反社会性人格障害と社会不安障害の合併患者は多い | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、要約・方法・結果だけ読んだ、社会不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ社会不安なのかというと、場面緘黙症児は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害,社交不安症)を合併していることが多いという知見があるからです。

今回は反社会性人格障害と社会不安障害の合併患者が多いことを示して、彼らの特徴を調べた研究です。

なお、社会不安以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒父親の年齢が高いと子供の顔はブサイクになる

↑自閉症の原因の1つとして精子の老化(父親の高齢)がありますが、顔の魅力も精子の質の影響を受けるのでしょうか?

Galbraith, T., Heimberg, R. G., Wang, S., Schneier, F. R., & Blanco, C. (2014). Comorbidity of social anxiety disorder and antisocial personality disorder in the National Epidemiological Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC). Journal of Anxiety Disorders, 28(1), 57-66. DOI:10.1016/j.janxdis.2013.11.009.

アメリカのテンプル大学とコロンビア大学ニューヨーク州精神医学研究所の研究者達の論文です。

○調査方法

サンプルはアメリカのアルコール関連障害疫学調査(National Epidemiological Survey on Alcohol and Related Conditions:NESARC)の参加者。NESARCとはその名の通り国立アルコール乱用依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism:NIAAA)によるアルコール問題の調査のことで、2001年~2002年にかけて実施されました(面接を受けた者は43,093人で18歳以上が調査対象)。

精神疾患の診断はNIAAAのアルコール使用障害・関連障害面接調査第4版(Alcohol Use Disorder and Associated Disabilities Interview Schedule, DSM-IV Version:AUDADIS-IV)で実施しました。

○調査結果

反社会性人格障害がない社会不安障害の人は1,773人で、社会不安障害がない反社会性人格障害の人は1,212人、反社会性人格障害と社会不安障害の併発者は210人でした。社会不安障害者の内反社会性人格障害を併発している人の割合は10.6%で、反社会性人格障害者の内社会不安障害を併発している人の割合は14.8%でした。

反社会性人格障害と社会不安障害の併発者の特徴として男性、高卒以下の人が多いという結果になりました。その他の調査結果は以下の通りです。

併発者は反社会性人格障害だけの人よりも動物やペットを意図的に傷つけたり、残酷な行為をする、主観的な健康観が良くて、情動的問題のために仕事や生活に支障がでやすい、鬱的、上司や同僚とのトラブルを抱えやすい。

併発者は社会不安障害だけの人よりも情動的問題のために仕事や生活に支障がでやすい、鬱的、上司や同僚とのトラブルを抱えやすい、転職、別居、離婚、破局が多い、隣近所・友人・近親者との深刻な問題を持ちやすい、小集団に恐怖を感じる、治療を希求する、反社会的行動の前あるいは最中にお酒をたらふく飲む。

併発者は反社会性人格障害だけの人や社会不安障害だけの人よりも社会生活機能(social functioning:SF)や精神的な日常役割機能(role-emotional: RE)、心の健康(mental health:MH)が悪い、第1軸の精神疾患、第2軸の人格障害・精神遅滞、物質使用障害(薬物使用障害)、気分障害、他の不安障害、精神障害の罹患者が多い。

*社会生活機能・精神的な日常役割機能・心の健康は健康関連QOL尺度のSF-36短縮版であるSF-12(Short Form-12v2)で評価。

○コメント

以下の文献によると、アメリカでの反社会性人格障害の発症率は0.6%と推計されています。これはNational Comorbidity Survey Replication(NCS-R)によって算出された値です。NCS-Rとはアメリカの18歳以上の9,282人を対象とした疫学調査のことです。

Lenzenweger, M. F., Lane, M. C., Loranger, A. W., & Kessler, R. C. (2007). DSM-IV personality disorders in the National Comorbidity Survey Replication. Biological Psychiatry, 62(6), 553-564. DOI:10.1016/j.biopsych.2006.09.019.

今回取り上げた調査において、社会不安障害者の内、反社会性人格障害を合併している人の割合は10.6%でした。これはNCS-Rによる反社会性人格障害の有病率の推計値である0.6%よりも非常に高くなっています。サンプリングバイアスがあるかもしれませんが、これは近年指摘されている「社会不安のサブタイプに攻撃的な類型がある」という知見と一致するものです。

不安障害でも反抗挑戦性障害との併発があることもあるという研究があり、本論文は不安障害と反社会的な精神障害とが合併することもあるという知見をさらに確固たるものにしました。

双生児研究などの行動遺伝学的手法で思春期の内在化問題行動(不安や引きこもり傾向、うつなど)と外在化問題行動(非行、攻撃行動、注意の問題など)に共通の遺伝的因子があることを示した研究があるので、社会不安障害と反社会性人格障害の遺伝相関(genetic correlation)がどれぐらいなのか知りたいです。遺伝相関とは2つの形質がどの程度共通した遺伝子の影響を受けているのかを計算した値のことです。詳しくは「緘黙を行動遺伝学で分析」をご覧ください。

本研究の限界としては、米国アルコール関連障害疫学調査(NESARC)は18歳以上の成人を対象とした調査なので児童や青少年については分からないことがあげられます。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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