アレキシサイミアが強い不安傾向の人は援助希求をしない | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)を読んだ不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害を合併していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症(選択性緘黙症,選択的緘黙症,選択緘黙症)が不安障害となりました。

今回は不安が高い人はアレキシサイミアが強いと、他者に助けを求めないというお話です。

*アレキシサイミアとは自分の感情が分からない、感情を言語化できないといった特徴を指す言葉です。1973年にSifneos氏が心身症患者を診た経験から提唱しました。アレキシサイミアは失感情症ともいわれますが、私には失感情症という翻訳は誤解を招く表現だと感じられます。

なお、不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒セラピストは患者の夢を見るが、患者はセラピストの夢を見ない?

↑これは「場面緘黙児・者のセラピストは夢で緘黙人を見るか?」という記事でも取り上げました。

Rufer, M., Moergeli, H., Moritz, S., Drabe, N., & Weidt, S. (2014). Alexithymia and non-treatment: An Internet based study of 312 people with chronic anxiety. Comprehensive Psychiatry, 55(1), 179-187. DOI:10.1016/j.comppsych.2013.06.007.

スイスのチューリッヒ大学病院精神医学心理療法研究科とドイツのハンブルク-エッペンドルフ大学医学センター精神医学心理療法研究科の研究者達の論文です。

○研究の背景と目的

不安障害の人は援助希求(help-seeking)をしないことがあります。援助希求とは誰かに助けを求めたり、相談することです。援助要請ともいわれます。本研究の目的は不安障害者の援助希求性が低い要因としてアレキシサイミアがあるかどうかを調べることを目的としました。ただし、実際には全ての被験者で不安障害の有無を確認していないと思われるので、不安障害者ではなく、不安が高い人と呼ぶほうが適切です。

○研究方法

不安障害のウェブサイトやセルフヘルプのオンラインフォーラム、不安チャットルームで研究の告知を行い、データを収集しました。全部で312名の慢性的な不安症状を呈する人が協力しました。312人のうち49人が一度も専門的な治療を受けておらず、過去または現在に治療を受けた残りの263人と比較しました。指標はアレキシサイミア、不安、うつ・健康関連QOLとしました。

○研究結果

ロジスティック回帰分析によって治療を一度も受けていないことを予測できたのはアレキシサイミアの機械的思考・外的志向(externally oriented thinking)という要因でした。アレキシサイミアの外的志向とは感情に注意を向ける傾向の強さのことを指します。

*ロジスティック回帰分析とは目的変数が名義尺度の場合に有効な回帰分析のことで、発生確率の予測に用いられる分析手法になります。ここでは、目的変数は治療を受けたことがあるか否かということで、連続的な数字ではありません(名義尺度)。それゆえに、ロジスティック回帰分析を使用していたのです。

一度も治療を受けたことのない群でアレキシサイミアが高い人は49%で、治療を経験したことのある群でアレキシサイミアが高い人は35%でした。

*アレキシサイミアは20項目トロント・アレキシサイミア尺度(20-item Toronto Alexithymia Scale:TAS-20)で評価。また、TAS-20が61点以上をアレキシサイミアが高い人と判断。

○コメント

これは不安が高い本人のアレキシサイミアが強い場合に援助希求性が低いという結果です。場面緘黙症のように子どもがなることの多い症状(障害)では本人のアレキシサイミアよりも両親のアレキシサイミアの方が重要になるかもしれません。そのあたりの研究が必要ですね。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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