33歳の場面緘黙の女性が作業療法に | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

今年の6月中旬に場面緘黙(選択性緘黙)の大人の事例報告がされました。2014年6月18日(水)~21日(土)に神奈川県の横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜)で開催された第16回世界作業療法士連盟大会・第48回日本作業療法学会のポスターセッションにて、関西医科大学附属滝井病院と神戸大学大学院保健学研究科の方々が発表されました。成人の場面緘黙に対する作業療法の効果を検証した事例研究になります。

一般社団法人日本作業療法士協会HPによると、作業療法とは「身体又は精神に障害のある者、またはそれが予測される者に対し、その主体的な生活の獲得を図るため、諸機能の回復、維持、及び開発を促す作業活動を用いて、治療、指導及び援助を行うこと」です。何やら難しいですが、簡単にいえば生活の向上を目的とするのが作業療法で、その手段として作業活動(身体運動や手工芸等)を行うのです。

山本敦子・四本かやの・嶽北佳輝・高野隼・木下利彦(2014). 成人の場面緘黙症状に対する作業療法の有効性 第16回世界作業療法士連盟大会・第48回日本作業療法学会.

英語:Yamamoto, A., & Yotsumoto, K., Takekita, Y., Takano, S., & Kinoshita, T. (2014). Effects of Occupational Therapy on an Adult with Selective Mutism. 16th International Congress of the World Federation of Occupational Therapists & 48th Japanese Occupational Therapy Congress and Expo.

○事例研究の概要

場面緘黙の大人へ作業療法(occupational therapy)を試みた研究です。社会不安障害(社交不安障害,社交不安症)と場面緘黙の症状を呈する33歳の女性の事例です。彼女は27歳の時に場面緘黙と無動症・寡動・緘動?(akinesia)を訴えて精神科の診察を受けました。その3年後に緊張型統合失調症と診断され、修正型電気けいれん療法と薬物療法を受けました。32歳に診断が社会不安障害に変更されました。

作業療法を始めた当初は話すことも書くこともできず、椅子で固まっていました。作業療法士等とはうなずくことでコミュニケーションを図っていました。1週間に1度、交換ノートをやりとりしました。なお、文字を書けることが分かったのはカルテに付随していた本人のメモがあったからです。

作業療法では発話を強要せず、緘黙患者のペースに合わせました。その結果かどうかは分かりませんが、笑顔が増え、身体もリラックスしてきたようでした。1年半後には数語喋るようになり、それから6カ月後には小集団での発話や主治医への単独受診もできるようになりました。この間、薬物療法に大きな変更はありませんでした。

研究チームは本人の能力に応じた代替的コミュニケーション手段を使ったことが効いたと考察しています。また、作業療法の参加条件として発話を前提にしなかったことも緘黙患者の不安軽減に役立ち、自信の回復につながり、それらが場面緘黙症状からの回復に寄与したと論じています。

○コメント

33歳で場面緘黙の症状。発症年齢は不明ですが年齢が高いですね。ただ、私が知る限り、場面緘黙の症状を示した患者で最高齢は69歳ですから、ギネス記録を破ることはできませんでした(冗談です、緘黙症状のギネス記録とは何事か!と怒らないで下さい)。

彼女は27歳で場面緘黙・緘動のような症状があって、精神科を受診し、その3年後に緊張型統合失調症(カタトニア型統合失調症:Catatonic-type schizophrenia)の診断を受けました。27歳の時点ですでに緊張型統合失調症の症状があったのかどうか気になるところですが、ポスター発表の要約だけでは不明です。

32歳に診断が社会不安障害に変更になったということは薬などで統合失調症の症状が十分制御できるようになったということなのでしょうか?仮にそうだとすると、それでも場面緘黙の症状が持続したということは統合失調症の症状としての緘黙ではなく、真正の場面緘黙症の可能性もあり得ますね。この辺りのことはポスター発表者に聞いてみないと分かりませんが。

逆に、統合失調症の緘黙症状だとすると、基本的には普通の場面緘黙症の対応と変わらないということを示唆します。というのも話すことを強制しない、代替的コミュニケーション手段を用意する等は普通の場面緘黙症の支援方法でも使われるものだからです。もちろん他のことでは色々と対応が変わってくるかもしれませんが。

また、統合失調症の緘黙症状が途中から不安障害としての緘黙症状になったと考えることも可能です。これはずっと黙っていたら、喋ることへの不安が高まったという解釈です。ただ、この場合、普通の場面緘黙症と発症メカニズムが違う部分があるのかもしれません。

この事例を見る限り、大人の場面緘黙患者に対しては数年で発話が可能になるようです。ただし、これはあくまでも作業療法士らに対する場面緘黙症状が改善したということであり、他の人や作業療法以外の文脈でも緘黙の治療効果があったかどうかは分かりません。確かに小集団での発話も可能になったと書かれていますが、これは作業療法場面での発話に限定されている可能性があり、日常生活で会話ができるようになったかどうかは不明です。

関連記事⇒世界乳幼児精神保健学会で日本人が選択性緘黙症の発表!

関連記事⇒統合失調症で場面緘黙症状のある人は86%

○文献URL(2014年8月14日現在):英語と日本語では若干表現が異なります。
英語
http://wfot2014.mas-sys.com/pdf/endai100129en.pdf
日本語
http://wfot2014.mas-sys.com/pdf/endai100129ja.pdf

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
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マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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