不安クリニックに来た子供の93%が感覚過敏 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)だけを読んだ不安(障害)・恐怖に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ不安(障害)・恐怖なのかというと、場面緘黙症児は不安が高いか、もしくは不安障害を合併していることが多いという知見があるからです。さらに、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症(選択性緘黙症,選択的緘黙症,選択緘黙症)が不安障害(不安症)になりました。

今回は不安クリニックを訪問した子の93%が感覚過敏というお話です。Twitterで私をフォローしてくださっている臨床心理士の方にはすでに伝え申し上げた論文ですが、あらためてこのブログでも取り上げたいと思います。なお、この臨床心理士の方は愛着理論から場面緘黙症への介入を考える計画のようです。

不安(障害)・恐怖以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒マインドフルネスでまなざしから心を読むことが上手になり、共感性も高まる

Conelea, C. A., Carter, A. C., & Freeman, J. B. (2014). Sensory Over-Responsivity in a Sample of Children Seeking Treatment for Anxiety. Journal of Developmental & Behavioral Pediatrics, 35(8), 510-521. doi:10.1097/DBP.0000000000000092.

アメリカのロードアイランド病院ブラッドリーハズブロ小児研究センター(Children's Research Center)、ブラウン大学アルパート医学研究科、マサチューセッツ大学ボストン校心理学部の研究者達による論文です。

○調査目的

本調査の目的は臨床的に重篤な不安を抱える健常発達児で感覚過敏(過感覚・過敏症)を持つ子供の割合や感覚過敏の経過、感覚過敏症状と人口学的、精神病理的要因の関係を調べることとしました。本記事でいうところの感覚過敏は元の英語論文ではSensory Over-Responsivity(SOR)となっており、直訳すると感覚過剰反応性になります。しかし、要約を読む限りは感覚過敏と同義で使われている模様です。

と、偉そうなことを言いましたが、感覚過敏とは何ぞやという定義が私にははっきりしません。要約しか読んでいないので細かいことは気にせず、次に進みましょう。

○調査方法

不安専門のクリニックの小児患者88人が参加しました。親が評価したものは子供の感覚過敏や不安、強迫性障害(の症状?)、全般的行動で、子供自身が評価したものは不安、抑うつ、強迫性障害でした。

感覚過敏の症状は感覚過敏質問紙(Sensory Over-Responsivity Inventory:SensOR)で評価しました。

○調査結果

調査の結果、触覚過敏・聴覚過敏の少なくとも1つに該当した子供が93.2%を占めました。過敏に感じる感覚刺激?の平均的な数は9.2(標準偏差は7.4)でした。感覚過敏の症状は中程度に不快(平均値)でした。感覚過敏の発症年齢は人生の早い時期からが多くなりました。

感覚過敏の症状は精神疾患の診断によって違うことはありませんでした。しかし、感覚過敏症状と強迫性障害・抑うつ症状が相関しました。また、感覚過敏であればあるほど全般的障害(global impairment)が強くなりました。

○コメント

場面緘黙児(選択性緘黙児)に感覚過敏の子が多いという指摘もあり、そういう意味では今回の研究成果は興味深いですね。ただし、私の知る限り場面緘黙症と感覚過敏の関係を直接示した研究はないので、この点に関してはまだ疑ってかかった方がよさそうです。

*場面緘黙症(選択性緘黙)とは話す能力があり、家庭など一部の環境では話すことができるにも関わらず、学校など他の場面で喋れなくなる症状のことを言います。米国精神医学会が発行するDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では場面緘黙症が不安障害に位置づけられています。

たしかに自称(元)場面緘黙の私も子供の頃床屋のバリカンの音が嫌でした。これはもしかしたら聴覚過敏なのかもしれません。しかし、聴覚過敏でない子でも髪の毛を切るバリカンの音が嫌である可能性や誰しも苦手な音を1つや2つ持っている可能性もあるため、床屋のバリカンだけでは聴覚過敏かどうかは判断しかねます。

不安クリニックに来た子供の93%が感覚過敏というのは極端な結果なので、ちょっと疑わしいような感じはします。また、不安が専門のクリニックに来た/連れてこられた子供がサンプルですから、今回の結果を一般化して、不安が強い子供は感覚過敏の子が多いと解釈するのは危険です。

さらに、要約を読む限りは感覚過敏症状を親しか評価していなった点が気にかかります。少なくとも子供の心配や不安感情については親は実際に子供が感じている不安を低く考えるという研究(Lagattuta et al., 2012)があるので、親の報告だけに頼るのは心もとないです。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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