臨床試験に参加できないSAD患者は6~8割以上 | 緘黙ブログー不安の心理学、脳科学的知見からー
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問題を起こさない緘黙児は放置されるか?」という記事に追記をしました。3歳で「かん黙」があった園児5名の内60%が5歳までに「かん黙」を克服したという研究です。日本の調査になります。

興味深い研究成果をすべてネタにできればいいのですが、生憎そうもいきません。そこで、アブストラクト(要旨)を読んだ、社会不安(障害)に関する興味深い論文を取り上げます。ほとんどが最新の研究成果です。

なぜ、社会不安(障害)なのかというと、場面緘黙症児(選択性緘黙症児)は社会不安が高いか、もしくは社会不安障害(社交不安障害,社交不安症)を合併していることが多いという知見があるからです。また、米国精神医学会が発行するDSM-5では場面緘黙症が不安障害(不安症)になっています。

今回は社会不安障害の人の60~80%以上は薬物療法や心理療法の臨床試験に参加できないという研究です。

なお、社会不安(障害)以外の興味深い(面白い)研究については『心と脳の探求-心理学、神経科学の面白い研究』をご覧ください。

最近の記事⇒ADHD児に雑音を聞かせると記憶力が良くなる

Hoertel, N., de Maricourt, P., Katz, J., Doukhan, R., Lavaud, P., Peyre, H., & Limosin, F. (2014). Are Participants in Pharmacological and Psychotherapy Treatment Trials for Social Anxiety Disorder Representative of Patients in Real-Life Settings?. Journal of Clinical Psychopharmacology, 34(6), 697-703. doi: 10.1097/JCP.0000000000000204.

フランスのパリ・シテ研究・高等教育拠点(PRES Sorbonne Paris Cité)のパリ第5大学(ルネ・デカルト)コランタン・セルトン病院(Hôpital Corentin-Celton)パリ公共補助病院(Assistance Publique-Hôpitaux de Paris)精神医学サービス部門、パリのサントロペ病院(Hôpital Sainte-Anne)大学病院部門神経科学的精神医学研究センター、クレテイユのパリ公共補助病院精神医学極ヘンリーモンドール-アルバートチェネフィアグループ、ロバートドブレ病院パリ公共補助病院児童精神医学サービス、パリの社会科学高等研究院(EHESS)フランス国立科学研究センター(CNRS)高等師範学校(Ecole Normale Supérieure:ENS)心理言語学認知科学研究所の研究者達による論文です。

○目的

社会不安障害の臨床試験を一般のコミュニティに一般化できるかどうか調べることを目的としました。

○方法

米国のアルコール使用障害および関連障害全国疫学調査(National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions:NESARC)の2004年~2005年のデータを用いました。NESARCとはアメリカ国立衛生研究所(NIH)の組織の1つ、国立アルコール乱用・アルコール中毒研究所(NIAAA)が2001-2002年に開始したアルコール障害関連の疫学調査のことです。2004年~2005年のNESARCは2回目の調査にあたります(サンプル数は34,653人)。

12か月以内に社会不安障害の診断基準を満たした965人の人のデータを分析。965人の内、治療希求性の高い363人の社会不安障害患者についてはさらに分析。焦点は薬物療法の臨床試験、心理療法の臨床試験で一般的に用いられる除外基準(exclusion criteria)がどれだけの人に当てはまり、何人が臨床試験に参加できるか(またはできないか)。

○結果

薬物療法の臨床試験では7割以上の社会不安障害者が、心理療法の臨床試験では6割以上の社会不安障害者が少なくとも1つの除外基準に適合しました。治療希求性の高い社会不安障害者では、薬物療法もしくは心理療法の臨床試験に参加できない人は8割以上に上りました。

除外基準に該当した理由の多くがうつ病の罹患があることでした。

○コメント

社会不安障害の臨床試験で少なくとも6割の人が薬物療法や心理療法の臨床試験に参加できないことが判明しました。したがって、社会不安障害の臨床試験で有効性が示された薬物療法・心理療法が一般の患者にも有効であると主張するのは少し説得力が劣ることになります。論文著者がアブストラクトの結論部(conclusions)で主張するように、除外基準を緩めた臨床試験も必要なのかもしれません。

場面緘黙症の(元)当事者で社会不安障害(SAD)のある人は、どの程度SADの臨床試験に参加することができるのでしょうか?気になります。もしかしたら除外基準に場面緘黙症の既往歴や診断があることという判断があるかもしれませんし、場面緘黙症の経験者はうつ病の罹患率が高く、それによって臨床試験から除外される可能性が高いのかもしれません。ただ、場面緘黙症の2次障害や後遺症としてうつ病を発症するリスクが高いといわれているのはきちんとした調査に基づくものではないので注意が必要です。

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場面緘(かん)黙症とは?
ある特定の場面(例.学校)でしゃべれなくなってしまう症状を場面緘黙症といいます。言語能力や知能には問題がないにもかかわらず、話せないのです。一般的に場面緘黙症の人は自らの意思で口を閉ざしているのではなく、不安や恐怖のために話せないとされます。中にはあらゆる場面で話せない全緘黙症になる事例もあります。
プロフィール

マーキュリー2世

Author:マーキュリー2世
性別:男
緘黙経験者で、バリバリの現役緘黙だったのは小学4年?大学1年。ただし、小学4年以前はほとんど記憶喪失気味なのでそれ以前も緘黙だった可能性あり。現在も場合によっては緘黙/緘動が発動します。種々の研究に言及していますが、私は専門家ではありません。ひきこもり/自称SNEP(孤立無業者)です。

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