回避性人格障害より場面緘黙症の方が研究が進んでいる? | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

回避性人格障害の文献数は場面緘黙症(選択性緘黙症)の文献数よりも少ないのかもしれません(逆にいえば場面緘黙症の文献数の方が多い)。特に1990年代ではその傾向が強いようです。以下の論文のアブストラクト(要約)と私が独自に作成した場面緘黙症の論文数の推移に関するグラフが根拠となります。

まず、論文の内容を説明し、次いで、場面緘黙症の研究動向との比較を行います。

Mendlowicz, M. V., Braga, R. J., Cabizuca, M., Land, M. G., & Figueira, I. L. (2006). A comparison of publication trends on avoidant personality disorder and social phobia. Psychiatry Research, 144(2), 205-209. doi:10.1016/j.psychres.2004.06.024.

ブラジルのリオデジャネイロ連邦大学精神医学研究所&Martagão Gesteira小児研究所(Institute of Pediatrics Martagão Gesteira)、フルミネンセ連邦大学精神医学メンタルヘルス研究科、アメリカ(ニューヨーク)のジャッカー・ヒルサイド病院精神医学研究科の研究者達の論文です。

○研究目的

回避性人格障害と社会不安障害(社会恐怖症)に関する文献数の推移を調べること。時期は1973年から2001年。

○研究方法

3つの文献データベース(MEDLINE、PsycINFO、Web of Science)にある回避性人格障害、社会不安障害に関する論文をレビュー。Reference Managerという文献管理ソフトのversion 9.5を使用。統計分析はSPSS version 10で実施。回帰モデルで将来の公刊トレンドも予測。

○研究結果

社会不安障害に関する公刊文献数は安定的に年々増加し続けていました(1973年に1本、2001年に118本)。

しかし、回避性人格障害に関する文献数は1986年の5本がピークで、その後減少していました。1992年から2001年には回避性人格障害に関する文献が平均して1年に2本よりも少ない数でした。

○コメント

これは1973年から2001年までに公刊された論文数に関する調査です。その後回避性人格障害の論文数はどのように推移しているのか、気になります。

以前私はPubMed収録の場面緘黙症に関する論文数の推移をグラフにしたことがあります。

参考記事⇒緘黙研究の動向をグラフにしてみた(PubMed版)

↓その折れ線グラフ
selective mutismに関する論文数の推移(excel)

回避性人格障害と社会不安障害の文献数の推移を調べた研究はあくまでも、MEDLINE、PsycINFO、Web of Scienceという3つの文献データベースに関する調査ですので、直接比較することはできません。しかし、上のPubMedのグラフと比較すると、少なくとも1994年から2001年にかけては回避性人格障害の論文よりも場面緘黙症の論文の方が公刊数が多いといえるかもしれません。

しかも、上の場面緘黙症に関するグラフはselective mutismだけで検索した結果です。selective mutismとは場面緘黙症のことです。

ところで、私の手元のエクセルには'elective mutism' 'electively mute' 'elective mute' 'selectively mute' 'selective mute'という関連表現も含めた文献数のデータと推移グラフがあります(いずれネット上に公開しようと考えているのですが、整理する時間的、精神的余裕がなくて、準備段階のままです)。これによれば、PubMedにある場面緘黙症の論文について、1980年代に平均して1年間に2.2本の論文が、1990年代には7.7本の論文が、2000年代には9.7本の論文が公刊されています。

*elective mutismとは場面緘黙症の旧称のことです。ただし、electiveがselectiveに変わっても日本語訳は場面緘黙(症)、選択性緘黙(症)、選択的緘黙(症)のままです。

以上の結果を踏まえると、もしかしたら場面緘黙症の研究の方が回避性人格障害の研究よりもずっと進んでいるのかもしれません。ただし、これは研究分野によって異なります。たとえば、回避性人格障害では双生児研究で遺伝率を算出した論文があるのに対し、場面緘黙症では遺伝率を算出した研究はありません。

*双生児法とは一卵性双生児が遺伝子を100%共有し、二卵性双生児が遺伝子を約50%共有することを利用して、心理的・身体的指標(IQや身長など)がどの程度遺伝的または環境的影響を受けているかどうかを調べる方法のことです。

なお、場面緘黙症の論文数の推移で最新のグラフをご覧になりたい方は以下のURLをご覧ください。

http://smetc.blog120.fc2.com/blog-entry-300.html

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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