場面緘黙児・者のセラピストは夢で緘黙人を見るか? | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

患者が見た夢を分析して精神障害の治療に役立てようとする学派があります。ジークムント・フロイトの精神分析学やカール・グスタフ・ユングの分析心理学における夢分析等です。実はこれとは対照的にセラピストが見た夢を分析した研究者達がいます。それは私のブログ「心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究」でもふれました。

今回は私がブログ「心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究」で記事を執筆した際に読んだ論文から場面緘黙症(選択性緘黙症)のセラピストが緘黙患者の夢を見るのか?見たとしたらどうするか?というテーマを考えたいと思います。もっともこの種の研究は場面緘黙症の分野で見たことも聞いたこともありませんから、単なる思考実験のようなものになります。初めに2つの「夢論文」の内容を適宜省略を交えながら書き記し、ついで場面緘黙症の夢をセラピストが見るかどうか?等について考えます。

○セラピストが見た、患者に関する夢

まず、「セラピストが見た、クライエントが登場する夢とその影響」という記事で話題にした論文ですが、これはアメリカのメリーランド大学の研究者たちが行った調査をもとに執筆されたものです。心理セラピーの経験が豊富な8人のセラピストにクライエントが登場した夢についてインタビュー調査(半構造化面接)しました。なお。セラピストの理論的志向性は精神分析・精神力動療法>ヒューマニスティック・来談者中心療法>認知・認知行動療法の順に高くなっていました。

*精神分析的心理療法や精神力動的心理療法を馬鹿にする方もいらっしゃいます。しかし、精神分析のRCT(ランダム化比較試験:Randomized Controlled Trial)や精神力動のRCTが実施されていて、少なくともある特定の領域では科学的に効果があるとされています。もっとも、だからといって認知行動療法等より精神分析や精神力動が優れているとは限りませんし、RCTだから研究の質が良いと単純に断言することはできません。

その結果、セラピストは同僚や友人とクライエントに関する夢について話し合うことが判明しました。また、夢の内容をクライエントやその家族に話すこともありました。セラピストは、セラピーに違和感を覚えていると夢を見やすいようでした。多くの場合、セラピストはクライエントの夢で起床しました。

次に2つ目の「セラピストは患者の夢を見るが、患者はセラピストの夢を見ない?」という記事についてです。これもアメリカの研究で、13人の博士課程の学生セラピストと60人以上のクライエントを対象とした調査です。学生セラピストの理論的志向はヒューマニスティック・経験的・認知行動療法的なものよりも精神分析的・精神力動的なものの方が強かったです。

精神力動療法の期間中に夢の記録をセラピストにつけてもらっています。精神力動的心理療法の終了後、クライエントに関する夢を見たセラピストに半構造化面接をしました。

その結果、クライエントの夢を見たセラピストは13人中9人(69%)でした。クライエントに関する夢には4タイプあり、それぞれクライエントが絶望的な場面に陥っている、おかしな心理療法、クライエントが怒っている、クライエントをセラピスト自身の家に招待するなど倫理的に問題がある夢でした。

クライエントの夢を見るのは夢に出てきたクライエントと上手くいっていないのだというのがセラピストの考えでした。クライエントの夢はセラピストに恐怖・恥・罪悪感などネガティブな感情を与えるものの、セラピスト自身やクライエント、セラピーへの洞察を深め、それを実際の心理療法に応用していました。

クライエントには精神力動的心理療法終了から1週間たった後に、セラピストとは別の人(研究者)が患者に質問しました。その結果、67事例のうち、2事例がセラピストに関する夢を見たことがあるクライエントでした。その2人は愛着不安が高い人とセラピストから見捨てられるのを怖がっていた人でした。もっとも、夢の記録をつけてもらったセラピストとは違って、夢を見たという報告を記憶に頼っているため、実際にはもっと多くのクライエントがセラピストの夢を見た可能性も捨てきれません。

○セラピストは場面緘黙症患者の夢を見るか?もし見たのだとしたら…

まず、上に書いた研究でのセラピストとはなんぞや?という疑問が湧きますが、これは精神分析的心理療法や精神力動的心理療法を専門に行える方のことです。したがって、行動療法等による場面緘黙症の治療を試みる専門家とは夢の有無(または頻度)やその内容が異なる可能性があり、注意が必要です。

論文中には研究に登場するクライエントの症状や悩みについて体系的な記述がありませんでした。患者の症状等によってセラピストが見る、クライエントの夢の有無(または頻度)が異なる可能性があります。したがって、緘黙症患者の夢をセラピストが見るかどうかは分かりません。しかし、心理療法士・臨床心理士・精神科医はたまた教師らが緘黙児・者の夢を見るかどうか気になるところです。

セラピストが緘黙児・者の夢を見るかどうか分からないというだけではあまりにも味気ない記事になります。なので、緘黙症患者の夢をセラピストが見ることがあるという前提で2つの研究から示唆されることを以下に述べます。

・セラピストは同僚や友人、時にはクライエント(=場面緘黙児・者)やその家族にさえ緘黙児・者の夢を見たと話すかもしれません。

・セラピストは場面緘黙症のセラピーや緘黙患者との関係が上手くいっていないと感じている時期に緘黙症患者に関する夢を見るかもしれません。しかも、場面緘黙症患者の夢を見るとセラピストは起きてしまうかもしれません。

・場面緘黙症クライエントに関する夢はセラピストに恐怖・恥・罪悪感などを引き起こすかもしれません。しかし、夢を見ることでセラピスト自身や緘黙症患者、緘黙症セラピーへの洞察を深め、それを実際の心理療法に応用するかもしれません。

一方、場面緘黙症の人の方はセラピストに関する夢を見るのか?という疑問が湧いてきます。2つ目の研究では67事例のうち、2事例でそのような現象が報告されていました。私の場合はというと、そもそも場面緘黙の自己診断ですし、精神科を受診したり、誰かに相談したこともないので、セラピストの夢を見たことはありません。ただし、緘黙症状を呈している夢を見たことは何度もありますし、反対に私が喋っている夢を同級生が見たこともあるそうです。もっとも、今見た夢に緘黙症状が出ていたなということを認識できるようになったのは、場面緘黙症を知ってからの話で、それ以前にも喋らない夢を見ていたかどうかはちょっと自信がありません。

参考記事⇒緘黙症に気づいたきっかけ

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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