愛着不安・愛着回避が高い人は集団の危険探知・逃避を早める | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
HOME   »   不安(障害)・恐怖に関する興味深い研究  »  愛着不安・愛着回避が高い人は集団の危険探知・逃避を早める

問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクトと実験方法・結果だけ読んだ、不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが、最新の研究成果です。ただし、今回は愛着(アタッチメント)での不安型・回避型に関する研究です。

なぜ、愛着不安・愛着回避なのかというと、場面緘黙症の研究で愛着を調べた論文があるからです。


今回は愛着不安が高い人が集団の中にいると、危険を察知するのが素早くなり、愛着回避が高い人が集団の中にいると、逃げるのが早くなるというお話です。

なお、愛着不安・愛着回避以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒母親と赤ちゃんは心拍の同期が強い

Ein-Dor, T., Mikulincer, M., & Shaver, P. R. (2011). Effective Reaction to Danger Attachment Insecurities Predict Behavioral Reactions to an Experimentally Induced Threat Above and Beyond General Personality Traits. Social Psychological & Personality Science, 2(5), 467-473. doi:10.1177/1948550610397843.

イスラエルのヘルズリヤ学際センター(Interdisciplinary Center Herzliya)、カリフォルニア大学デービス校の研究者達の論文です。

○実験の目的

社会的防衛理論(social defense theory) の検証。

ここでの社会的防衛理論とは愛着安定型の人だけでなく、愛着不安定型や愛着回避型、愛着不安型の人も集団の中にいる方が集団としての適応能力が高いという心理学理論です。

○実験方法

被験者は138人の大学生(女性89人)。

用いた愛着スタイル尺度は親密関係体験質問票(Experiences in Close Relationships inventory:ECR)。ECRにより愛着不安と愛着回避を評定。神経質傾向と外向性はビックファイブ質問紙(Big Five Inventory:BFI)で評定。

質問紙回答から2週間後、互いによく知らない被験者が3人1組になって実験室に招待されました。実験者は被験者に「実験の準備をするから、そこのテーブルで質問紙に回答しといて」と言って部屋を去りました。

被験者達の部屋にはパソコン(のようなもの)が置かれていたのですが、実はこれはsmoke machineで、煙を出す機械でした。実験者が部屋を去ってから1分後に、パソコンから煙を噴き出させて、故障したように見せかけました。実験は被験者が部屋を立ち去るか、パソコンをどうにかしようとしたら終了しました(実際には被験者グループの98%が部屋を退出)。

この様子はカメラで記録されました(被験者への説明は実験後に実施)。これにより、煙に気付くまでにかかった時間や実験終了までの時間(部屋を退出する/パソコンに触るまでの時間)を割り出しました。また、集団の緊急事態への対処の有効性を第三者が評価しました。

グループ内での愛着不安/愛着回避得点が最も少ない人の得点をその集団の安全感得点、愛着回避得点が最も高い人の得点をその集団の回避得点、愛着不安得点が最も高い人の得点をその集団の不安得点としました(神経質傾向と外向性は統制変数)。

○実験結果

集団に愛着不安・愛着回避が高い人がいると、緊急事態に対処する方法が効率的だと第三者が感じました。また、集団に愛着的安全感が高い人がいると、効率性が減少しました。

集団に神経質傾向が高い人がいて、外向性が低い人がいても、効率性が高くなりました。しかし、神経質傾向・外向性を考慮しても愛着スタイルの結果は変わりませんでした。

集団の愛着型が多様な集団ほど、また神経質傾向が高い人と外向性が高い人が両方いるほど、集団の緊急事態への対処が効果的でした。つまり、3人の愛着スタイルが同じグループよりも愛着回避型、愛着不安型、愛着安心型の3人から成っている集団の方が良いというわけです(性格でも同様)。

煙を見つけるまでにかかった時間は平均で79.8秒でした。神経質傾向・外向性を統制すると、愛着不安得点が高い人がいる集団ほど、煙を探知するまでにかかる時間が少なくなりました。愛着不安が1ポイント増加すると、煙の認識時間は11.5秒短縮されました。また、神経質傾向が高い人がいるグループほど、煙を認識するまでにかかる時間が短い傾向にありました。

煙を探知してから、問題に取り組むまでにかかった時間は平均して4.51秒でした。愛着回避・愛着不安得点が高い人がいる集団ほど、緊急事態への対処が素早くなりました。愛着回避が1ポイント増加すると、対処時間が1.54秒短縮されました。外向性が高い人がいる集団は、緊急事態への対処が遅れました。

関連記事⇒愛着不安が高い人は他者に援助を求めるのが早い

関連記事⇒愛着不安が高い人は嘘を見破ることとポーカーが得意

スポンサードリンク

Comment

スポンサードリンク

Trackback
Comment form
カテゴリ
ランキング
Twitter
スマートフォンサイト
Amazon書籍
場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

リンクについて
このサイトはリンクフリーです。リンクの取り外しはご自由になさって下さい。個別ページのSNSでの共有やブログ、サイトへのリンクも自由です。
プライバシーポリシー
当ブログはGoogle Adsense広告を掲載しています。Google Adsenseでは広告の適切な配信のためにcookie(クッキー)を使用しています。ユーザーはcookieを無効にすることができます。

なお、Google Adsenseで上げた収益は将来のホームレス生活を見越し、すべて貯金にまわしています。
免責事項
ブログ記事の内容には万全の注意を払っていますが、管理人はその内容の正確さについて責任を負うものではありません。

PAGE TOP