死の想起で不安が強い人への反応が否定的になる | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)を読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害を合併していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症(選択性緘黙症,選択的緘黙症,選択緘黙症)が不安障害(不安症)になりました。

今回は人間は死すべき運命を思い起こされると、不安が高い人への反応が否定的になるというお話です。

なお、不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒禁煙後にバストサイズが巨大化したと感じる女性が56%

Martens, A., Greenberg, J., Schimel, J., Kosloff, S., & Weise, D. R. (2010). Disdain for anxious individuals as a function of mortality salience. European Journal of Social Psychology, 40(7), 1172-1183. DOI:10.1002/ejsp.707.

ニュージーランドのカンタベリー大学、アメリカのアリゾナ大学、カナダのアルバータ大学の研究者らによる論文です。

○背景と目的

社会心理学には存在脅威管理理論(terror management theory)という理論があります。存在脅威管理理論とは人間には死すべき運命という存在論的恐怖があって、それから人を守る防衛システムとして、文化的世界観や自尊心(自尊感情)、対人関係があるとします。しかし、東日本大震災等で死関連思考が喚起されると、自分の文化的世界観を守る行動や反応(自分と異なる宗教の人を攻撃する、外集団ステレオタイプが強まる等)が増加します。存在脅威管理理論は恐怖管理理論とも呼ばれています。

さて、一般的に存在脅威管理理論で攻撃の対象となるのは自分と文化的世界観が異なる外集団です。しかし、内集団も一枚岩ではなく、それぞれの成員に個性があります。一般にネガティブな特性だと思われている不安が強い人はもしかしたら文化的世界観を防衛する人から見れば攻撃行動やステレオタイプの対象となるかもしれません。そこで、そのことを検証するために心理学実験が行われました。

○実験の方法と結果を一緒くたに

人間の死を思いおこされた人は不安が高いコミュニティの警察官?(police liaison)に対して否定的な反応をしましたが、冷静な警察官に対しては否定的な反応をしませんでした(Study1)。

大学生というアイデンティティを強く持っている人は死関連思考が高まると、不安が高い仲間の大学生にネガティブな反応を示しましたが、不安が低いと感じられる大学生にはネガティブ反応をしませんでした(Study2)。

○コメント

この研究は社会心理学の存在脅威管理理論の実験で不安が高い内集団の人を世界観が異なる人としたもので、興味深いですね。もしかしたら、社会心理学と精神医学、臨床心理学の融合研究ができるかもしれません。不安障害あるいはもっと広く精神疾患や発達障害がある人に対する態度や行動、反応が人間の死すべき運命を思い起こすことでネガティブになる可能性が示唆されます。暴力性が高く、危害の危険性が強い「と感じられる」精神疾患のスティグマはもしかしたら存在脅威管理理論で部分的に説明できるのかもしれません。

これは場面緘黙症の啓発の際にも考慮すべき問題ですね。場面緘黙症のニュース記事の周辺に死亡記事やテロ・事故・事件の記事があると、緘黙症の人に対するネガティブな反応や緘黙症のステレオタイプが強まるかもしれません。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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