングタイム、5分の暗算課題の順に行いました。スピーキング課題では店長の前で警察に尋問され、弁解する場面を設定しました。暗算課題は1022から連続して13を引く課題でした。両方とも1人の実験者に観察されている状況で行われました。

偽物のTSSTでは5分の準備期間中に読んだ文章を要約して話す課題を実施しました。観察者はいませんでした。5分の計算課題も行いましたが、暗算ではなく、紙を使った計算でした。

心拍数は心電図(ECG)で計測しました。コルチゾール濃度は唾液から採取したサンプルから計測しました。心拍数の計測、唾液採取共に、TSSTの直前と実験中の様々な時期に記録しました。感情はスピーキング課題の前後にポジティブ・ネガティブ感情尺度(Positive Affect and Negative Affect Schedule:PANAS)で評定しました。

○実験結果(以下、偽物のTSSTとの比較)

本物のTSSTで社会的ストレス試験後10分、30分でコルチゾール濃度が有意に高くなりました。心拍数は本物のTSST中に高くなりました。ネガティブ感情も本物のTSST後に強まりました。ただし、ポジティブ感情は偽物のTSSTでも本物のTSSTでも減少しました。

単語数には本物のTSSTと偽物のTSSTで有意差はありませんでした。スピーチ開始後1分から5分にかけて、語数や単語の産出力が低下しました。

単語の産生力とは内容伝達に無意味な単語・フレーズを除去した後の機能的な単語数÷総語数×100のことです。どのような発言を除去したかというと、単語やフレーズの意味のない反復、間違った発言、um・uh等でした。

本物のTSSTで単語の産生力が上昇しました。

さらに、本物のTSSTでも偽物のTSSTでもスピーチ開始後1分から5分にかけて、1秒以上続くポーズ(中止)数が増加し、ポーズ時間が長くなりました。これは偽物のTSSTよりも本物のTSSTで顕著でした(ポーズ数を除く)。

つまり、本物のTSSTでは偽物のTSSTと比較して、1秒以上続くポーズ時間が長くなりました。ポーズが最も長くなったのは本物のTSSTでコルチゾールや心拍数の反応が高かった人達でした。

本物のTSSTで非流暢性が高まりました。ここでの非流暢性とはスピーチに出てくるhm、um、uhなどの割合でした。

関連記事⇒ストレス下でのスピーチで発話の認知的複雑性が減少

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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