宮部みゆき『スナーク狩り』に緘黙児 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

スナーク狩り (光文社文庫プレミアム)宮部みゆきといえば、日本でも比較的有名な作家だと思います。たいがいの人は知っているのではないでしょうか。宮部みゆきさんの作品が映画やドラマの原作になることもしばしばあります。彼女の作品は週刊文春ミステリーベスト10やこのミステリーがすごい!、本格ミステリベスト10等で国内的に評価されているだけでなく、外国語に翻訳されている小説もあります。

光文社文庫の『スナーク狩り』(宮部みゆき著)の巻末解説(評論家池上冬樹)によると、宮部みゆきさんは『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を、『龍は眠る』で日本推理作家協会賞を、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を、『火車』で山本賞を受賞されています。宮部みゆきさんのデビュー作は『我らが隣人の犯罪』(オール讀物推理小説新人賞受賞)です。2014年現在でも現役です。今年7月7日(月)からは彼女の杉村三郎シリーズの最新作である『ペテロの葬列』(集英社)がTBS系列で放送される予定です。杉村三郎役として小泉孝太郎氏が主演します。

スナーク狩り (光文社文庫)そんな宮部みゆきさんが『スナーク狩り』というサスペンス小説のなかで緘黙児を登場させているとの情報を入手しました。そこで、宮部みゆき『スナーク狩り』(光文社文庫)を読んでみました。

*表紙が銃になっているものは私が実際に読んだものですが、少し古いです。最新のものが読みたい方は初めの方に載せた2人の男女が表紙になっている光文社文庫プレミアム版をお勧めします。

○宮部みゆき『スナーク狩り』のあらすじ&感想(以下、一部ネタバレがあり、要注意)

『スナーク狩り』は関沼慶子が元恋人である国分慎介の結婚式場に散弾銃を持ち込む場面から始まります。この行動の動機は国分慎介や会社の同僚で友人だと思っていた小川和恵の裏切り(とそれが与えた心理的影響)です。しかし、関沼慶子の散弾銃を奪おうと画策する織口邦男という釣具ショップの店員がおり……というあらすじです。

初めはなぜ関沼慶子の○○計画とはっきり書かないのだろうと疑問に思っていたのですが、やはりというべきかそれは読者の思い込みを利用した罠でした(完全にネタバレになるので言葉を濁す)。危ない、危ない、もう少しで騙されるところでした。

解説者の池上冬樹さんが評するように、最終局面で複数の登場人物を石川県金沢市の病院へと収斂させていく技巧には目を見張るものがあります。

○宮部みゆき『スナーク狩り』に登場する緘黙児、竹夫君

私が読んだ光文社文庫の『スナーク狩り』ではp.190に

神谷「この子は緘黙児なんです」(注:この子とは小学2年生の神谷竹夫のこと)

織口「カンモクー」

神谷「ええ。まったくしゃべらないんですよ。ただ、生まれたときからそうだったわけじゃありません。僕と家内の責任なんです」

という場面がありました。なお、神谷は神谷尚之のことで竹夫君の父親です。織口は織口邦男のことで、神谷父子とは赤の他人です(少なくとも途中までは)。実はp.190以前にも竹夫君が緘黙児であることを仄めかす記述があったのですが、緘黙という文字が登場したのは190ページが最初です。これが最初から最後まで徹頭徹尾緘黙という文字すら出てこなかった村上春樹の『風の歌を聴け』とは決定的に異なる点です。

もっとも竹夫君の母親である神谷佐紀子の母親(神谷尚之から見ると義母)とのトラブルが緘黙の原因だと神谷尚之は考えているようです。つまり、家庭環境が原因というわけですね。そのためか神谷尚之は竹夫君の緘黙を治すには家庭を立て直すしかないと思っているようです。

*(場面)緘黙症は家庭環境が原因でないこともあります。たとえば、子どもが不安になりやすい気質であるとか、バイリンガルであったりすると、場面緘黙症になりやすいとされています。

竹夫君の緘黙は母親の神谷佐紀子が実家に帰ってから始まりました。神谷佐紀子が実家に戻ったのは3か月前のことですから、緘黙の持続期間は3か月間くらいです。また、竹夫君は「知能も聴力もまったく正常だし、喉に異常があるわけでも」(p.127)ありません。

宮部みゆきさんは緘黙児への対応法を理解しているのかもしれません(少なくとも執筆当時は)。というのも、p.126-p.127にかけて、神谷尚之の同窓生でクリニックを開業している医者に「しゃべることを強制してはいけない。叱ってもいけない。また、いつか何かの拍子に竹夫くんがしゃべったときには、そのことで大騒ぎをしてもいけない」と言わしめているからです。

ただ、『スナーク狩り』はトリイ・ヘイデン『檻のなかの子―憎悪にとらわれた少年の物語』(早川書房)トリイ・ヘイデン『幽霊のような子―恐怖をかかえた少女の物語』(早川書房)とは違って、緘黙症が主題の作品ではありません。また、場面緘黙症が介護やDVと並んで主要なテーマの1つとなっている盛田隆二『二人静』(光文社)とは異なり、緘黙症に関する説明が簡潔すぎる、緘黙児に関する描写が短いという印象は否めません。

私が読んだ限り、竹夫君が緘黙する場面は以下の表の通りです。

ページ数人物緘黙した相手緘黙場面
112父親父親自宅
126-127父親父親車で走行中
162父親と織口邦男織口邦男織口邦男が神谷父子の車に搭乗する直前
205-206父親と織口邦男織口邦男上里サービスエリア(車外)
210-211織口邦男織口邦男上里サービスエリア(車内)
*人物とはその場にいる人のこと。緘黙した相手とは返答が要求される直接的相手のこと。また、竹夫君の母親は実家で療養中で、他に家族がいる様子もないので自宅では竹夫君と父親の2人きりの生活です。

その他、p.308~311までの間に越中境サービスエリアの電話ボックスにいる織口邦男のジェスチャーに竹夫君が応えなかった場面(竹夫君はこの時父親に手を引かれている)や「女の子の赤ちゃんが生まれた」という報せ(及びそれを受けた父親の頭撫で撫で&感激の言葉)に対する竹夫君の反応(短い笑顔?)の描写、織口の別れの挨拶&握手に応ずる竹夫君が描かれています。p.343~345には父親が独り言を言っているのか竹夫君に話しかけているのかよく分からない場面があります。

この神谷一家が登場するのは「第二章 暗い助走」からですが、序盤の散弾銃関係の出来事とどう絡んでくるか、読んでのお楽しみです。物語もクライマックスに近づくと緘黙児の竹夫君が…

スナーク狩り 1 (BUNCH COMICS)『スナーク狩り』は光文社のカッパ・ノベルスから1992年に出版されたサスペンス小説ですが、同年に早くも『運命の銃口 東京〜金沢500キロ・愛と憎しみの旅路』のタイトルで土曜ワイド劇場(ABC朝日放送)にてテレビドラマ化されています。2012年にはTBSスペシャルドラマ企画で『宮部みゆき・4週連続“極上”ミステリー』が放送され、第二夜が『スナーク狩り』でした。特に後者は伊藤淳史や田中麗奈、寺島進、宮川大輔など芸能界に疎い私でも知っている方々も出演されています。漫画化もされています。ただし、これらのドラマ、漫画に緘黙児の竹夫君が登場するかどうかは分かりません。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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